The Game is Afoot

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グラナダ版 『踊る人形』 : 1/4 

2016-09-11 |  ∟グラナダ版SH
グラナダ版 シャーロック・ホームズの冒険 : 『踊る人形』 ”The Dancing Men” (1)



1984年放送(「ボヘミアの醜聞」に次ぐ2作目です)
ワトソンは初代 デヴィッド・バーク


この作品は正典中でも人気の高い作品ですし 個人的にも好きな作品ではありますが、
BBC版との関連が無いと思って今迄触れず後回しになっていました。
が、良く考えてみれば「暗号モノ」という点でBBC版”The Blind Banker”とも少しばかり
ながら関連するのではないかと思い 遅まきながら今回取り上げてみました。

前回書きました「まだらの紐」と同様に初期の作品(2作目)なので 兎に角ジェレミー
が若く美しいし、表情も豊かで この作品ではこれに加えアクティブなホームズが描かれ
てるし めったに見られないキュートで生き生きとした表情もみられる 何とも有難い(嬉)
ジェレミー萌えの方にとっては”よだれ”、グラナダ版ファンにとっても貴重な”眼福”シーン
が多い宝箱作品です!
ストーリー自体も不可思議で不気味に見える暗号を解き進めるホームズが魅力的に描かれて
います。
ただ、ホームズが珍しく依頼人を救えなかったという点で残念な作品でもあります。

冒頭は今回の依頼人 ヒルトン・キュービットの邸宅。
長閑で美しい庭で妻のエルシーが最初の暗号を見つけ怯えるシーンから始まります。

その後221Bでは、(正典はこの場面から始まります)、顕微鏡を覗いていたホームズはいきなり
ワトソンに尋ねるシーン(この場面は良く知られているので少し細かく書いてみましょう)。



「所でワトソン、君は南アフリカ株の購入を止めたんだね」
ビックリするワトソンに、
「驚いたようだが、タネを明かせばガッカリするぞ」
「一見無関係な事を繋ぎ合わせる事で簡単に結論に達する事が出来る。 だが、つなぎ合わせる過程を
全く説明せずに結論だけ提示すると人を驚かせることが出来る」。



「君の左手の親指と人差し指を見て投資を断念した事が分かったんだ」
「どんな関係があるんだ?」と訊ねるワトソンに、推理の過程を示すホームズ :
昨晩君は指にチョークを付けて帰って来た → ビリヤードをしていたからだ → 相手は
サーストンだ → 一か月前にサーストンから南アフリカ株を共同購入しようと誘われていた
→ 君の小切手帳はずっと私の机の中にあり鍵を開けてくれと頼まれていない
∴ 君は投資をしていない QED(とは言ってませんけど、そんな感じ)



ワトソンは、「そうか簡単な事だな」、その反応にチョットがっかりするホームズが何とも人間味溢れて
可愛いんです。

そんなホームズを見て、「ホームズ、事件も無いのにやけに陽気だな」というワトソンに 「君も私の
推理方法を少しは使ってみたまえ」とホームズに言われたワトソンの推理、
”Sherlock Holmes is cheerful, so, Sherlock Holmes must have a case”
「シャーロック・ホームズは陽気である。 故にシャーロック・ホームズは事件を抱えている」 QED
← お見事! まぁそれ程でもないけど。


↑  「あたりー!」(実際はパッという声だけでしたが)
子供の様に依頼人から来た手紙でおどけるホームズは何時もクールな表情とは違う無邪気な様子を見せて
くれて、もうこれを見ただけでも「有難うございます!」と感謝したくなります。


依頼人のヒルトン・キュービット氏から来た手紙には子供が書いたような不思議な人の形が書かれています。
ワトソンは子供が書いた絵だろうと言うのですが 明らかに怪しげな意図を持つ暗号の様に見えます。
 
そんなところに依頼人のキュービット氏が深刻な様子で訪れました。
先に送られて来ていた踊る人形の絵を見て以来妻が怯えて動揺しているとの事。



「奥様の事を教えてください」とのホームズの問いかけに キュービット氏が語り始めた事は、
3年前女王の祝典の為ロンドンを訪れた際にアメリカから訪れていたエルシーと知り合い 次第に愛する様に
なり結婚したのだと言います。
ただ、結婚届を出す直前に絶対に過去を聞かないでくれと約束させられた。
その後幸せに暮らしていたが ある日シカゴのスタンプが押されたアメリカからの手紙を受け取ったエルシー
が突然怯え 封も切らず暖炉で燃やしてしまった。
それ以来妻が苦しんでいるのだが 過去を聞かない約束をした以上理由が分からない。 
少し元気を取り戻してきた時に又この絵が現れ事態が悪化してしまった。 警察に届けても笑われるだけだろう
から こうして貴方の所に来たのだと言います。
(だらだら話をするキュービット氏に段々イラついてくる様子のホームズ)



「秘密を打ち明ける様に奥さんを説得しては? 」と言うホームズに 自分からは聞かない約束なので妻から
言ってこない限り聞くことは出来ない。 でも自分が行動を起こすのは別なので こうして此処に来たのだと
いうキュービット氏に「協力しましょう」と約束するホームズ。



そしてさっさとお引き取り願うホームズ(結構ジャケンなんですよね、時々)は別れ際に 「ダービシャ―に
戻ったら周囲を警戒して下さい」と忠告します。


↑ さぁお帰りを。 の手が・・・

ワトソンがお見送りをして心配をなさらない様にとフォローします。


こうして見ていると ワトソンの役割が如何に重要なのか分かります(特にグラナダ版を見る限り)。
事件の記録係としては勿論ですが、医者としてホームズの健康面の管理係、時に危険物(リボルバー)担当係、
そしてそっけないホームズを補う接客(営業)担当係。 ホームズにとっては本当に有難い存在なんですが、
肝心のホームズがそれを十分に理解しているのか・・・・

早速暗号の解読に取り掛かるホームズ。


 
「手旗信号みたいだ」と言うワトソンに「私の暗号の論文を読んだことは?」と聞くホームズですが「少し読んだが
かなり難しかった」(多分殆ど読んでいないワトソン。笑)
「人形の動きには法則がある筈だからもっと人形の絵を集めないと」と既に解読にのめり込んでいるホームズですが 
その間彼の暗号の論文を手に取ろうか取るまいか逡巡するワトソンの表情が良いんですねぇ。





・・・・・to be continued です




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