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タツオは愛犬のシロを散歩させていた。てくてくと歩いているとターバンを巻いたじいさんが絨毯の上で座禅を組んでいた。絨毯は地面から一メートルくらいのところで浮いている。ヨガじいさんは絨毯の上からしっかりと地面に杖をついている。杖めがけてシロが走り出した。いつものマーキングの場所だ。タツオは慌ててリードを引いた。
「もし、そこの旦那さん」
ヨガじいさんが話しかけてきた。タツオは出来るだけ目を合わさないように返答した。
「なんでしょうか」
「この空飛ぶじゅうたん買わないか」
「その空飛ぶ絨毯の種は僕知ってますよ。買いませんよ」
「そうか残念じゃな。じゃあちょっとここからわしが降りるの手伝ってもらえないか。足がしびれて動けない」
タツオは困った人を見ると放ってはおけない性格だった。ヨガじいさんの手を持って絨毯から下ろした。
「助かったよありがとう。お礼にこのピクルスをやろう」
じいさんは懐から瓶に入ったピクルスを出してきた。
「いやいいですよ」
タツオは必死に断ったが、じいさんは押しつけるように手渡すと足を引きずりながら消えていった。
いったい何だったのだろう。タツオはそう思いながら、シロの散歩を再開した。しばらく歩いていると後ろから肩をつかまれた。びっくりしてその場にしゃがみこんだ。サングラスとつけひげを付けたじいさんが立っていた。
「あんた、魔法のピクルス持ってないか」
「変装したってさっきのじいさんだろ。ピクルス持ってるよ」
「ちょっと何言ってるか分からないが、魔法のピクルスを持っているのか。それはありがたい。ワシに分けてはくれないか」
「あげますよ。いや返しますよ」タツオは座ったまま瓶を手渡した。
「まさにこれじゃ。ありがたい。お礼に魔法の絨毯を貸そう」
「やっぱりあんた、さっきのヨガじいさんだろう」
「いや、何言ってるか分からないが。何でもいい、空飛ぶ絨毯をあんたに貸す。一日三千円でどうじゃ」
「いりませんから」
タツオは無視して散歩を続けた。
しばらく歩くと空とぶ絨毯にのったじいさんが遠くに見えた。タツオはスマホをとりだして、110を押した。
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