田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

思いで小路を今日も散歩 麻屋与志夫

2022-11-11 10:36:28 | ブログ
11月11日 金曜日
●またしても蜂谷柿を追加購入したくなった妻のお供で「思い出の小路」を歩くことになったのはよろこばしいことなのだが、あいかわらず足が苦痛を訴えて、彼女の歩みについていけない。

●長年連れ添った妻なのだから、いまさら体裁をとりつくろう必要はない「待ってくれ、いますこしゆっくり歩いてくれ」と彼女にせがみ、懇願すればいいのだが、あまりたびたびおなじ言葉を彼女になげかけるのはやはり遠慮したい。

●「わたしは早く歩かないと、おなかの贅肉をおとせないのよ」と冷淡な口調でいわれることを危惧してそれができない。

●はじめて彼女と手をつなぎ宇都宮の「二荒さん」の前から作新学院のある三ノ沢まで、焼けるような戦慄を体感しながら歩いた、記憶の奥底に重なり合っている一片を白昼の元に引き出して、うすら寒い幻惑感に現在さいなまれているじぶんを労わることにしている。

●妻にたいしてなにか不満がある時には、はじめて彼女に声をかけた時の、ときめきに身をゆだねることにしている。65年も前のことですよ。その間、波乱万丈とまではいいきれないが、いくたの困難をくぐりぬけて、わたしと妻がある。いちども喧嘩したことがない。それは人間だからいい争いくらいはしてきたが――。

●足元のこげ茶色の落ち葉の路がつき、今宮神社の鳥居のあたりに、県警の車が数台止まっていて警官がおおぜい集まっている。何ごとかと声をかけるが返事は誰からももどってこない。

●妻は歩道のついた大通りを遥か彼方、中央小学校のすっかり黄葉した銀杏の大木のかげにかくれるところだった。



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