「お困りのようですね。
どうです、あなたの命お売りしてもらえませんか。」
ダークスーツに身を包んだ男がそう言った。
東京に仕事で向かうため俺は深夜バスに乗っていたはず。
夜なのか朝なのかわからない。
どこまでも真っ白で果ての見えない空間に2人掛けのソファーが一脚、そこに俺は座っている。
「困っている?それはどういう意味ですか?」
状況が飲み込めない。
「あなた、たしか深夜バスに乗られて東京に向かわれていたはず。おかしいでしょう、バスに乗っていない。」
目の前の男は縁無しめがねを外し、胸のハンカチで拭きながら言った。
「死神って信じますか?」
唐突に男は言った。
「はっ…」
「わたしは俗に言うそれです。ちなみにこれは夢ではありませんよ。今朝未明、午前2時すぎでしょうか、あなたの乗られた深夜バスは事故に遭いました。」
全身に衝撃が走る。
「そんなうそだろ」
「嘘をつく理由が私にはありません。全身を強く打ち、あなたは即死。そこで先ほどの提案に戻りますが、あなたの寿命をお売りねがえませんか。」
「それは生き返らせてくれるということか」
「そうです。ただし例えば80年生きる寿命を半分いただきます。まあ、この提案に選択の余地は無いかと思います。」
「断れば?」
「即死です」
気がつくと俺は新宿バスターミナルに立っていた。
事故は起こらなかった。
しかし、あのやりとりは事実であったと感じる事が出来た。
あの瞳の輝きは、思い出すだけで体がすくむ。
そして死ななかった事に安堵した。
その日の東京での商談をきっかけに事業はトントン拍子、拡大することとなった。
それから数十年の月日が流れた。
俺は病室の天井を見ている。
自分の人生を振り返っていた。
精一杯仕事に精をだし、妻子にも恵まれた。
あの悪魔との契約がなければ、もっと俺は生きれた訳か
…
そんなことを考えた。
その瞬間、自分の頭側のベットサイドに人の気配を感じた。
どうやら迎えが来たか。
「どうもどうも、ご無沙汰しています。その節はどうも…」
ダークスーツの男だ。
「とうとう、私も寿命かね…」
「はい、そういうことです」
「そうかね。残念だが仕方ない。」
「こんなときに何ですが、あなたの命、何に使ったとおもいます?」
「さあね、どこかの金持ちがあんたの喜ぶ報酬を払って生きながらえているのじゃあないかね。」
「ブー!不正解です。」
「そうか。まあ知りたくないというのが正直な気持ちだ。
消えた命を再び灯してもらってあんたには感謝しているよ」
複雑な表情を浮かべ、死に神は言った。
「あなたの命を私が買ったということは、あなたに命をお分けすることもやぶさかではないという提案がありますが、いかがですか、聞きますか」
「いや、やめておこう」
「そうですか、欲が無いんですね。ではさようなら」
「ああ」
やすらかに息を引き取った。
悪魔は思った。
まあ、あんた聞かない方が正解だよ。
実はあんたの命はおやじの命を継いである。
そしてあんたに分けてもらった命はあんたの息子に継いだんだ。
あんたの息子は不治の病で病死する運命だった。
あんたが延命するただ一つの方法、それは俺に大量の他人の寿命をさしだすことだったのさ。
そのあつまった寿命のおこぼれをあんたに延命分として渡す。
そういう話だったのさ。
しかし、あんたの一族はこの話になかなか乗らないね。
だが、あんたの息子はどうだろうな。
あんたの息子との会話が楽しみだよ。
どうです、あなたの命お売りしてもらえませんか。」
ダークスーツに身を包んだ男がそう言った。
東京に仕事で向かうため俺は深夜バスに乗っていたはず。
夜なのか朝なのかわからない。
どこまでも真っ白で果ての見えない空間に2人掛けのソファーが一脚、そこに俺は座っている。
「困っている?それはどういう意味ですか?」
状況が飲み込めない。
「あなた、たしか深夜バスに乗られて東京に向かわれていたはず。おかしいでしょう、バスに乗っていない。」
目の前の男は縁無しめがねを外し、胸のハンカチで拭きながら言った。
「死神って信じますか?」
唐突に男は言った。
「はっ…」
「わたしは俗に言うそれです。ちなみにこれは夢ではありませんよ。今朝未明、午前2時すぎでしょうか、あなたの乗られた深夜バスは事故に遭いました。」
全身に衝撃が走る。
「そんなうそだろ」
「嘘をつく理由が私にはありません。全身を強く打ち、あなたは即死。そこで先ほどの提案に戻りますが、あなたの寿命をお売りねがえませんか。」
「それは生き返らせてくれるということか」
「そうです。ただし例えば80年生きる寿命を半分いただきます。まあ、この提案に選択の余地は無いかと思います。」
「断れば?」
「即死です」
気がつくと俺は新宿バスターミナルに立っていた。
事故は起こらなかった。
しかし、あのやりとりは事実であったと感じる事が出来た。
あの瞳の輝きは、思い出すだけで体がすくむ。
そして死ななかった事に安堵した。
その日の東京での商談をきっかけに事業はトントン拍子、拡大することとなった。
それから数十年の月日が流れた。
俺は病室の天井を見ている。
自分の人生を振り返っていた。
精一杯仕事に精をだし、妻子にも恵まれた。
あの悪魔との契約がなければ、もっと俺は生きれた訳か
…
そんなことを考えた。
その瞬間、自分の頭側のベットサイドに人の気配を感じた。
どうやら迎えが来たか。
「どうもどうも、ご無沙汰しています。その節はどうも…」
ダークスーツの男だ。
「とうとう、私も寿命かね…」
「はい、そういうことです」
「そうかね。残念だが仕方ない。」
「こんなときに何ですが、あなたの命、何に使ったとおもいます?」
「さあね、どこかの金持ちがあんたの喜ぶ報酬を払って生きながらえているのじゃあないかね。」
「ブー!不正解です。」
「そうか。まあ知りたくないというのが正直な気持ちだ。
消えた命を再び灯してもらってあんたには感謝しているよ」
複雑な表情を浮かべ、死に神は言った。
「あなたの命を私が買ったということは、あなたに命をお分けすることもやぶさかではないという提案がありますが、いかがですか、聞きますか」
「いや、やめておこう」
「そうですか、欲が無いんですね。ではさようなら」
「ああ」
やすらかに息を引き取った。
悪魔は思った。
まあ、あんた聞かない方が正解だよ。
実はあんたの命はおやじの命を継いである。
そしてあんたに分けてもらった命はあんたの息子に継いだんだ。
あんたの息子は不治の病で病死する運命だった。
あんたが延命するただ一つの方法、それは俺に大量の他人の寿命をさしだすことだったのさ。
そのあつまった寿命のおこぼれをあんたに延命分として渡す。
そういう話だったのさ。
しかし、あんたの一族はこの話になかなか乗らないね。
だが、あんたの息子はどうだろうな。
あんたの息子との会話が楽しみだよ。