日本海地震想定 最大津波 隠岐7・4メートル
2014年08月27日 讀賣新聞
◇到達 松江には6分後

島根原発の周囲に建設された海抜15メートルの防波壁。国の試算では最大3・1メートルの津波が押し寄せる(昨年10月、松江市鹿島町で)
26日に国が公表した、日本海で巨大地震が起きた場合の津波の高さや到達時間。試算を基に、国は沿岸に面した県内11市町村には最大7・4メートルの津波が押し寄せる、としている。しかし、ほぼすべての地点で県や中国電力の試算を下回っており、県内の各機関は「驚きはない」と冷静に受け止めている。(寺田航)
国によると、津波による浸水想定は、日本海中部地震(1983年)や新潟県中越沖地震(2007年)など過去の地震の記録や地形などを基に試算した。マグニチュード(M)6・8~7・9の地震が予想される断層を設定し、断層の動き方などに応じて253通りの津波を予想している。
島根沖のほか、秋田県沖などで起きる地震も県内への津波被害をもたらすと想定。自治体ごとの最高値(全海岸線)は、隠岐の島町が最も高い7・4メートル、西ノ島町で6・8メートル、松江市で6・1メートル。また、30センチの津波の到達時間(平地)は最短が松江市の6分で、出雲市9分、益田市14分――と続いた。
国の試算を上回る値を設定している県内では、「想定の範囲内」として冷静な見方が広がった。
県は2012年6月、日本海での地震や津波による県内への影響をまとめた「県地震被害想定調査報告書」を作成。日本海の4か所で起きる可能性がある地震を設定し、それぞれ津波の高さや到達時間などを計算した。それによると、新潟県・佐渡島沖を震源にM8級の地震が起きた場合、隠岐の島町に最大13・35メートルの津波が来ると予想。松江市には12・24メートル、海士町には12・02メートルと見込む。
また、最短到達時間は、出雲市沖で地震が起きた場合、同市に1分、松江市に3分、大田市に11分で到達する――と予想している。
県の担当者は「国の試算は驚くような結果ではなかった。データを精査し、これまでの津波の被害想定をもう一度再検討するべきか考えたい」とする。
島根原発2号機の再稼働を目指し、安全対策を進める中国電も同じ考えだ。
同社は津波による浸水を防ぐため、同原発沿岸を囲むように全長1・5キロの防波壁を設置。福島第一原発を襲った15メートル級の津波にも対応できるよう、高さは海抜15メートルにした。
島根原発では、周辺の断層が連動して地震が起きた場合、最高で9・5メートルの津波が押し寄せると想定しているが、今回、国は島根原発(松江市鹿島町)付近に到達する津波は、「最大3・1メートル」としている。
中国電島根原子力本部の井田裕一広報部長は「これまでより、津波に対して余裕をもたせた安全対策を行っている。引き続き国の審査に適切に対応したい」としている。
◇避難計画3市のみ 県「ほかも早期策定を」
日本海で起きる巨大地震に備え、津波災害時の避難ルートや避難場所などを定めた「津波避難計画」について、海に面した県内11市町村のうち、策定しているのは、わずか3市にとどまっていることが分かった。県は「住民の命を守るために必要」として、残り8市町村に早期策定を促している。
東日本大震災を教訓に、各市町村に地域の特性に合わせた避難対応を検討してもらおうと、県は2012年3月、同計画の策定に向けた指針を作成。沿岸自治体に、計画を早期にまとめるよう呼びかけている。
県内では、松江、出雲、益田市が、各地区の住民向けにワークショップを開催するなどして、昨年度までに策定。浜田市、西ノ島町は現在作業中で、同町は今年度中にもまとまる予定だ。
一方、県の想定で最大13・35メートルの津波が来ると予想された隠岐の島町は未策定。同町の担当者は「なるべく早く作りたいが、各地区の合意を得る必要があり、人手が足りない」と苦しい内情を明かす。津波の想定値が低く、影響が少ないとみられる安来市や大田市なども策定していない。
県防災危機管理課は「計画策定は津波対策の重要な柱の一つ。住民の安心・安全を確保するためにも、各自治体に積極的に働きかけたい」としている。(寺田航)