英一は今日も寝坊した。
大学とアパートは目と鼻の先なのだが、ついつい油断してしまう。
とくに冬場は唯一の暖房器具がコタツしかない英一の部屋では布団から抜け出したくない一心なのだ。
自然の摂理で一限目の講義は遅刻が多くなっている。
講義は始まっている時間なので構内の廊下には人影は無い。
教室の後ろの扉を遠慮がちに空けて入室する。
一番後ろの席。
健吾が座っている隣が空いている。
まあ、席は決まっていないがいつもだいたいそのあたりがおきまりの席となっている。
「出欠は?」
英一は聞いた。
「まだ」
その返事を聞いて英一は安心した。
我が大学では出欠はマークシート方式となっている。
大学の事務員さんが御丁寧にまず白紙を配り、学生が記入したシートを回収する。
この儀式の前に滑り込めば出席をゲットできる。
しかし、確実に出欠を確認出来る反面、このシステムは問題をはらんでいた。
マークシートを提出して出席を獲得した後、講義を抜け出す者が続出するのだ。
抜け出す学生がいる事は教授達はもちろん把握しているのだろう。
でも抜け出すバカ学生をいちいち相手にはしていなかった。
しかし、その日は違った。
抜け出した学生にいらだった教授は、授業を放棄して追いかけていったのだった。
あっけにとられる学生達。
「いっちゃたね」
「そうね」
本日の授業の教授は少し変わり者だったのだ。
ふだんから素肌の上に白衣を羽織っていた。
そして構内をその格好のままトレーニングとしてジョギングするのが日課になっている。
まあ、やりかねない教授だった。
退屈しだした学生達はわいわいと世間話を話し始める。
「ゲームはどうよ」
「うん、そろそろPS4を導入しようか、いや待て待てなのかを真剣に検討しようかと思っている。
何しろ家のゲーム環境は2003年製の液晶テレビを使ってるもんだから、PS3でもギリギリの解像度なの。いやPS3でもアウトでしょぐらいなの。だからPS4に移行するならテレビも一緒に買い換えないとダメなの。そうすると、出費もかさむでしょう。テレビが壊れたら思い切ってPS4の購入を検討するんだけど、また思いの他テレビが頑丈で壊れる様子がまったくないのが憎らしいの」
「そうか大変だな」
「そうなの。そっちのカメラはどうなの」
「うん、いろいろとコレクションとして欲しいカメラは目白押しなんだけど、お金は無限に無いじゃない、だから積み立て制にしたの。毎月少しずつ貯めて、目標金額に到達したら買うっていう事に決めたの。もう欲望に資金がついて行かないことに気づいたの。一種のヒューエルセーフ。安全装置」
「そうか、お互い大変だ。あ、教授帰ってきたぞ」
肩で息をする教授が壇上にいる。
無念そうな表情を浮かべている。
「完全に逃げられたなあれは」
「そうだな」
大学とアパートは目と鼻の先なのだが、ついつい油断してしまう。
とくに冬場は唯一の暖房器具がコタツしかない英一の部屋では布団から抜け出したくない一心なのだ。
自然の摂理で一限目の講義は遅刻が多くなっている。
講義は始まっている時間なので構内の廊下には人影は無い。
教室の後ろの扉を遠慮がちに空けて入室する。
一番後ろの席。
健吾が座っている隣が空いている。
まあ、席は決まっていないがいつもだいたいそのあたりがおきまりの席となっている。
「出欠は?」
英一は聞いた。
「まだ」
その返事を聞いて英一は安心した。
我が大学では出欠はマークシート方式となっている。
大学の事務員さんが御丁寧にまず白紙を配り、学生が記入したシートを回収する。
この儀式の前に滑り込めば出席をゲットできる。
しかし、確実に出欠を確認出来る反面、このシステムは問題をはらんでいた。
マークシートを提出して出席を獲得した後、講義を抜け出す者が続出するのだ。
抜け出す学生がいる事は教授達はもちろん把握しているのだろう。
でも抜け出すバカ学生をいちいち相手にはしていなかった。
しかし、その日は違った。
抜け出した学生にいらだった教授は、授業を放棄して追いかけていったのだった。
あっけにとられる学生達。
「いっちゃたね」
「そうね」
本日の授業の教授は少し変わり者だったのだ。
ふだんから素肌の上に白衣を羽織っていた。
そして構内をその格好のままトレーニングとしてジョギングするのが日課になっている。
まあ、やりかねない教授だった。
退屈しだした学生達はわいわいと世間話を話し始める。
「ゲームはどうよ」
「うん、そろそろPS4を導入しようか、いや待て待てなのかを真剣に検討しようかと思っている。
何しろ家のゲーム環境は2003年製の液晶テレビを使ってるもんだから、PS3でもギリギリの解像度なの。いやPS3でもアウトでしょぐらいなの。だからPS4に移行するならテレビも一緒に買い換えないとダメなの。そうすると、出費もかさむでしょう。テレビが壊れたら思い切ってPS4の購入を検討するんだけど、また思いの他テレビが頑丈で壊れる様子がまったくないのが憎らしいの」
「そうか大変だな」
「そうなの。そっちのカメラはどうなの」
「うん、いろいろとコレクションとして欲しいカメラは目白押しなんだけど、お金は無限に無いじゃない、だから積み立て制にしたの。毎月少しずつ貯めて、目標金額に到達したら買うっていう事に決めたの。もう欲望に資金がついて行かないことに気づいたの。一種のヒューエルセーフ。安全装置」
「そうか、お互い大変だ。あ、教授帰ってきたぞ」
肩で息をする教授が壇上にいる。
無念そうな表情を浮かべている。
「完全に逃げられたなあれは」
「そうだな」