日常観察隊おにみみ君

「おにみみコーラ」いかがでしょう。
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◎本日のお話「タマコ」

2015年08月23日 | ◎これまでの「OM君」
小さな嘘が始まりだった。
「おれ猫飼ってるんだ」
「へぇ~猫好きなんだ」
数少ない女性との出会い。
後輩がセッティングしてくれた飲み会。
俺は気合いを入れていた。
いや入れ過ぎだったのかもしれない。
ショートカットの女性。
猫を飼っているという話をしていた。
おもわず嘘を言ってしまった。
嘘というか、実家では飼っていた。
名前は「タマコ」
三毛猫だった。
しかし、4年前に姿を消した。
猫は飼い主に自分の死に目を見せないという都市伝説がある。
たしかにタマコはおばあちゃんだった。
家族の間では、死んだのだろうという事になっていた。

今のアパートはペット不可なのだ。
飼いたい気持ちもあるが状況が許さないのだ。
猫を飼っている。
まるっきりの嘘ではないと思いたかった。
その日は猫の話で盛り上がり、お互いの連絡先を交換した


部屋に帰り、飲み会の余韻にひたる。
良かった。
うまくいきそうな予感がする。
でも……
どうしようか。
飼ってるって言っちゃったし、見せてねって言ってたし……。

こつん
ベランダから音がした。
ガラスをこするような音。
なんだろう。

そこに、三毛猫がいた。
うそだろ、ここ4階だぞ。
どうやって、迷い込んだんだ。
窓を開けると、するりと猫は部屋の中に入ってきた。
おいおいおい、入って来ちゃったよ。
見上げる猫の視線は全部お見通しという感じだった。
「うちに来るか?」
猫に聞いてみた。
「ニャー」
うんと言ったように思った。
早速、スマホで撮って送った。
名前は……
飲み会ですでに猫の名前は「タマコ」と紹介していた。
「お前の名前はタマコだぞ」
「にゃ」
分かった。
そう言ったように思えた。

タマコと暮らす生活が始まった。
タマコは不思議な猫だった。
座布団の上で前足を投げ出して眠る姿。
ミルクを飲んだ後に、おなかをさする癖。
実家にいたタマコとそっくりだった。

交際はタマコのおかげもあり順調にすすんだ。
1年後、僕らは結婚した。

タマコはある朝いなくなっていた。
まるで、自分の役目ははたした。
そんな感じだった。
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