日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日のお話(ミスター・ホーコーの野望)

2015年12月05日 | ◎これまでの「OM君」
むかしむかしあるところに最強の矛があった。
最強であることを矛自体が望んでいた。
そのため持ち主は次々と変わっていった。
あるものは戦いに敗れ、あるものは老いに負けた。
現在の持ち主はミスターホーコー。
ホーコーは生まれついての武人であり、鍛錬も怠らなかった。
手元に矛を永遠に置いておきたかった。
ホーコーは考えた。
どうすれば矛は俺の手元にあり続けるのか。
来る日も来る日も考えた。
ある時気づいた。
それはトイレで用を足しているとき。
電流がはしった。
古来、矛盾という言い伝えがある。
最強の矛と最強の盾。
論理の整合性はとれない。

「そうか!」
ホーコーは感じた。
そして最強の矛を城の際深部に位置する道場に飾り、戦うことをやめた。

それからすぐに戦乱の世は終わった。

ホーコーの望み通り、矛は死ぬまでホーコーの手元にあった。

ホーコーの死後、最強の矛は門下生最強の男の手元に渡った。
そこに最強の盾をもった男が現れた。
その男は武人と言うより研究者のように見えた。
手合わせを望んだ。
ホーコーの弟子は言った。
「あなた死ぬかもしれませんよ。よろしいのですか?」
「いいえ死にません。そしてあなたも死にません。ただ私の発明した盾が最強であることを証明したいのです。」

勝負が始まった。
かまえる矛。
迎える盾は畳半畳ほどの平らな板状をしていた。
盾を構える男は隙だらけだ。
どこからでも致命傷を与えられるようにホーコーの弟子は感じた。
勝負は勝負だが、手足の一本で勘弁してやる。命までは取るまい。

そう決心し、一撃をはなった。
盾は半畳が一畳、一畳が二畳と広がり、六畳となった。
六枚の盾が男を囲む立方体となった。

ガツン
重い音。
矛の刃先だけが盾を貫通した。
しかし、それ以上刃が進まない。
ぐっ
驚愕の息をもらし、矛を抜く。
穴はじんわりとふさがり、キューブがそこにただ、あった。

あとは同じ攻防の繰り返しだった。
刺そうが突こうが中の男まで刃が到達しない。
盾は傷つくが自己修復する。
ホーコーの弟子は、徒労感に襲われた。
そしてホーコーの弟子の弟子達にキューブを城外まで担ぎ出させた。
そしてホーコーの弟子もまた、戦うことをやめた。
コメント
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