今 市子(ソノラマコミック文庫 朝日新聞社)
《内容》
妖魔と共存する飯嶋家の愉快で怖い日々を、恐怖とユーモアを絶妙にブレンドして描いた人気シリーズ。
kajiさんからお借りして、文庫版の1~6巻を読みました。これは大変に面白いのですが、私にはあまりに恐ろしい物語も多く含まれており、しばらくは夜の闇やドアの隙間などに怯えて暮らすことになりました。こわいよ~~!
怖くて、感想を書くために再度ページをめくろうという気になれません。すごく美しいお話もあったので読み返したいのですが、うっかり怖いページを開くんじゃないかと思うと、なかなか勇気がわきません。うーむ、どうして私はこんなに臆病なのだろうか…。だって心霊とか吊られたお人形とか隙間から飛び出す腕とかそういうのが怖いんだよー。ううっ、怖い…!!
というわけで、怖くて読み返せないので、ここは記憶を頼りにして軽めの感想を書いておこうと思います。
このシリーズの名声はかねてから聞いておりましたが、読んでみて、なるほど面白いということはよく分かりました。まず何と言っても登場人物が魅力的です。誰も彼もがそれぞれに存在感を持ち、その異様なありようが、異様でありながら不思議と魅力的なんですね。
主人公の律(りつ)は、祖父の言いつけで、幼い頃は女の子として育てられる。その祖父は著名な幻想文学作家であったが、もう亡くなっている。生前は目に見えないはずのもの達と深く付き合った人だった。成長した律は現在は高校生で、祖母と母、そして父とともに暮らしているが、その父もまた実はとうに亡くなっていて、彼の体のなかには今は別のものが棲んでいるのだ。そんな不可思議な飯嶋家の物語です。律はおじいさんからその能力を強く受け継いでいて、しばしばおかしな事件に巻き込まれてしまいます。
変なことばかり起こるのに妙にのんびりした律もいいですが、私はその従姉の司(つかさ)ちゃんを好きになってしまいました。異常に方向音痴なところも可愛い。律を大学受験に送る際、道に迷って山梨まで行ってしまったのには大爆笑でした! はははは!
それから、律に仕える小鳥二羽も可愛いですね。尾黒と尾白。この鳥たちがものすごく可愛い! 青い鱗の話が、これまで読んだ中で私は一番面白かったです。このお話は全然怖くなかったから。姫(=司ちゃん)のために酒の肴を調達しようとする二羽が可愛いぜ…!!
あ、夜刀さまの話は最初は怖かったけど、オチは素敵だったなあ! 晶ちゃん(もうひとりの律の従姉)と三郎さん関係の話も面白かったし。それから妖怪になってしまった犬のマルもやたらと愛くるしかったなあ。あ、おじいさんの若い頃のお話も壮絶だったけど面白かったなあ。
全体的に、幻想的で、絵柄も美しく(←表紙をご覧になればお分かりのように)、とても面白い作品であります。もう少し怖くなければ、私は何度も読み返したいところなのです。しかし、怖いのだ。
とくに恐ろしかったお話は、箱庭の話で、箱庭の中の小川に橋をかけたら、鉈を持った影みたいなのに追っかけられるやつ。怖くて眠れなくなりましたわ。それから、人間の形をした果実の話や、盗んできた仏像だかを返しに行く話。それから、天井から人形がぶらさがってたりする話もめちゃくちゃに怖かったですね。これはよく分からない部分があったから、ほんとうなら読み返したいところでしたが、怖過ぎて無理でした。いいか、分からなくても……。
そういうわけで、怖い話が多いです。私にもっと耐性があれば、きっと更に深く楽しめたであろうと思うと少し残念ですね。しかし、長く続いているこのシリーズには、続きが気になるエピソードもいくつかあり、怖いですが、わりとアッサリとした作風のおかげか私でも読める限度ギリギリくらいの怖さなので、ちょっとずつ先を読んでいければいいなあと思っています。