日常観察隊おにみみ君

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◎本日の想像話「ギャンブルが基本の世界」

2019年09月07日 | ◎本日の想像話

 ギャンブルが基本の世界

 意識の遠くから電子音が聞こえる。目覚まし時計の音だと気づくまでしばらくかかった。昨夜もほぼ徹夜でオンラインカジノと取っ組み合ったせいだ。ほぼ寝ていない。だが起きなくてはならない。今日のギャンブルが始まるからだ。私はとにかく目覚まし時計の頭をたたきつける。ベルは止まったが、別の部分が動き出した。全面にしつらえたルーレットが回りだす。私は回る気配を感じてはね起きた。くるくる回る数字を凝視する。この目覚まし時計はネットとつながっている。3つの数字が揃えば数万円のポイントがもらえる。(ゲーム参加費として年1万円が必要)7・7と来て、3つめの数字が6と7を行き来する。私はいつの間にか眠気も忘れている。7・7・7でルーレットがまばゆい光を発して止まる。血液が一気に脳に流れ込むのを感じる。私は、上機嫌で立ち上がり、テレビをつけた。データボタンを押す。現在進行中の全国の競馬場でのオッズが表示された。私は地方競馬場の終日レース分の馬券をすばやく購入した。昨日のうちに全レースは研究済みだ。
 子供から大人まで自由に公共賭博に参加できるように憲法は改定されてもう二十年になる。ギャンブルは空気のように子供の頃からすぐ側にあった。
 グルーミングを終えた私はきつね色に焼けたおいしそうなトーストをかじりながら、コーヒーを飲んだ。喉をくだるおいしさに感謝しつつ、視線はノートPCを見ている。本日の株式市場が始まった。買っては売り、売っては買う。船の結果を見つつ、自転車の結果も見る。
 私にはギャンブルの才能があるらしい。預金残高の数字は増え続けている。
 しかし、勝負が終わらない。夜になる頃には地球の裏側は朝になる。賭場が終わっては始まる。
 私は私抜きの勝負がどこかで開催されるのが本当にいやだった。勝負には参加する。
 私は寝食を忘れて勝負を続けた。いつしか私の資産は世界一になった。
 一番をとった瞬間に私の脳裏にたどり着いてはいけない文言が流れてきた。私は世界一になってしまった。次は誰と勝負すれば良いのか。
 そう思った瞬間、私のぼろぼろの身体は文字通り崩れ落ちた。


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