田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

幻想する散歩 麻屋与志夫

2023-01-04 09:12:17 | ブログ
1月3日 火曜日 室温4℃
三が日のせいなのだろう。
街が静かだ。
予定通り、母校の小学校まで散歩に出た。
暗渠の上の歩道を歩いている人はいない。
聖母幼稚園も休み。
元気な園児たちのさざめきもきこえない。
車は一台も走ってこなかった。
暗渠の上のコンクリートの歩道には30メートルおきに鉄の格子がはめ込まれている。
流れの音がする。
えっ、こんなに勢いよく水が流れているのだとおどろいた。
ほのかに生臭い水のにおいがしてきた。
車の騒音も、園児のざわめきもきこえない。
まるでよその世界にいるようだ。
わたしだけしか、存在していないような幻想にとらわれる。
ばしゃっと足元で水がはねた。
一瞬。鉄格子の下に魚影をみた。
たしかにウロコらしきものが弁天池のほうに流れをくだっていった。
銀鱗まではっきりみた。
そのウロコが生臭いにおいをたてていた。
ふりかえって追いかけようとおもったがやめた。
川の流れより早く歩くことは出来ない。
苦笑した。
もう若くはない、いつお呼びがかかっても、おかしくはない歳だ。
小説を書きた一心で生きている。
子供のころ、この川でよく魚とりをした。
ヤスや網をもってこの川にもジャブジャブはいったものだ。
でも、あれほど大きな魚は見たことがない。
子どもが魚とりをしないので、大きくなったのだろうか。
いや、あれは魚のウロコではない。
鮫の鱗のようにとげとげしていた。
15年ほど前に、母校の体育館の床下に人狼が住みついていて――。
街のひとびとを殺害するという恐怖小説を書いた。
あくまでも小説、フィクションなのだ。
街や建物を実名で書いたので発表するのをためらっている。
自分の知っている名前や地名、神社仏閣がでるとどうしてもリアルと思える。
モデルさがしでもして、実在の人物に迷惑がかかってはと考慮してのことだ。
架空の場所にすればいいのだが、それではわたしが納得できない。
いろいろと幻想にふけっているうちに、母校の石塀にたっした。
どんな塀に改修されるのだろうな。
こんどは近い未来を想像してみた。
物書きには、一人散歩だからといって、退屈するようなことはない。



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