《内容》
海辺の町に、川辺の町に暮らす人々とそこに棲む人魚との交流を描いた作品集。
収録作品:「光の海」「波の上の月」「川面のファミリア」「さよならスパンコール」「水の国の住人」
《この一文》
“あんたはこれから
たくさんのメスに会うだろ?
その中に髪の長い人魚を見つけたら
その人魚はみんな僕だと思ってよ
僕があんたの子どもをたくさん産むから
―――「波の上の月」 より ”
ぐはっっ!! なにこれ、美しすぎる!
『羽衣ミシン』に引き続き、小玉ユキさんのマンガ『光の海』を買ってきました。人の好みはそれぞれだと思いますが、私の好みを申しますならば、私はこの『光の海』のほうが好きですね。どうもこうもなく、美しい!
まだ2冊しか読んでいないので、なんとも言えませんが、もしかしたら小玉さんというのは短篇のほうが得意なのかもしれません。この詩情! この詩情! ああ! 美しいイメージが次から次へと繰り出されます。
収められたのは5つの物語。中でも私が特に気に入ったのは、「波の上の月」と「川面のファミリア」。
「波の上の月」は、東京から遠いある島で教師をしている友人を訪ねた主人公が、その島で大人になるまでオスだけで群れて暮らすという人魚の男の子と出会うお話。
これには参りました。もうだめ。美しすぎて。すがすがしいような切なさを見せてくれるたいへんに美しい物語でした。それにしてもよくできたお話です。
そうか、切ないというのは、別れを必然のものにするとき、別れを肯定して受け入れるときに表れてくる感情なのかしら。一瞬の触れ合いののちの別れ。二度と会うこともない。しかしその一瞬間に、ずっと一緒にい続けることと同じだけの価値をもたせようとするのか。物理的な近さの代わりに、忘れられない記憶を残すことで、いつまでもその人とともにあろうとするのだろうか。ある種の別れが美しいのは、そういった理由なのでしょうか。……まとまらないけど。
「川面のファミリア」は、お父さんと二人で暮らす女の子が、ある日川べりで出産間際の人魚を助け――というお話。
胸があたたかくなるような、珍しくハッピーエンドな感じのする物語です。結末の場面が相当に美しい。夢みたい。
この人のマンガは、とても繊細な世界を描いていますが、どこかコミカルで、また淡々として、さっぱりとした絵柄とともにすらすらと流れてゆくようです。こういうあっさりしたところがいいですね。それでいて、とても印象的。実に美しい。
うーむ。
ほかの作品も、読みたいところです。