田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

巷に雨の降るごとく、わが心にリリの涙降る  麻屋与志夫

2016-05-10 06:32:19 | ブログ
5月10日 Tue.

●夜来の雨が小止みになった。妻が薔薇の剪定をした。二袋もある。透明なゴミ袋のなかにバラの小枝や緑の葉がびっしりとつまっている。また降りだしたら外にでるのが億劫になる。夜が明けたばかりだったので静かだ。そっと玄関をあけた。昨日のうちに見ておいた場所に袋はあった。あれからまた剪定作業をつづけたのか、袋の中にはドキッとするほど赤い薔薇が一弁はいっていた。梅雨寒のような(まだ梅雨入りはしていないよな、でも肌に感じる寒さは、まさに梅雨寒)朝の寒気にはそぐわない。真赤な薔薇は五月晴れの薫風にこそよくにあう。

●門扉を開けてから、あわてて閉めた。リリが外にでてはたいへんだ。そこで、気づいた。リリはもういない。いないのだ。霧雨が睫毛について、いやリリを思いだして哀れで、涙がでているのだった。

●悲しみはまだ断続的につづいている。ふと、なにげない日常のなかで、こみあげてくるように思いだす。門扉が門柱にあたって大きな音をたてた。まだ寝ている近隣のひとたちをおどろかせてしまったのではないかと気になった。

●ゴミ集積所の黄色い網が黒く、土砂がこびりついていた。食べものの残滓ではないから、カラス避けの網は被せる必要はないだろう。ビン類や空き缶をいれる容器の底にかなりの雨がたまっていた。昨夜はあまり寝なかった。うとうとしながら小説をよんだ。みんな上手くかくものだな。やっぱりおいらは能なしだ、なんてかんがえた。でもかなりの時間寝ていたのだろう。雨は何時頃強く降ったの? 歳のせいなのだろうか。なにかすべてにおいて、知覚が鈍くなっている。

●それなのに、リリを失った悲しみからはまだぬけだせない。

●30メートルほど歩き宝蔵時の雨に打たれてぬれた墓場を眺めた。

●リリの墓標をたてるかわりに、ホリゴタツの前の襖にリリのシヤシンをはりつけた。こうしておけば、いつでも、リリに話しかけられる……。










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