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待ちわびた『サラゴサ手稿』

2010年03月14日 | 読書ー雑記



先日、とうとう以前から欲しくて欲しくてたまらなかったヤン・ポトツキの『サラゴサ手稿』を入手しました。わーい! やっほー!!

なんていうのは、まあ、えーと、多くの人にとってはどうでもよいご報告かもしれませんが、私は嬉しくてたまりません。まだ読んでいませんが、そのうちに読むだろうと思います。とにかく手もとにありさえすればね、いつでも読めるじゃないですか。うん。

他に、今はブルガリアのSFとか、その他東欧のSFアンソロジーなどを読んだりしています。このあいだのカダレといい、気付いたら東欧文学ブームがきていたみたいです(私のなかでは)。南米文学に戻るつもりだったんだけどなー、今年は。まあ、それもまたそのうちに。漫画も読まなきゃならないし、急がしくなってきたぞ!






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『夢宮殿』

2010年03月12日 | 読書日記ー東欧

イスマイル・カダレ 村上光彦訳(東京創元社)



《あらすじ》
その迷宮のような構造を持つ建物の中には、選別室、解釈室、筆生室、監禁室、文書保存書等々がドアを閉ざして並んでいた。
〈夢宮殿〉、国中の臣民の見た夢を集め、分類し、解釈し、国家の存亡に関わる深い意味を持つ夢を選び出す機関。名門出の青年マルク=アレムは、おびただしい数の様々な夢の集まるこの機関に、職を得、驚きと畏れに戸惑いながらも、しだいにその歯車に組み込まれ、地位を上りつめていく。国家が個人の無意識の世界にまで管理の手をのばす恐るべき世界!

《この一文》
“わずか数か月間足を運ばなかっただけで、こちら側の世界からこんなにも早く気持ちが離れようとはまったく思いもよらぬことであった。彼は〈夢宮殿〉に以前勤めていた職員のことでいろいろ話を聞いていた。その人たちは、自分の生者としての暮らしからいわば身を引いて、たまたま昔の知り合いのあいだに居合わせたときなどは、月から降り立ったような印象を与えたものだという。この自分も、あと数年も経つと、しまいにはそうした先輩たちと似た存在になりきるのではなかろうか。《で、そのあとは?》と、彼は思った。《おまえはこのきれいな世界を捨てる気らしいが、まあ、こいつをとくと眺めて見るんだな! 通行人どもは、〈夢宮殿〉の狂おしげな職員たちに皮肉な微笑を投げかけている。だが〈タビル〉の幻視家たちの目には彼ら自身の生活がどれほど味気なくみじめに映るのか、連中には思いもおよばないのだ》 ”




〈夢宮殿〉、臣民の夢を集めて、分類、解釈し、管理する役所。栄光と不幸に彩られた名門キョプリュリュ家出身の青年マルク=アレムが、巨大な宮殿のなかを、夢からまた次の夢へと彷徨い歩く。

というこの物語を、夢見に興味がある私が素通りできるはずもなく、第一章は恐ろしいほどに面白くて、その勢いでどんどん読み進められるはずが、どういうわけか第二章から第五章までは私の心が紙の上で分散して、まったく集中力を欠いていました。美しかったり、奇妙だったりする夢の描写がところどころに出てくるというのに。

しかし、最後の第六章、第七章に至って、ふたたび物語は燦然と輝き出したのです。いったん最後まで目を通してその面白さに間違いはなかったと知った私は反省して、もう一度最初から最後まで、今度は一息に読むことになりました。それでやっと分かった。こういうことは久しぶりです。要するに、やっぱり面白かったということです。


イスマイル・カダレの作品を読むのは、たぶんこれが2作目です。以前、東欧文学のアンソロジーで「災厄を運ぶ男」という短篇を読みました。女性の顔を覆うためのスカーフを荷車いっぱいに詰め込んで運ぶ男の物語だったかと。あれはどういう風に終わったのだっけ。ちょっとよく思い出せませんが、あまり明るい結末ではなかったという感触が残っています。無力感にうなだれて、押しつぶされるような読後感。これはこの人の作品の傾向なのですかね。巨大な帝国という組織に押しつぶされてしまう個人。奇妙な論理で動いている巨大組織に翻弄されるしかない人間の運命。そういうことがテーマのようです。暗い。重い。好きです。

この『夢宮殿』では、〈夢宮殿〉と呼ばれる夢を管理する役所に勤める青年が、あれよあれよという間に出世していき、〈夢〉という人間の意識の、掴みどころのないような部分にまで管理の手をのばす国家組織の枠組みのなかにいつの間にか取り込まれていくさまを、その恐怖と狂気、幻想と幻滅の渦巻きを、とても印象的に描いています。かなり面白かったのに、私はどうして集中できなかったのだろう。

私は最初の読書では、まるで前置きのような描写がいつまでも続くような内容に不安になり、まったく物語に集中することが出来なかったのですが、その一因としては、この物語自体が迷宮のように暗く沈鬱で、明るい出口など永久に見つけられないのではないかという雰囲気に満ち満ちていたこともあるのではないかと、言い訳してみます。いやまあ、ネタバレするのもあれですが、結局明るい出口などはないのですがね。けれども、最後になって「そうだったのか!」という到達感のようなものはあります。苦しく辛い到達感ではありますが。
ああしかし、せっかく面白かったのに、あまり集中できなかったことが本当に悔やまれます。もっと突っ込んだ感想を書けそうだったのに! うーむ。また次の機会に持ち越そう。



夢というものをどう考えるか。夢のお告げを信じるか、信じないか。夢をどう解釈するか。そういうことは個人の好き勝手にまかせるべき領域であると私も思いますが、それすら管理しようとする国家規模の巨大組織が存在したら、きっと困りますね。夢を、正しいとか、危険だとか、無価値だとかいうことを他人に判断されるなんて、まっぴらです。ましてや夢を見たことで罪を負わされるだなんて、狂気の世界です。ああ、しかし、世の中というものはいつだってそんな風に狂ってしまわないとも限らない。今だって。どういうわけか、人間はひとりでも狂ってしまうこともありますが、たくさん集まってもかえって狂ってしまうようなところがあるではないですか。狂気ってなんだろう。

ところで、カダレはアルバニア出身の作家ですが、アルバニアとアルメニアの区別が付かないなどと言う愚かな私は、ちょうど良い機会なので少しばかりアルバニアについて調べてみました。あー、アルバニア共和国はそんなところにあるのか。バルカン半島の、ギリシャの上ですね。イタリアと海を挟んで向かい合っています。そして結構最近まで鎖国していたらしい。あの辺ではよくあることのようですが、ここもまた複雑な歴史を持つ国のようです。この人の『死の軍隊の将軍』もそのうち読みたいです。






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父とイチゴソーダ

2010年03月11日 | もやもや日記




昨日の『同級生』と『卒業生』の感想文の中で、炭酸水、苦いというようなことを書いたのだが、私には実際に苦い味の炭酸水についての思い出がある。ちなみに恋愛とはまったく関係がない。父についての記憶だ。

もう20年以上の前の古い記憶である。私は4月生まれなのだが、小学生だった頃、私は家で、数人の友人を招き、誕生会を開いてもらった。晴れた休日で、友人はたしか4人、応接セットのソファとテーブルが置いてある応接室で、ケーキは丸くて大きいものではなく、切り分けられた何種類かの、イチゴのショートケーキがあったかどうかは覚えていないが、オレンジのババロアとチーズケーキはたしかにあった。たぶん。

私はその日のことをいつまでもよく覚えているつもりだったが、今思い出そうとすると、細かい部分についてだいぶ忘れてしまっていることに驚いてしまう。そもそも、あれは私の何歳になる誕生日のことだっただろう。8歳か9歳だったと思うが、もしかしたら10歳のことだったかもしれない。こうやって、大切にしまっておいたはずの記憶さえ、忘却の暗い淵に追いやられてしまうのだ。すっかり忘れてしまわないうちに、覚えているところだけでも書き留めておこう。それすら、もうすでにあやふやで捏造された、架空の記憶になろうとしているのかもしれないけれど。

私がその誕生会を忘れられないのには理由がある。その日、イチゴのソーダ水を、父が作ってくれたのだった。それは、美しい透明な薄い赤色をしていて、炭酸の泡がグラスの内側につぶつぶとついていた。子供心にも綺麗な飲み物だと私は思った。けれども、残念ながら、美しい見た目を裏切って、その味はとても苦いもので、子供には到底飲めそうもないくらいに苦かった。あまりに苦いので私は友人たちには「飲まんでいいよ(飲まなくていいよ、の意)」と言ってしまったかもしれない。そこはよく覚えていないが、友人たちとちびちびすすりながら「苦いね」と言い合ったような記憶はおぼろげにある。

あとで台所にいる父のところへ行ってみると、そのイチゴソーダは、生のイチゴを絞ったものを、ソーダ水で割って作ったものだということが判った。ちなみに味見はしなかったと父が言っていたような気がする。「苦かったけ? あー、それはすいませんね」と言っていたかもしれない。よく覚えていないが、父ならいかにもそんな風に言いそうだ。一方の私は、味について訊かれて「苦かった」とはっきり言ってしまったかもしれない。そう言うことを言ってしまう子供だったかどうか思い出せないが、でも恥ずかしさを誤摩化そうとして、言ってしまったかもしれない。
私は嬉しかったのだ。苦くてもなんでも、私のために綺麗な飲み物を作ってくれたことが嬉しかった。嬉しかったのに、そのことは父にはっきりと伝えなかったと思う。私はその頃、もの凄く単純なくせに、妙に屈折したところが出てきて、嬉しいとか楽しいとかこういうのが好きだということを言えない子供になろうとしていた。もしかすると最初からそんな子供だったかもしれない。そして、二十歳になる時に家を出るまで、私はずっと屈折したままだった。

年を取ってきてつくづく思うことには、私は性格的には父によく似ている。いや、親戚の中では呆れられるほどに非常識な人生を送る私が、保守的で堅実な父とどこが似ているのかと思われるだろうが、本質的な部分ではきっとよく似ているのだと思う。たとえば、何かやろうと思い立ったら、数年がかりののんびりしたペースではあるけれども、いつまでもしつこくやり続けるところとか。とにかく何か作ってみたくなってしまうところとか。人を喜ばせようと思って何かを作るんだけれども、悲しくも失敗してしまうところとか。そういうところが。ストレスに弱くて、プライドがむやみに高くて、自分を抑えきれず後先を考えないで激昂してしまうとか、そういうところも。


苦い思い出がたくさんある。私が成長するにしたがって、父との関係は苦いものになっていった。父に限らず、母との関係も。私は冷酷な子供だった。両親と健全ないがみ合いをすることすらできない、閉じた子供だった。まったく閉じていた。それなのに、よく育ててくれたと思う。
不思議なのだが、家を出てからというもの、時間が経てば経つほど、幼い頃のことを思い出すようになった。イチゴのソーダのことも、そんな思い出のひとつだ。私にまだ可愛げのあった時代には、父は実に優しい人だった。優しかったという記憶しか持っていない。

手作りのイチゴソーダを、味見もしないで振る舞う父。苦かった。けれども、あんなに透き通って赤い、美しい飲み物を私は初めて見た。父の真心だった。苦かったけれど、私はその苦さよりも美しさの方を、たぶんこれからも長く忘れられないのではないかと思う。
こういうことを、こんなところに書かないで直接父に伝えればいいと、自分でも思う。でも、私の声は信用できない。私の声は、思いとは別のことを伝えようとするから。けれど、文章では私は嘘を書かない。開けっぴろげな本心を、書くことでなら私は伝えられる。それも、個人的なメールではなくて、いきなり公共の場にさらしてしまう方が、本心に近づける。自分でもそんなのは変だと思うのだけれど。
母がこのブログを読んでいることは知っているので、お母さん、もし機会があったら、どうかお父さんに私がこんなことを書いていたと伝えて下さい。イチゴソーダは苦くて美しかったということを。私は今でも時々それを思い出して、笑ってしまうんだということを。


私は、たくさんの美しいものをたくさんの人からもらってきたので、いつかそれを少しでもお返しできればいいと思っている。私のやることだから、きっと苦いものになりそうだけれど。でも、よく見たらどこかに美しいところがわずかでもあるような、そういうものを、いつかは。







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『同級生』/『卒業生』

2010年03月10日 | 読書日記ー漫画

中村明日美子 (茜新社)



《あらすじ》
まじめに、ゆっくり、恋をしよう。
合唱祭前の音楽の授業中、同級生でメガネの優等生・佐条利人が歌っていないことに気付いた草壁光。佐条は歌なんかくだらないのかと思っていたが、ある日の放課後、だれもいない教室でひたむきに歌の練習をする彼の後ろ姿を目にした草壁は思わず声をかける…。

《この一文》
“ そしたら お前の半分を 僕にくれよ ”





恋愛というのは、こんなに眩しいものでしたっけ。
こんな、春の小鳥のように軽やかで、夏の炭酸水のように爽やかで、雪解けのように清らかな、そんなにも眩しいものでしたっけ。いて、イテテ、胸は痛むし、息は詰まるじゃないですか。名作BLを探求しようと思って手に取った本書ですが、これは、いきなり、とんでもないものを読んでしまったぞ……。ループ読みを止められない。


というわけで、中村明日美子さんの『同級生』とそれに続く『卒業生(冬)』・『卒業生(春)』を読んでみました。なんだか、ものすごく売れているっぽい。だが、売れるのはよく分かる。これは凄い。凄く美しい。読めば読むほど、私に染み込んでくる。

恋に、美しいとか醜いとか、そういう区別をしてよいものかどうかは分かりませんが、ここに描かれた恋愛は、たしかに美しいものでした。あまりに美しい。持てるだけすべての純真を、与えられるだけすべての誠実を、相手に捧げようとする、そんな恋があったらいいですね。そんな初恋があったらいい。私はとにかくこのふたりの誠実さと、ふたりが恋愛に対して情熱を燃やしながらも、同時にある種の臆病さを見せるところに心を打たれました。シリーズ最初の『同級生』のあとがきに、作者の中村明日美子さんご自身の文章があるのですが、テーマは《まじめに、ゆっくり、恋をしよう》ということだそうで、その通り真面目な、真面目な恋愛なのです。


バンド少年の草壁光は、同じクラスの眼鏡の優等生・佐条利人(さじょうりひと)が、教室でひとり音楽祭の歌の練習をしているところを見かけ、その意外さに思わず佐条に歌の練習を見てやろうかと言ってしまう。

という、始まりからして美しい。ひとめぼれ、とか。
いや、まあよくある設定と言えばよくあるかもしれません。バンド少年と優等生という意外な組み合わせ、なんていうのは、もはやあまり意外ではない。けれども、恋が始まって、少しずつ積み上げていくその様子を、中村明日美子さんは、とても上手に丁寧に描いているんですね。物語構成ということで言えば、この人はもの凄くうまいようです。ちょっと他のも読んでみたくなった。

また、絵もとても綺麗なんです。基本的に、線が少ない。動作線や集中線のようなものはほとんど見られません。人物も、細い、すっとした線で描かれた、さっぱりした絵柄なのですが、こう、色気があるというか。特に瞳の描き方が独特で、見開かれた瞳の中心に向って線が放射状に収束していくので、私などは時々、佐条の眼に釘付けにされてしまったりもしました。

さて、優れた、品の良いストーリー、繊細で美しい絵ということのほかに、登場人物がそれぞれに魅力的に描かれていることも、このお話を面白くしている重大な要素のひとつです。

主人公のひとり、眼鏡をかけた、百合の蕾のようなたたずまいの佐条利人に、「お前の半分を僕にくれよ」なんてことを言われたら、音楽の原先生でなくとも、草壁光でなくとも、それは狂ってしまいますよね。それは狂ってしまうだろうさ。真面目で寡黙で優等生で、少し浮世離れしているところがあるという、魅力的キャラクターの典型のような少年。
ところで、佐条くんは最初は左利きという設定だったのか、第一話では右手に腕時計をしているのに、その後のお話では左手に付け替えていて、やっぱり右利きであるらしく描かれているのが気になりました。それとも、なにか意味がある表現なのかしら。誰か知ってたら教えてください。

そして草壁光。バンドでギターを弾いていて、感情表現が豊かで、明るくて、人気者で。でも人間関係にはそれほど執着心を見せなかった草壁が、佐条のことに関してだけは異常な執着をあらわにする、というところが醍醐味ですね。可愛くてたまらん。要所要所で物事をはっきりとさせようとするのは、この草壁の役割であるようなので、佐条くんと草壁くんの恋愛は、ほとんどすべて草壁のアクションにかかっています。優しくて、情熱的で、素直で、寂しがりやな草壁が、私は可愛くてたまりませんでした。

それから音楽の原先生。とにかくこの人には幸せになってもらいたい感じです。佐条に密かに思いを寄せていますが、教師なので、大人なので、黙って見ていたら、草壁にかっさらわれてしまいました。そんな境遇がなんとも可哀想なのですが、ギャグ要員として描かれているところがさらに悲哀を誘います。いやでも笑える。面白い。慰め役の橋本先生がまた良いキャラ。

最後に、草壁の友人である谷くん。いいやつ。いいやつだなぁ。


正直言って、初めはさっぱりしたお話だと思ったのです。でも、後になってさざ波のように押し寄せてくるものがあるので、もう一度読んでみたら、もっと面白くなりました。5度目にはさらに、さらに面白くなりました。これは不思議。



レモンイエローの炭酸飲料。その最初の一口のような、喉の奥まで弾けるような、爽やかだけどぴりぴりと痛むような、最初の恋の物語。しかし炭酸飲料というものには、それがいずれぬるくなり気も抜けてしまうだろうという苦い予感も伴うものです。

高校2年生の時に知り合って、好きになって、3年生になり、それぞれに進路も決まり、別れの時が近づいている。同じ制服、同じ靴、同い年で通った学校から卒業する。自分たちの生活を結びつけていた繋がりを失って、また別の物語が始まるということなのでしょう。もしかしたら、ぬるくて苦い結末が待っているのかもしれない。その不安感から、約束が、誓いが、必要になってくる。必死になって繋ぎ止めようとしても、いつかは炭酸が抜けてしまうのかもしれない。
けれども、だからこその最初の一口。最初だけしか味わえない最初の一口を、忘れ得ぬものとしたくなるような、味わい深い物語でした。



ちなみに、『卒業生』の冬、春2冊の帯についていた応募用紙を送ると、描きおろし番外編が載っているという小冊子が貰えるそうです。え…これは、送れってことですよね? え? 500円の小為替が必要なのか。そう言えば、部長(私が所属する、主に名作BL発掘を目的とした秘密倶楽部の先輩)が言ってたっけ。最近のこの業界ではあの手この手のおまけ戦略で金を搾り取ろうとするって……。なるほど、うまいことを考えるものです。ええ、ええ、私も申し込みますよ。郵便局へ走らなくては!




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透明と半透明

2010年03月08日 | もやもや日記






【半透明記録】というこのブログのタイトルについて、今さらながら考えました。なんだろう、このタイトルは。


はじめ私の頭にあったのは恐らく「はっきりとは言えない、なんとない言葉で、どうにか書こう」ということだったのだと思います。私はここに書くときには断定ということを避けて避けて、「…という気がします」、「もしかすると」、「かもしれない」、「ということではないだろうか」、などなどとどこまでも遠回しに書くことに専念してきました。断定するということは怖い。

言い切ってしまうことが怖い私は、しかし一方では、乱暴に、感情的に、投げ捨てるように湧きあがる言葉をそのままに書き散らしてしまうことがあります。そういう言葉は、あとで読み返してみても、ちくちくと尖っていて、あまり心地よいものではありません。暴力的すぎる。

私はもっと静かで穏やかな言葉を使いたいのです。もっと透明な言葉を、それが言葉であることがわからないほどに透明な言葉を見つけられたら、私は不用心に誰かを傷つけたりすることなく、私の心をその言葉に乗せて伝えることができやしないか。



【半透明記録】というのは、私のなにげない思いつきによる名付けではあったのですが、実は私の本質的な願望に迫る、なかなか的確な名前であったのかもしれません。もっと透明になりたい。まだまだ濁って、曇って、暗くて、全然向こう側を透かして見ることができないけれども、もっと透明になりたい。熱いままで、ある種の激しさを保ったままで、透明な言葉で、もっと透明な言葉で、私を覆うこの透明であるがゆえに見えない何かについて、いつか語ることができればいいのに。

そしてそれが、もっと透明に、私から発されたことすら分からないくらい透明に、速やかに、誰かに伝わるといいのに。


透明なものを、透明な言葉を、美しいものを、美しい言葉を、私は探しています。ここに何かを書き続けるということは、追いつけなくても触れられなくても諦めたくないという私の意志のささやかなあらわれです。そんなタイトルでした。【半透明記録】。とても、私らしい。きっともっと転げ回って、傷だらけになって、濁りを増して、透明からはほど遠くなっていくような気がします。でも、それでいい。それでこそ近づけるのではないかという予感もする。だって、私が転げ回るのは、みな透明なもののせいだから、あるのに見えないもののために、あるはずなのに届かないもののために、私は転げ回るのだから、それでいいはず。この届かない遠さ、それと私との距離くらいは測れるのではないかな。


透明。透明。半透明。今日もまた痛いことを沢山書いてしまったぜ。ついでに、過去記事を検索してみたら、私が《架空のミステリ小説》の一節として創作したおかしな文章を見つけたので、笑いの種にでもなるかと思い、ここに再録しておきます。



”君はいったい「透明」であるということを、どのように理解したつもりかね? 君が言うのは「透明」などではないよ。そんなのは違う。「透明」というのは、つまりだ………ああ…それは……………。
 彼はそこまでしか話すことができなかった。だが息絶えた彼の言えなかった言葉は、見開かれたままの菫色の瞳から流れ出していた。
 それは明るい夜の静寂だった。それは誰にも見られていないときの彼女のあるいは彼の微笑だった。空から一瞬で地上に達する稲妻の中心だった。初めて覚えた言葉だった。暗い海に射し込む明け方の虹だった。触れなかった指先だった。この丸い天球を、太陽を、宇宙を満たしつづけるものだった。
 「透明」だった。
 
 残された者のひとりが、それをそっと手に取ったのを、私は扉の向こうから覗いていた。    ”











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池袋【乙女ロード】へ行ってきた

2010年03月07日 | 旅の記録





おはようございます。さわやかな朝ですね。

私は昨日、【乙女ロード】へ行ってきました。

戦利品(上の6冊)を手に入れました。夜中に帰宅しました。読みました。繰り返して読んでいる途中で朝になりました。はい。真夜中にひとり、部屋の暗がりの変にくぼんだスペースにはまってうずくまったままクスクスと笑っていたのは私です。カラスが鳴きはじめました。新聞配達の方々が働く、善良な正義の世界の物音が響き出しました。私はほとんど寝…てません……


……えーと…どうしてこうなった…のだっ…け………



昨日、土曜日に、このあいだ結成されたばかりの 秘密倶楽部 の第一回会合がありまして、部長が第一部員である私(現在この2名が構成員)を案内して下さるというので、池袋の【乙女ロード】を探索してきたのです。ええ、もちろん、名作BLを研究するためのメッカ巡礼ですよ。私はそのジャンルはほとんど未知の領域なので、先輩(←部長かつ私の友達)に教えてもらおうと、あらかじめ部長が作ってくれたリストも持っていたのですよ。すごいやる気。私は本気です。なぜ今ごろ? さあ、何故なのでしょう。しかし、BLにハマってみるとかって、多くの乙女が通る道ですよね。え? 私は三十路です。乙女…って別に年齢の問題じゃないで…すよね……そもそも私という人間に乙女らしさがあるのかというところからして大問題ですが、それ…的なとこ…ろは持っていると信…じていま……す。


さて、午後の【乙女ロード】はあいにくの雨でしたが、乙女たちがたくさん居ました。

え? 三十路です。ああいや、その路ではなくて、行ってきたのは【乙女ロード】というある種の女の子が好きそうな本を沢山置いてある書店がならんだ池袋サンシャインビルの目の前を走る通りのことなのです。

そこはなかなか楽しいところでした。というか、私はBL漫画があんなに棚に並んでいるところを生まれて初めて見ました。壮観でしたね。しかし、近所にあんなところがあったら、きっと金がいくらあっても足りんわい……。

海外文学の古書には大枚をはたく私も、漫画を買う時にはとても慎重になります。これは自分でも意外なことですが、どうやら私はそういう人間らしい。この日も、私はあらかじめ買う漫画を決めてありました。物量に圧倒され、甘美な誘惑に屈しそうになりましたが、とりあえず目的のものだけを買うことに成功。どうせ後で買うなら、一気に買っても一緒だろ…ええ、そうかもしれませんが、気分の問題なのですよ。私はたくさんの種類のものを一気に消費するのは苦手なのでした。少ない種類のものをたくさん消費するのは好きなんですがね。


さて、私の目的はまず、中村明日美子さんの『同級生』と『卒業生(冬・春)』です。これは前からちょっと読んでみたかったので、部長のリストの上位にあったこともあり、迷わず買いました。中村氏の絵柄がどうなのかしら…と若干心配だったのですが、見本が置いてあるのをめくってみると、非常に美しい絵を描かれる人だったので安心しました。で、結論から言うと、無茶苦茶に面白かったので、感想はまた別に書きます。部長、ナイスチョイスです!

あとは、やはり前から読みたかった鈴木ツタさんの漫画を、部長の解説を聞きながら、3冊ばかり買ってみました。この人は、あとがきやら表紙カバーをめくったところやらにもの凄い面白さがあるらしいと聞いていたのですが、たしかにもの凄く面白かったです。こういうことを言うとなんですが、私は本編よりもむしろそちらで多いに楽しみました。爆笑でした。愉快な人って好きさ。これについても、また別に書きます。


私が目的のものを粛々と買うかたわら、部長は熱心にあれこれと教えてくださいます。いやー、ためになりました。すごく面白かったです。部長の熱血っぷりには心をうたれました(マジメな話)。私は別の友達(やはり熱くその本の魅力を語ってくださった)からもおすすめのものをいくつか教えてもらっているので、今度はそれも順番に読んでみようと思っています。深そうです。この世界は私が思っている以上に、深くて熱そうです。



ちなみに、部長とは午前中から張り切って落ち合って(しかし私はまたしても遅刻)、映画『マトリックス』は超名作だとか、マリリン・マンソンさんはいい人だとか、『少女革命ウテナ』は絶対観ろ(←私の意見)だとか、話題にあがることごとくで意気投合し、こんなに好みの合う人だったとは、知り合って随分経ちますが今まで知らなかったことが悔やまれました。しかし、今からでも遅くないので、これからさらに親交を深めていければと願っております。ああ、しかし、私は昨日もまた部長のご厚意にたくさん甘えてしまった。私が差し上げた世界文学おすすめリストがいくらかお役に立てればよいのだけれど……



というわけで、楽しい土曜を過ごしました!
よい日曜日を♪




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ねむい

2010年03月05日 | もやもや日記

本文とは関係のない絵。
氷山、海、ペンギン。
定型。





今日はまるで春のような陽気でした。かなり暖かかった。

昨日の私はなにやら異常な興奮状態で、ニコ動でしくしく泣かされたあと、映画でも観て気分を変えようとしたはずが『GATTACA』でさらに号泣、その昂揚感のままに文章を書きなぐりましたが、途中で燃え尽きました。
朝になってから読み返してみたら、気味が悪いほどに、ただ興奮しているだけの文章だったので、あっさりと破棄しておきました。あー、鬱陶しかったわ。


そして、今日は急激に気温が上昇したので、なんだか頭も身体もついていけません。とにかく眠かったです。しかし、図書館へ行かなければならなかったので、片道35分の道のりをてくてくと歩いていきました。花が咲き乱れていました。

あ、昨日発売日だった『ONE PIECE』の最新刊は、今日になって買ってきました。昨日は忘れていたのです。読んだら大変なことになっていました。ますます盛り上がってきましたねー。白ひげ、格好いい。



うーむ。まだなんだかふわふわとしています。しゃんとしなければ!
少しずつ、春に慣れていかないといけませんね。




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ニコ動へメグッポイドのオリジナル曲を確認しに行ったら……

2010年03月04日 | 学習





ここしばらく忙しくて、半年以上もニコ動から離れていたので、最近のVOCALOID事情が分からず、とりあえず【VOCALOID殿堂入り】動画から観てみることにしたわけです。何の話だよ?と思われるかもしれませんが、私はVOCALOID好き。以下、突然いったい何の話だよとか、あるいは逆に、つか今更何言ってんだよとか、そんなご意見もあるかと存じますが、気にせず続けます! てゆーか、世の中って素晴らしいですね! やっぱ現代人でよかったーー!



さて、世の中には恐ろしくハイセンスで、才能がだばだばと溢れまくっている人というのがいるものでして…。
ごちゃごちゃ書くのが面倒なので、かいつまむと(注:あまりかいつまめてない恐れアリ)、私はミクのオリジナル曲を中心に殿堂入り動画を楽しんでいたわけですが、ふと「そういや、メグッポイドのものはあまり見かけないな。『恋はきっと急上昇☆』(注:のぼる↑Pの名曲アイドルポップ。死ねるほど可愛い)とかはすごく良かったのになー。私ときたら、そこで知識が止まってるぜ」と、気づきました。

ちなみに、メグッポイドの公式デザインは、私の好きなゆうきまさみ先生が描かれて(色々な意味で)話題になりましたが、ひょっとすると最近出た巡音ルカに比べると人気がないのでしょうか。まあ、初音ミクが一番人気があるというのには、私も納得なんですけどね。やっぱりあの電子電子した声質は可愛くていいですよ。あと、個人的にはメイちゃん(MEIKO)も好き。
それはさておき、ともかく私はメグッポイドで検索し直してみたのですが、そこでもの凄いものを発見したのです。結論から申し上げますと、



 メグッポイドで殿堂入り動画を探してみたら、
 とんでもない天才【ささくれ-UK】氏を
 発見してしまった!!

           …でござるの巻。


ということですかね。知ってる人からしたら、今更ですね、スミマセン。はぁ。
しかし、超ヤバい。くそヤバい。ほんとはミク曲中心に最近のVOCALOID事情を記事にしようと思っていたのに、この【ささくれ-UK】氏のおかげで、完全方向転換を余儀なくされました。そのくらいの超絶動画でした。PVが異常に優れていたので、あえて超絶動画と呼びたい。


まずは、GUMIのオリジナル曲では再生数から判断するに、恐らく一番人気であろう

  『ぼくらの16bit戦争』 です。


(↑画像からはリンクしてません;スミマセン;タイトルから飛んでください)



か、カッカカッッカカk髪が逆立ったァァァァァッ!!
マジかっけェェェェェェェーーーッ!
すげーーカッケェぇぇぇーーーー!
なんじゃこら、『初音ミクの消失』とか『サイハテ』以来の大ショック!
超ヤバい!

このささくれ氏の凄いところは、もちろん曲の出来のハイレベルさにもありますが、曲に合わせて繰り広げられるPVもかなりの存在感を放っているということでしょうか。

最近のVOCALOID曲動画の動向としては、オリジナル曲にも美麗で手の込んだPVが付けられることが多いようですが、私がこれまでに観た中でも、これは上位にランクするレベルの格好良さです。大抵は曲とPVの提供者は別人であることが多いようですが、ささくれ氏は両方提供しているようで…(詳しくはこちらから→「ささくれPとは」)。原画提供は【茶ころ】氏ということですが、動画アレンジはご本人がなさっているということなのでしょうか。なにしろ凄い。
とにかく今はとても興奮しているので、曲を聴き倒したい段階。それにしてもハイセンス。格好良過ぎ。どうなってんだ、おい。

で、ささくれ氏マジですげーな、何者だよ!? と思い、この人のその他の動画もチェックしてみます。すると……



同じくGUMIオリジナル曲 『カムパネルラ』 で、




まさかの涙腺決壊ーワァァアァーーッ!!!

タイトルから分かるように、おそらく宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』から着想を得て作られた曲(「僕の大好きな、とある作品の世界観をベースに再構築してみました!」という、ささくれ氏本人による言及あり)ですが、こいつは凄い。特に間奏の部分から終盤までが超ヤバい。余裕で目から汁が…!状態です。ロケット打ち上げのカウントダウンの音声が挿入されているのですが、ロケット打ち上げと聞くとほとんど無条件で感激する私には、特に堪えられないものがありました。悲しくて美しい曲だぜ……。

そして、やはりこの曲にも素晴らしく綺麗なPVが添えられていますが、こちらも原画提供は【茶ころ】氏とのこと。このPVは、本当に、必見です! 素晴らしい! 美しい! はっきり言って、製品レベル! こんなのを無料で公開してしまっているなんて、この人たちって、本当に素晴らしい。


ついでにこの【ささくれ】氏には、ミクでも空恐ろしいほどの名曲がいくつか有り。

『ニジイロ*アドベンチュア』。現在21万回再生の人気作。

『*ハロー、プラネット。』。現在90万回以上再生されている超人気作品。

この2曲には、可愛らしいドット絵によるPVが付いているのですが、これがまた、もう、凄く良い! ああ、どんだけハイセンスなんだろうか。で、能力高過ぎ。もちろん、曲もとても良い感じです。余裕で毎日ループ再生したいレベルです。




というわけで、なんのこっちゃ、という話だったかもしれませんが、ニコ動には恐ろしい才能を持った人がまだまだ潜んでいるなということでした。久しぶりにチェックしに行ったら、新しい才能溢れる人で、その場は溢れかえっていました。今日は【ささくれ】氏の作品にしか言及できませんでしたが、ほかにもたくさん格好良い人がいました。いずれ、あらためてまとめたいと思います。

うーむ。さぼっていたら、すぐに着いていけなくなってしまいますね。私はちょっと反省して、これからは定期的にVOCALOID事情を追いかけていきたいです。





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春の模様替え

2010年03月03日 | 手作り日記






そろそろ春っぽくしたいと思って、ブログのテンプレートを新しくしてみました。春っぽいのか春っぽくもないのか、どうなのか分かりませんが、ともかく気分が変わっていいですね。

デザインを変えるついでに、レイアウトも若干変更してみました。私のブラウザでは今のところ正しく配置されていますが、もしかすると恐ろしく表示が乱れているという方もいらっしゃるかもしれません。その時は、スミマセン(/o\;)



……ついでに…久しぶりに、すごく久しぶりに更新した別館も模様替えしてみました。氷山ていいですよね(^_^) てゆーか、まだ存在してたんですよ、このブログ!!





別館:→→ 【不透明記録:層】



さて、春っぽくなってきたとは言うものの、関東地方が晴れるのは今日だけで、明日からはまた雨の日が続くようです。あー、憂鬱だ。とりあえず、晴れているうちに、やれるだけのことはやっておかなくてはなりません。この冬はなんだか雨が多かったなぁ。
あ、今日もつぶやきのような記事になってしまった。何も考えないで日々を暮らしてしまっている私……。このままでは、いかん!

明日から、がんばります!




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ネスレ スマーティーズ

2010年03月02日 | もやもや日記

実は全長は25cmもあって、存在感があります




輸入菓子をたくさん置いてあるお店で、ドイツ産のチョコレート菓子を買ってきました。ネスレの《スマーティーズ》という名前で、形状はマーブルチョコに似ています。

カラフルな糖衣に包まれたチョコレートのタブレットが、大きな筒にたくさん入っているのは良いのですが、蓋があまりにも外れやすく、うっかり傾けると中身をぶちまけてしまうのが難点。

原材料表示を見ると、たぶん色づけに使われていると思われる(違うかもしれませんけど)、《ブラックキャロットジュース》というのが珍しくて面白かったです。

味は普通にマーブルチョコな感じでした(^_^)



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