海外では普及が進む「地熱発電」が日本で開発されない理由とは?より転載
週プレNEWS 8月7日(火)10時10分配信
再生可能エネルギーの固定価格買取制度が7月にスタートして以来、大手企業による本格参入が続々と進んでいる。なかでも24時間安定して電力を供給できる地熱発電は魅力的な発電方法だが、1999年の八丈島地熱発電所の開設以来、1ヵ所も新設されていない。何が日本の地熱発電開発の妨げになっているのか?
ひとつには、近隣の温泉地との軋轢がある。地熱発電所の近くには温泉街があるケースが多く、地熱発電の影響で源泉が枯れるのではという懸念が、温泉旅館の反対につながっている。
「しかし、地熱発電で利用する熱水の層と、温泉で使用する温水の層では深度が異なるので、両方の層が干渉し合って温泉に影響が出る可能性は極めて低いです」(弘前大学・北日本新エネルギー研究所の村岡洋文教授)
また、地熱発電に最も適した比較的浅い深度にある150度以上の熱水源の82%が国立公園の開発規制区域に存在することも大きな理由で、環境保護派の反対運動も起きている。しかし、こうした意見には別府大学准教授の阿部博光氏が次のように反論する。
「発電所が公園内のすべてを占有することはないのだから、人が簡単には立ち入れない区域に限って設置を許可すべきです。それに、環境保護をいうなら、二酸化炭素をほとんど出さない地熱発電は温暖化対策にもなる。また、後世に負の遺産を残さない。中長期的に見れば、地域の生態系を守ることにもつながるんです」
今年に入ってようやく政府が国立・国定公園内での地熱発電の候補地の検討に入ったという報道も一部であったが、具体的な導入目標については、資源エネルギー庁新エネルギー対策課は「特にありません」という。
前出の村岡教授は「地熱の可能性に目覚めた海外では、過去5年で地熱による発電量が20%も上昇している」と指摘した上で、日本の問題点を次のように語る。
「アメリカはオバマ大統領の着任以降、400万ドルを投資して地熱発電技術の研究を進めています。脱原発を宣言したドイツは、地熱資源が乏しいにもかかわらずEGS(地熱発電の新技術)を推進している。だが、技術も資源もある日本は、一向に方向性が定まらない。これは役人や総理大臣がコロコロ代わるという理由もありますが、エネルギーに対する国民的な意識の低さも映しているように思います」
原発神話が崩壊し、化石燃料が有限ならば、再生可能エネルギーの導入は不可避のはず。
「再生可能エネルギーはあまねく存在しているので、それを活用するには、これまでのように巨大な火力発電所や原子力発電所をドカンと1ヵ所に造ればよいというものではない。条件に恵まれた複数地域に、ひとつひとつは小ぶりでも、たくさんの施設を造る必要がある。この点に関しては政治だけでなく、私たち生活者が“受け入れる”という意識の改革も必要なのです」(村岡教授)
多くの地域が当事者になれば、電力問題は他人事ではなくなる。最後に村岡教授が語る。
「もし日本が本気で地熱発電の開発を進めれば、2050年までに地熱だけで25%の電力を賄うこともできる。そしてほかの再生可能エネルギーを併用することで脱原発を実現することも可能です。今世紀の終わりにはEGSも含めた地熱発電で全電力の半分を賄うことも夢ではない」
地熱発電のスムーズな開発推進に期待したい。
(取材・文/戎小次郎)
週プレNEWS 8月7日(火)10時10分配信
再生可能エネルギーの固定価格買取制度が7月にスタートして以来、大手企業による本格参入が続々と進んでいる。なかでも24時間安定して電力を供給できる地熱発電は魅力的な発電方法だが、1999年の八丈島地熱発電所の開設以来、1ヵ所も新設されていない。何が日本の地熱発電開発の妨げになっているのか?
ひとつには、近隣の温泉地との軋轢がある。地熱発電所の近くには温泉街があるケースが多く、地熱発電の影響で源泉が枯れるのではという懸念が、温泉旅館の反対につながっている。
「しかし、地熱発電で利用する熱水の層と、温泉で使用する温水の層では深度が異なるので、両方の層が干渉し合って温泉に影響が出る可能性は極めて低いです」(弘前大学・北日本新エネルギー研究所の村岡洋文教授)
また、地熱発電に最も適した比較的浅い深度にある150度以上の熱水源の82%が国立公園の開発規制区域に存在することも大きな理由で、環境保護派の反対運動も起きている。しかし、こうした意見には別府大学准教授の阿部博光氏が次のように反論する。
「発電所が公園内のすべてを占有することはないのだから、人が簡単には立ち入れない区域に限って設置を許可すべきです。それに、環境保護をいうなら、二酸化炭素をほとんど出さない地熱発電は温暖化対策にもなる。また、後世に負の遺産を残さない。中長期的に見れば、地域の生態系を守ることにもつながるんです」
今年に入ってようやく政府が国立・国定公園内での地熱発電の候補地の検討に入ったという報道も一部であったが、具体的な導入目標については、資源エネルギー庁新エネルギー対策課は「特にありません」という。
前出の村岡教授は「地熱の可能性に目覚めた海外では、過去5年で地熱による発電量が20%も上昇している」と指摘した上で、日本の問題点を次のように語る。
「アメリカはオバマ大統領の着任以降、400万ドルを投資して地熱発電技術の研究を進めています。脱原発を宣言したドイツは、地熱資源が乏しいにもかかわらずEGS(地熱発電の新技術)を推進している。だが、技術も資源もある日本は、一向に方向性が定まらない。これは役人や総理大臣がコロコロ代わるという理由もありますが、エネルギーに対する国民的な意識の低さも映しているように思います」
原発神話が崩壊し、化石燃料が有限ならば、再生可能エネルギーの導入は不可避のはず。
「再生可能エネルギーはあまねく存在しているので、それを活用するには、これまでのように巨大な火力発電所や原子力発電所をドカンと1ヵ所に造ればよいというものではない。条件に恵まれた複数地域に、ひとつひとつは小ぶりでも、たくさんの施設を造る必要がある。この点に関しては政治だけでなく、私たち生活者が“受け入れる”という意識の改革も必要なのです」(村岡教授)
多くの地域が当事者になれば、電力問題は他人事ではなくなる。最後に村岡教授が語る。
「もし日本が本気で地熱発電の開発を進めれば、2050年までに地熱だけで25%の電力を賄うこともできる。そしてほかの再生可能エネルギーを併用することで脱原発を実現することも可能です。今世紀の終わりにはEGSも含めた地熱発電で全電力の半分を賄うことも夢ではない」
地熱発電のスムーズな開発推進に期待したい。
(取材・文/戎小次郎)