田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

鹿沼の省線坂。あるいは停車場坂。 麻屋与志夫

2014-01-03 20:07:25 | ブログ
1月3日 金曜日

●笑っちゃいますね。
今朝書いたブログ。
国鉄日光駅と表現しました。
もちろん、今では、JR日光駅ですよね。
国鉄なんていうと歳がバレマスヨネ。
もっとも、わたしの場合は最初からGGの歳は80歳と書いていますから――。

●国鉄ならまだいいほうです。
鹿沼のJR駅に行くには長い急な坂を登ります。
GGは「省線駅」なんてときどき口走ります。
国鉄の前は、鉄道省。
それを知っている人間で、その省線駅への坂、「省線坂」を元気に登れるひとは、もうあまりこの町にもいないことでしょう。





超短編 23 パノラマ(第二稿)

2012-10-29 04:06:24 | 超短編小説


23 パノラマ 第二稿

暗いネガティブな闇だった。
下降するぬかるんだ急な坂だった。
彼女とのことをおもうと、暗いことばかりかんがえた。
ひとりで東京へ行く。
彼女との愛をあきらめるのにはそうするしかない、とおもった。
死ぬほどつらかった。
死のうともおもっていた。

停車場坂といった。
このぬかるみの坂をのぼるのだ。
のぼれば――なんとか道がひらけるだろう。
駅に着けば出発できる。
どこへ? 
むろん、めざすはトウキョウだった。
あらゆるシガラミをすてて故郷を離れたかった。
闇はこころのなかにあった。
どうせこのまま街にのこってもいいことはない。
彼は長年生きてきた街を、すきにはなれないでいた。


急坂をのぼる気力だけはのこっていた。
わずかな、仄の明かりのような希望。
東の空が明るんできた。
日光線鹿沼駅。
始発に乗る。
宇都宮で東北線にのりかえて、こんな街とは――。
オサラバダ。

明けきらぬ黎明の道を彼女が黒川の向こう岸から近寄ってくる。
彼女の不意の出現に彼はあわてた。
彼女が追いかけてくるとはおもってもみなかった。
彼女は街の東側の『晃望台』に住んでいた。
富裕層の高級住宅街だった。

彼女はむじゃきに手をひらひらさせている。

「こなくていい。ぼくがそちらへいくから。橋をわたらなくていいよ。くるな。ぼくがいく」

べつに橋に危険があるわけではなかった。
でも、彼女をこちら側にこさせることが、憚られたのだ。
彼女がすきだ。死ぬほど愛している。
だから、生活をともにすることはできない。
ぼくといっしょだと、彼女は苦労する。
彼女はぼくとのビンボウ暮しにはたえられない。
彼女がなにかいっている。
ぼくの声は、彼女にとどいているはずだ。
彼女はフラノのチェックのスカートをはいていた。
ベルトの留め金が金色に光っていた。
彼女のベルトのバックルのしたにぼくらの赤ちゃんがいるのを、
そのときまで、ぼくはしらされていなかった。
胎児が母とともに、ぼくに近寄ってきた。

「くるな」

彼女はすでに橋の中央までさしかかっていた。
ぼくの声がようやくきこえた。
それがクセのうなじをかしげている。
こちらをみている。
たちどまった。

「くるな。ぼくはひとりで上京する。いかせてくれ」
「わたてしもいくわ」

そこで、記憶がとぎれる。ストーンと落下したのは明るい室だった。

彼女のとなりに赤ちゃんが寝ていた。
まさに天使の寝顔だった。
すやすやと寝息をたてていた。
彼女のベルトを質入れして作った金で支払いを済ませた。
純金のバックルつきのベルにたすけられた。
彼はしあわせだった。
守るべきものが二人になった。
「どう、かわいいていでし。わたしたちの赤ちゃんよ」

そこで、さらにさらに歳月がながれた。
死んでいく者には一瞬だった。
とぎれた記憶がつながる。
ストーンとふたたび落下したのは死に臨んでいる老人の病室だった。
瀕死の老人を上から見下ろしている彼。
……の……
…こころは……満たされていた。
ポジティブ気分で死んでいける。
これでいい。
これでよかったのだ。

「おじいちゃん。ほほ笑んでいたわ。どんな夢をみていたのかしら」
ベットの老人はいままさに息をひきとったところだった。
「おかあさん。さびしくなるわね」
あれから50年以上が経っていた。
彼女はあのときの、彼のこころをしるよしもなかった。
娘のほかに息子。孫たち。
大勢の親族が集まっていた。
老婆はそれがクセだった。

くびをかしげ、遠くを見ていた。


●以前書いた超短編です。
この停車場坂がでてきます。
再録しました。
GGからのお年玉です。
お楽しみください。

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さすが男体颪。初詣はGGにはチョットムリだった。麻屋与志夫

2014-01-03 05:54:26 | ブログ
1月3日 金曜日

●昨日は日光に出かけた。
でもあまり風が強いので東武日光駅の外に出るのはかなり辛かった。
「せっかく来たのだから、写真撮る」
カミサンは駅前から女峰山にカメラを向ける。
それからがたいへんだった。
「シャッターがきれない。きれない。どうしょう」
と大騒ぎになった。
望遠レンズをつけたらとれた。
遠方を撮るには、望遠でないと良く撮れない。
いまのカメラはお悧巧さんだから、焦点があわないとシャッターがきれないのだろうか。

●一眼レフのことは何も知らないわたしは、いくら訊かれても応えられない。
歯がゆかった。
いますこし時間があればカメラのことも勉強したいのになぁ。

●風が吹いているので体温が奪われる。
寒い。
震える。
さすが日光の風、男体颪。
感心ばかりはしていられない。
残念だが、引き返すことにした。
これはGGに成ったからこその知恵だと思った。
「若い時だったら、こんなことはしないよ。風邪でも引いて、小説書く仕事やすみになったら困るもの……」

●数分歩いて、国鉄日光線の駅から電車で宇都宮に行くことになった。
カミサンは車窓から日光の山々を見てくやしそうだった。
「20分でこられるのだ。また来よう」
「明日来たいわ」

●宇都宮のララスクェアでベットカバーを買った。
それで、カミサンのゴキゲンはなおった。

  東武日光駅から
   

   



   

   

   


 角川ブックウォーカー惑惑星文庫で検索してください。
 はじめの4ページくらいは立ち読みコーナーがあって気軽に読めますよ。
 ブログとは違ったGGの小説の文章を読んでみてください。
 
 
 

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