福島民報
県内の仮置き場から除染廃棄物を搬出する時期の見通しが立たず、管理する市町村が対応に苦慮している。環境省は仮置き場から中間貯蔵施設への搬出開始を来年1月としているため、多くの市町村は地権者と3年間の仮置き場の賃貸契約を結んでいるが、契約が切れれば、再び周辺住民への説明が迫られるからだ。18日に開かれた県議会全員協議会で、吉田栄光議員(自民、双葉郡)の質問に同省の高橋康夫審議官が答えた。
吉田議員は県内の多くの仮置き場が3年で契約期限を迎える点を指摘。その上で「残り5カ月しかないが、(来年1月の搬出開始という)方針に変更はないか」とただした。高橋審議官は「スケジュール的には厳しいが、政府一丸となって全力を尽くしたい」と説明した。
県内の仮置き場と現場保管の状況は【表】の通り。3月末時点で仮置き場は664カ所に上っている。県によると、多くの市町村では、仮置き場を設ける際に「3年後に返す」として地権者と契約を締結。周辺住民にも同じ説明をしているという。
しかし、中間貯蔵施設をめぐっては、政府と県、大熊、双葉両町の交渉が長期化。さらに仮置き場などから施設へ搬出する順番やルートなどを定める搬出計画は未策定のままとなっている。
同省は9月中にも県内の市町村の仮置き場の担当者を集め、地権者や周辺住民らへの対応を協議する方針。
■県議会が全員協汚染水対策など11議員質問
18日の県議会全員協議会では、東京電力福島第一原発事故に伴う汚染水対策や被災者支援などの現状や課題について、11議員が質問した。山本哲也原子力規制庁審議官や糟谷敏秀経済産業省資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監らが出席し、質問に答えた。
20日は東電の幹部らを招致する全員協議会を開き、廃炉に向けた取り組みや損害賠償への姿勢を問う。
質問した県議は次の通り。
吉田栄光(自民、双葉郡)佐久間俊男(民主・県民連合、郡山市)高野光二(ふくしま未来ネットワーク、南相馬市・相馬郡飯舘村)長谷部淳(共産、いわき市)安部泰男(公明、いわき市)古市三久(福島・みどりの風、いわき市)勅使河原正之(自民、郡山市)宮下雅志(民主・県民連合、会津若松市)宮川絵美子(共産、いわき市)川田昌成(ふくしま未来ネットワーク、須賀川市・岩瀬郡)石原信市郎(福島・みどりの風、福島市)
■全員協議会 一問一答
◇吉田栄光(自民、双葉郡)
一、中間貯蔵施設候補地の将来像は。
▽木村実復興庁参事官
一、候補地の大熊、双葉両町は大部分が帰還困難区域にある。国として主体的に復興に向けた考え方をまとめて示す。
◇佐久間俊男(民主・県民連合、郡山市)
一、除染方針の中間報告の説明責任を果たせ。
▽関谷毅史環境省福島環境再生事務所長
一、これまで除染の効果などについて説明が不十分な部分があった。中間報告に基づき、一層の情報発信に努める。
◇高野光二(ふくしま未来ネットワーク、南相馬市・相馬郡飯舘村)
一、放射性物質の飛散防止対策は。
▽山本哲也原子力規制庁審議官
一、東京電力福島第一原発1号機のがれき撤去では、飛散防止剤の散布回数を増やす。東電の取り組みを監視していく。
◇長谷部淳(共産、いわき市)
一、福島第二原発の廃炉は国が決定すべき。
▽土井良治経済産業省大臣官房審議官
一、県内原発の全基廃炉要請は承知している。国ではなく、東電がエネルギー政策などを踏まえて総合的に判断する。
◇安部泰男(公明、いわき市)
一、除染のリスクコミュニケーションが必要。
▽関谷所長
一、福島、郡山、伊達、相馬の4市でモデル事業を実施し、正確な情報を分かりやすく伝えていく。
◇古市三久(福島・みどりの風、いわき市)
一、凍土遮水壁は有効に機能するのか。
▽糟谷敏秀経済産業省資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監
一、実証試験で地下水の建屋への流入を防ぐ効果が確認できた。十分に凍らない場合でも凍結管の増設で対応できる。
◇勅使河原正之(自民、郡山市)
一、増え続ける震災関連死の防止策は。
▽高橋直人復興庁福島復興局次長
一、関係省庁で被災者支援のワーキンググループを組織しており、見守り活動を行う相談員の育成事業などを充実する。
◇宮下雅志(民主・県民連合、会津若松市)
一、深刻な状況にある風評被害の対策は。
▽高橋次長
一、情報発信の仕方を工夫する。コマーシャルなどを活用し、本県のイメージアップにつながるPR戦略に取り組む。
◇宮川絵美子(共産、いわき市)
一、避難指示解除後の賠償打ち切りを見直せ。
▽松尾浩道文部科学省研究開発局原子力損害賠償対策室総括次長
一、区域解除後の地域の医療や福祉の態勢などに配慮し、東電が被災者に寄り添った対応に努めることを期待する。
◇川田昌成(ふくしま未来ネットワーク、須賀川市・岩瀬郡)
一、本県の現状をどう捉えるか。
▽後藤収原子力災害現地対策本部副本部長
一、避難者帰還に向けた取り組みの加速が求められる。浜通り復興に向け、ロボット開発や廃炉技術産業の育成が必要。
◇石原信市郎(福島・みどりの風、福島市)
一、東電の損害賠償に向けた指導の在り方は。
▽森本英雄経済産業省資源エネルギー庁原子力損害対応総合調整官
一、原子力損害賠償支援機構が東電に適正な賠償の実現を求めていく。機構は賠償だけでなく、廃炉の技術支援も行う。
■増設で来秋100万トン分に 汚染水地上タンクの保管量
東京電力福島第一原発で発生した汚染水を保管する地上タンクの保管量について、糟谷敏秀経済産業省資源エネルギー庁廃炉・汚染水特別対策監は来年秋までに100万トン分に達する見通しを示した。佐久間俊男議員(民主・県民連合、郡山市)の質問に答えた。
福島第一原発では、1日当たり約400トン増え続ける汚染水に対応するため、「フランジ型」と呼ばれる従来のタンクを廃止するとともに、溶接型タンクの増設作業が進んでいる。糟谷氏は「タンクの置き換えが進めば、(構内のタンクは)100万トン分が限界という認識はない」とし、さらなる容量の確保が可能との認識を示した。東電は平成26年度内に約93万トンのタンクを確保する計画。
■中間貯蔵運用へ地元2町と協定 環境省方針
環境省は中間貯蔵施設の運用に当たって、施設の安全性のチェックに周辺住民が関わるなどの内容を盛り込んだ安全協定を県や大熊、双葉両町と締結することを想定している。18日の県議会全員協議会で同省の高橋審議官が吉田議員の質問に答えた。
同省によると、安全協定では、安全性の監視に周辺住民が関わるほか、施設近辺の放射線量のモニタリング、トラブルが起きた際の運用停止、運用状況の定期的な周辺住民への報告などを考えている。
( 2014/08/19 09:24 カテゴリー:主要 )