今「原子力」を考える:原発比率決定後、政府判断 核燃料サイクルともんじゅ存廃 /福井
毎日新聞 8月23日(木)16時2分配信
東京電力福島第1原発事故を契機に国の原子力政策の見直し作業が始まり、政府は総発電量に占める原発の比率を「国民的議論」で決めようと、各地での意見聴取会や討論型世論調査を実施している。しかし、敦賀市の高速増殖原型炉「もんじゅ」などで研究開発を進めていた核燃料サイクルの将来像は、国民的議論の対象から外され、政府が決定する枠組みになっている。今後、もんじゅの存廃問題はどう進展する可能性があるのだろうか。【柳楽未来】
国策として進められた核燃料サイクル路線は、原発から出た使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再び燃料に使う。中核施設の高速増殖炉は、使った以上の燃料を生み出しながら発電するが、研究段階のもんじゅはトラブル続きで、運転実績はほとんどない。
政府は今年6月、30年の原発比率を0%、15%、20~25%とする三つの選択肢を決め、国民の意見を踏まえて結論を出す方針を決めた。一方、核燃料サイクルは、決定した原発比率から政府が判断するとした。
では、もんじゅの存廃にはどう影響するのか。使用済み核燃料の処分方法は、「0%」の場合は再処理せずに全て地下に埋めるなどの直接処分となり、「15%」では再処理と直接処分の併存、「20~25%」なら併存と全量再処理のどちらか--。つまり、0%でもんじゅの研究開発は中止、それ以外ならもんじゅ存続の可能性が大きいということになる。
もんじゅが存続する場合、細かくシナリオが決まっている。再処理と直接処分の併存の場合、性能試験や運転を5年程度行って技術的に実用化できるか確認。全量再処理では、実用化を前提に研究開発を続け、約10年以内に発電が可能であることを示し、並行して実用化に向けた計画を示していくという。
さらに、併存、全量再処理のどちらも、高速増殖炉ではなく、プルトニウムを“増殖”しない「高速炉」として進める選択肢も示されている。燃やすとプルトニウムが増殖する高速増殖炉は、エネルギー確保の観点から意義があるとされ、トラブルが何度起きても国は研究を進めてきた。高速炉はエネルギー確保より、扱いが難しいプルトニウムを減らすことに主眼を置いている。
もんじゅには、これまで1兆円以上の国費が投じられた。一方、直接処分するにしても、最終処分場の選定は進んでいない。先延ばしではない、責任ある判断が政府に求められている。
8月23日朝刊
毎日新聞 8月23日(木)16時2分配信
東京電力福島第1原発事故を契機に国の原子力政策の見直し作業が始まり、政府は総発電量に占める原発の比率を「国民的議論」で決めようと、各地での意見聴取会や討論型世論調査を実施している。しかし、敦賀市の高速増殖原型炉「もんじゅ」などで研究開発を進めていた核燃料サイクルの将来像は、国民的議論の対象から外され、政府が決定する枠組みになっている。今後、もんじゅの存廃問題はどう進展する可能性があるのだろうか。【柳楽未来】
国策として進められた核燃料サイクル路線は、原発から出た使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再び燃料に使う。中核施設の高速増殖炉は、使った以上の燃料を生み出しながら発電するが、研究段階のもんじゅはトラブル続きで、運転実績はほとんどない。
政府は今年6月、30年の原発比率を0%、15%、20~25%とする三つの選択肢を決め、国民の意見を踏まえて結論を出す方針を決めた。一方、核燃料サイクルは、決定した原発比率から政府が判断するとした。
では、もんじゅの存廃にはどう影響するのか。使用済み核燃料の処分方法は、「0%」の場合は再処理せずに全て地下に埋めるなどの直接処分となり、「15%」では再処理と直接処分の併存、「20~25%」なら併存と全量再処理のどちらか--。つまり、0%でもんじゅの研究開発は中止、それ以外ならもんじゅ存続の可能性が大きいということになる。
もんじゅが存続する場合、細かくシナリオが決まっている。再処理と直接処分の併存の場合、性能試験や運転を5年程度行って技術的に実用化できるか確認。全量再処理では、実用化を前提に研究開発を続け、約10年以内に発電が可能であることを示し、並行して実用化に向けた計画を示していくという。
さらに、併存、全量再処理のどちらも、高速増殖炉ではなく、プルトニウムを“増殖”しない「高速炉」として進める選択肢も示されている。燃やすとプルトニウムが増殖する高速増殖炉は、エネルギー確保の観点から意義があるとされ、トラブルが何度起きても国は研究を進めてきた。高速炉はエネルギー確保より、扱いが難しいプルトニウムを減らすことに主眼を置いている。
もんじゅには、これまで1兆円以上の国費が投じられた。一方、直接処分するにしても、最終処分場の選定は進んでいない。先延ばしではない、責任ある判断が政府に求められている。
8月23日朝刊