田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

奥さまはvampire/  麻屋与志夫

2009-04-20 15:43:51 | Weblog
奥様はvampire 4

○「sconeは」

「あっ、忘れた!!」

バスのなかに響きをわたる声。甲高いmimaの声が回りのひとをおどろかせた。いっ

せいに乗客の視線がmimaに注がれる。

「スコーンとどけるためにでかけてきたのだよな」

わたしはscornfulにならないように最善の注意をはらってmimaの耳元で囁く。

二人で途中下車。

「また出直してこようよ」

「だってスコーンは温かなほうが美味しいもの」

停車場坂を小走りに彼女の姿は消えていった。

駅前のブックオフで時間を過した。

20分ほど待った。なにげなくポケットに手をやった。チリンと鈴の音、しまったキ

ーを渡さなかった。

あのとき、最善の注意をはらった。

侮蔑しているようにとられないように冷静に話しかけておいてよかった。

でないと逆襲をうけた。

「物忘れのひどいのはおたがいさまね」


にやりと、邪険な笑みで応酬されたはずだ。

童女のような顔に邪険な微笑みは似合わない。

わたしはあわてて家にむかった。

いまごろどうしているだろうか。

手帳に妻の携帯のナンバーを記しておけばよかった。

なんたる不手際。

なんたる不運。

妻は家に入れずどうするだろうか。

引き返してくる。

わたしが戻ってくるまでと、のんびりと庭の薔薇に水をやっている。

バスにのって戻ってくることもあるだろう。

来た。バスが来た。ちょうど、府中橋の上で止まった。交差点のシグナルが赤だ。

妻はのんびりとこちらに背中をみせてチョコナンと座席にすわっていた。わたしは

あせってバスの窓越しによびかけた。

「ミマ―」

だめだ。密閉されているので聞こえない。窓の外からトントンと叩いた。さすがに

気づいた。おどろいている。

「なんども同じ道、行ったり来たりしては……ナンダか恥ずかしい」

「回り道して帰ろう」

彼女が忘れっぽいのはあまりに長いこと生きているからだ。

些細なことをいちいち覚えていたのでは頭がパンクしてしまうだろう。

わたしの元を離れたら、すぐにわたしのことなど忘れてしまうだろう。 

わたしのはボケの始まりではないか。

真剣に、真面目に徹底的に心配になってきた。

吸血鬼のカミサンをもつと笑いありスリルありで、楽しいったらありゃしない。



one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
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ああ、快感。



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