田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

口裂け女に噛まれた。 麻屋与志夫

2015-10-15 10:14:28 | 夢見るGGの夢占い

10月15日 木曜日

雪が降っていた。
雪に触れたところが凍ってしまう。
雪の荒野に立っていた。
人里の明かりは見えない。
見渡す限りの銀世界。
わたしはどこかに行こうとしているのだが、
その場所がわからない。
どこに行こうとしているのだ。
もうこれいじょうは、歩けない。
雪が赤く染まった。
血らしい。
雪のなかからアギトが、このとき、不意にあらわれた。
ガブッと右腕に噛みつかれた。
身体を裂かれる激痛。
悲鳴をあげていた。
夢だった。
夢の中の悲鳴で目覚めた。
夢には色はない。
ソンナノウソダ。
あれは蘇芳色のわたしの血だった。
流血はとまらなかった。
夢から覚めても、噛まれたところが、まだ痛む。
左腕をのばして右腕をたしかめた。
腕はガッポリと食いちぎられていた。
わたしは泣きだした。
痛みと、片腕を失った悲しみで――。
泣いた。
身体がふるえだした。
凍えるように、寒い。
じぶんのすすり泣く声でこんどこそ目覚めた。
夢のつづきをみていたのだ。
未明。
冷え込んでいた。
室温十二度。
この秋初めての寒さだ。
掻巻(かいまき)を一枚かけただけで寝ていたから、
こんな夢をみたのだ。
しかし恐かった。
キシツ。キシツ、と雪を踏みしめて追いかけてきた者は――。
噛みついてきた者は、口裂け女だった。
吸血鬼ではなかった。
ユリの花のように口が裂け広がり、白く光る歯。
アゴがせり出した。
夢のつづきをみているようで恐い。
牙鳴りの音がまだ耳もとに迫ってくる。
口裂け女に牙はあったろうか。
あれはすると乱杭歯の吸血鬼だったのか。




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