29
孝子は悲鳴をあげた。
お酒を飲み過ぎている。
こんなに、遅くなるつもりではなかった。
久し振りで会った友だちとつい飲みすぎた。
口のなかがねばい。
カラオケパブからの帰りだった。
白い腕がのびてきた。
街灯のなかに男の姿がうかびあがった。
夜が暗く重い。
今夜も春の雪になるかもしれないと思った。
「孝子ちゃんはもう雪はみられないの。うふ、うふふふ」
男が不気味に笑った。
口元が赤く爛れているようにみえる。
男から冷気がふきだしている。
体が凍えてしまいそだ。
そして、孝子は気づいた。
これは寒さなんかてはない。
わたしは恐怖で動けなくなっているのだ。
冷や汗が背中をながれている。
がくがくとふるえていた。
ああ、もうだめだ。
わたし恐怖で発狂しちゃう。
ケタケタ笑っているのは孝子じしんの声だった。
顎がガクガク鳴っている。
「どうして夜遊びするの。夜歩き回るこは、わるいこなんだよ」
ゲーセンからとびたしたところで篠子はよびためられた。
少年課の婦警?
「ぶー、はずれ」
毒々しい青。
鮫肌。
もりあがっている。
鱗みたい。
口元が赤い。
まるでいまあそんでいた吸血鬼ゲームみたい。
血を吸ったみたい。赤い。
「ピンポン。こんどはアッタリー。篠子ちゃん血も吸わせてぇ」
篠子は逃げる。
夜の街を恐怖におののきながら逃げる。
こんなことなら、母のいいつけを守ってひとりで留守していればよかった。
後悔先に立たず。
だれもいない。だれもたすけてくれるひとはいな。
無人の街。まるで、セガのゲームの世界。
THE HOUSE OF THE DEAD の世界に迷い込んだみたい。
でも、これは現実だ。
こんなに息ぎれがする。
動悸が激しすぎる。
どうしたら、アイツを消去できるの。
消去、できるの?
わたしは、わるいこ。
わるいこだった。
おかあさん、助けてぇ。
これからはいいこになります。
でももうおそい。
ズルッとわたしの血が吸われている。
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孝子は悲鳴をあげた。
お酒を飲み過ぎている。
こんなに、遅くなるつもりではなかった。
久し振りで会った友だちとつい飲みすぎた。
口のなかがねばい。
カラオケパブからの帰りだった。
白い腕がのびてきた。
街灯のなかに男の姿がうかびあがった。
夜が暗く重い。
今夜も春の雪になるかもしれないと思った。
「孝子ちゃんはもう雪はみられないの。うふ、うふふふ」
男が不気味に笑った。
口元が赤く爛れているようにみえる。
男から冷気がふきだしている。
体が凍えてしまいそだ。
そして、孝子は気づいた。
これは寒さなんかてはない。
わたしは恐怖で動けなくなっているのだ。
冷や汗が背中をながれている。
がくがくとふるえていた。
ああ、もうだめだ。
わたし恐怖で発狂しちゃう。
ケタケタ笑っているのは孝子じしんの声だった。
顎がガクガク鳴っている。
「どうして夜遊びするの。夜歩き回るこは、わるいこなんだよ」
ゲーセンからとびたしたところで篠子はよびためられた。
少年課の婦警?
「ぶー、はずれ」
毒々しい青。
鮫肌。
もりあがっている。
鱗みたい。
口元が赤い。
まるでいまあそんでいた吸血鬼ゲームみたい。
血を吸ったみたい。赤い。
「ピンポン。こんどはアッタリー。篠子ちゃん血も吸わせてぇ」
篠子は逃げる。
夜の街を恐怖におののきながら逃げる。
こんなことなら、母のいいつけを守ってひとりで留守していればよかった。
後悔先に立たず。
だれもいない。だれもたすけてくれるひとはいな。
無人の街。まるで、セガのゲームの世界。
THE HOUSE OF THE DEAD の世界に迷い込んだみたい。
でも、これは現実だ。
こんなに息ぎれがする。
動悸が激しすぎる。
どうしたら、アイツを消去できるの。
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