「おもしろい姉妹ですな」
イチが中島に話しかける。
「お前どうしてここの状況がわかる」
中島は三人の女から背をむけるようにしてハンズフリーイヤホンで応答する。
「中島さん。しらないことがまだまだ多いですね。彼女達のスマホに先ほどから侵入しております。スマホのスピーカーとカメラでだいたいの事は把握しております」
「そうか」
中島はひとまずイチのことは置いておくことにした。
スポーツカーの女、カレンがしきりにまくり立てている。
「かのこ、私に旦那のこと言っていたでしょう、あれから旦那の素行調査をはじめたの」
かのこは驚愕の表情でカレンをみた。
カレン以外の全員が驚きの表情をうかべている。
イチが中島に話しかける。
「お前どうしてここの状況がわかる」
中島は三人の女から背をむけるようにしてハンズフリーイヤホンで応答する。
「中島さん。しらないことがまだまだ多いですね。彼女達のスマホに先ほどから侵入しております。スマホのスピーカーとカメラでだいたいの事は把握しております」
「そうか」
中島はひとまずイチのことは置いておくことにした。
スポーツカーの女、カレンがしきりにまくり立てている。
「かのこ、私に旦那のこと言っていたでしょう、あれから旦那の素行調査をはじめたの」
かのこは驚愕の表情でカレンをみた。
カレン以外の全員が驚きの表情をうかべている。
背後から駆け寄る足音を中島は聞いた。
振り向いた瞬間にはスポーツカーの女が中島のすぐそばにいた。
「あんただれ」
女の憮然とした態度に中島は言葉を失う。
「カレン姉ちゃん」
かのこが大きな声を出した。
「姉ちゃん?」
中島は二人を交互に見た。
「いまどんなかんじなの?」
もう一人の声が中島の背後から聞こえる。
かのこ、カレン、中島その場にいる一同が一斉に振り返る。
「エミ姉ちゃん」
ざんばら髪、ロングスカートの女がそこにいた。
中島はタクシーから降りてきた、この女はエミで、おそらくは三姉妹の長女なのだなと思った。
そして状況はまったく把握できないでいた。
振り向いた瞬間にはスポーツカーの女が中島のすぐそばにいた。
「あんただれ」
女の憮然とした態度に中島は言葉を失う。
「カレン姉ちゃん」
かのこが大きな声を出した。
「姉ちゃん?」
中島は二人を交互に見た。
「いまどんなかんじなの?」
もう一人の声が中島の背後から聞こえる。
かのこ、カレン、中島その場にいる一同が一斉に振り返る。
「エミ姉ちゃん」
ざんばら髪、ロングスカートの女がそこにいた。
中島はタクシーから降りてきた、この女はエミで、おそらくは三姉妹の長女なのだなと思った。
そして状況はまったく把握できないでいた。
旦那が入店したイタリヤ料理店はドレスコードがあるかもしれない、おしゃれな店だった。
中島とかよこは外から店内をうかがう。
ちょうど植木の影から見える位置に旦那はいた。
一人でテーブルに座っている。
誰がやってくるのか……
中島は真横で一緒に店内をのぞき込む、かよこの様子を見る。
かよこは自分の手を握りしめて一点を見つめている。
「どうしますか?」
中島は聞いた。
「誰かがやってくるまで待ちます」 かよこは前を見たまま中島に告げた。
先ほどの二人の女性は、まもなくお店に前に到着する。
中島とかよこは外から店内をうかがう。
ちょうど植木の影から見える位置に旦那はいた。
一人でテーブルに座っている。
誰がやってくるのか……
中島は真横で一緒に店内をのぞき込む、かよこの様子を見る。
かよこは自分の手を握りしめて一点を見つめている。
「どうしますか?」
中島は聞いた。
「誰かがやってくるまで待ちます」 かよこは前を見たまま中島に告げた。
先ほどの二人の女性は、まもなくお店に前に到着する。
中島は、かよこの横に立ちながら後ろを見る。
セミロングの髪を耳にかけながら赤いスポーツカーの運転席から女性が降りてくる。
デニムパンツにTシャツ姿のラフな服装で手荷物はない。
中島は停車したもう一台の追い抜きタクシーの様子もうかがった。
タクシーの後部座席から女性が降りてくる。
ロングスカートの裾をさばきながら、トートバッグに財布をつっこんでいる。
長い髪の毛はざんばらで、心ここにあらずという様子だ。
中島はいやな予感しかしなかった。
セミロングの髪を耳にかけながら赤いスポーツカーの運転席から女性が降りてくる。
デニムパンツにTシャツ姿のラフな服装で手荷物はない。
中島は停車したもう一台の追い抜きタクシーの様子もうかがった。
タクシーの後部座席から女性が降りてくる。
ロングスカートの裾をさばきながら、トートバッグに財布をつっこんでいる。
長い髪の毛はざんばらで、心ここにあらずという様子だ。
中島はいやな予感しかしなかった。
「一緒に入ってもらえませんか」
かよこがつぶやいた。
中島はどうしたら良いのかと言葉を探す。
「いいじゃないですか中島さん。なかなかこんな機会はないですよ」
イチが無邪気に口をはさんだ。
「一緒に行くのはいいのですが、奥さんはその場で一体どうなされるおつもりですか?」
中島はかよこの目を見ながら根源的な疑問を問うた。
「わかりません」
中島は目の前にいる一人の女性の気持ちを尊重しようと思った。
「いいです。行ってみましょう」
中島はかよこをうながした。
かよこがつぶやいた。
中島はどうしたら良いのかと言葉を探す。
「いいじゃないですか中島さん。なかなかこんな機会はないですよ」
イチが無邪気に口をはさんだ。
「一緒に行くのはいいのですが、奥さんはその場で一体どうなされるおつもりですか?」
中島はかよこの目を見ながら根源的な疑問を問うた。
「わかりません」
中島は目の前にいる一人の女性の気持ちを尊重しようと思った。
「いいです。行ってみましょう」
中島はかよこをうながした。
「ご迷惑をおかけします。かよこともうします」
ドアに手を添える中島に女は自分の名前を告げた。
中島は小さく相づちを打つ。
中島には他に気になることがあった。
視線の先には、中島と同じように停車した二台の車があった。
赤いスポーツカーと割り込みタクシー。
今まさにそれぞれの車から女が降りてこようとしている。
「かよこさん。旦那さんはイタリヤ料理店に入ったようですが。どうしますか」
二人の女を見ながら中島はかよこに話しかけた。
ドアに手を添える中島に女は自分の名前を告げた。
中島は小さく相づちを打つ。
中島には他に気になることがあった。
視線の先には、中島と同じように停車した二台の車があった。
赤いスポーツカーと割り込みタクシー。
今まさにそれぞれの車から女が降りてこようとしている。
「かよこさん。旦那さんはイタリヤ料理店に入ったようですが。どうしますか」
二人の女を見ながら中島はかよこに話しかけた。
裏道に入ったタクシーに、赤いスポーツカーと割り込みタクシーも後に続いた。
こじゃれたイタリア料理店の前で追いかけるタクシーは停車する。
「止まりましたね」
中島の背後で女が興奮気味に口を開く。
「一度追い抜いて、少し離れた所に車を止めましょう」
中島は女を安心させるように言った。
少し先の路地には、赤いスポーツカーと、タクシーが停車していた。
「中島さん。さっきからあの二台の車ずっといませんか」
イチの声が耳に聞こえる。
「そうだな」
運転席から降りた中島は、後部座席の女をエスコートするように後ろにまわった。
こじゃれたイタリア料理店の前で追いかけるタクシーは停車する。
「止まりましたね」
中島の背後で女が興奮気味に口を開く。
「一度追い抜いて、少し離れた所に車を止めましょう」
中島は女を安心させるように言った。
少し先の路地には、赤いスポーツカーと、タクシーが停車していた。
「中島さん。さっきからあの二台の車ずっといませんか」
イチの声が耳に聞こえる。
「そうだな」
運転席から降りた中島は、後部座席の女をエスコートするように後ろにまわった。
「チッ」
中島は舌打ちをした。
中島の前に、タクシーが強引に割り込んできた。
これで中島が追いかけるタクシーとの間には赤いスポーツカーとタクシーの合計二台がいる。
「わたし、ひとりでは行けないかもしれません」
後部座席の女は独り言のようにつぶやいた。
中島は聞こえないふりをしたが、女は言葉を続ける。
「旦那が降りたら一緒に来てもらえませんか」
「なんだかおもしろくなってきましたね」
イチは無邪気に合いの手をはさむ。「おねがいします」
女は下を向いたまま体を震わせている。
「しょうがない乗りかかった船です」
中島は返答する。
追いかけるタクシーは幹線道路から裏道へと進路を変えた。
中島は舌打ちをした。
中島の前に、タクシーが強引に割り込んできた。
これで中島が追いかけるタクシーとの間には赤いスポーツカーとタクシーの合計二台がいる。
「わたし、ひとりでは行けないかもしれません」
後部座席の女は独り言のようにつぶやいた。
中島は聞こえないふりをしたが、女は言葉を続ける。
「旦那が降りたら一緒に来てもらえませんか」
「なんだかおもしろくなってきましたね」
イチは無邪気に合いの手をはさむ。「おねがいします」
女は下を向いたまま体を震わせている。
「しょうがない乗りかかった船です」
中島は返答する。
追いかけるタクシーは幹線道路から裏道へと進路を変えた。
「夫ですって、中島さん。こちらの女性は今夜、白黒つけようとしてますね。よほど確信があるようなそぶりです。今夜何があるのか、聞いてくださいよ」
イチは聞こえないのをいいことに言いたい放題言っている。
中島はしぶしぶ聞く。
「ちなみにどうして今夜、旦那をおいかけることになりましたか、差し障りなけれ……」
「私、今夜は出張で家を空けるといってあります。だから今夜なのです」
先ほどと同様にくい気味で女は返答する。
「なるほど」
「その出張というのは……」
中島はおそるおそる聞いた。
「もちろんウソです」
妻に罠をはられた夫の運命はどうなるのかなと思いながら、中島は前方のタクシーを追う。
イチは聞こえないのをいいことに言いたい放題言っている。
中島はしぶしぶ聞く。
「ちなみにどうして今夜、旦那をおいかけることになりましたか、差し障りなけれ……」
「私、今夜は出張で家を空けるといってあります。だから今夜なのです」
先ほどと同様にくい気味で女は返答する。
「なるほど」
「その出張というのは……」
中島はおそるおそる聞いた。
「もちろんウソです」
妻に罠をはられた夫の運命はどうなるのかなと思いながら、中島は前方のタクシーを追う。
「どういった関係ですかね」
イヤホンから唐突にイチが話しかけてきた。
イチは人工知能のくせに、すごく下世話だ。
中島は女性の手前、口にだして返答するわけにはいかなかったので、コクリとうなずいた。
イチはその動作をカメラで見ている。
「すごく興味がわきますね。中島さん、聞いてくださいよ」
イチの前のめりな感じに押された中島は困惑しながらも口を開く。
「差し障りなければで結構なんですが、どういったご関係の……」
「夫です」
中島が言い終わる前に女は返答した。
中島と追っているタクシーの間に赤い車が一台割り込んできた。
イヤホンから唐突にイチが話しかけてきた。
イチは人工知能のくせに、すごく下世話だ。
中島は女性の手前、口にだして返答するわけにはいかなかったので、コクリとうなずいた。
イチはその動作をカメラで見ている。
「すごく興味がわきますね。中島さん、聞いてくださいよ」
イチの前のめりな感じに押された中島は困惑しながらも口を開く。
「差し障りなければで結構なんですが、どういったご関係の……」
「夫です」
中島が言い終わる前に女は返答した。
中島と追っているタクシーの間に赤い車が一台割り込んできた。
中島の前の車はタクシー。
後部座席にはスーツを着た若い男性客が乗っているようだった。
運転手の後ろ姿に中島は見覚えがあった。
中島の知り合いかもしれない。
「前の車を追ってください。いつかはこんな日が来るかとは思っていましたが、本当にあるんですね」
中島はバックミラーで女を見た。
女は二十代前半のように思えた。
意思の強そうなまなざしは前方のタクシーをとらえている。
「お手間とらせます」
女はぺこりと頭を下げた。
後部座席にはスーツを着た若い男性客が乗っているようだった。
運転手の後ろ姿に中島は見覚えがあった。
中島の知り合いかもしれない。
「前の車を追ってください。いつかはこんな日が来るかとは思っていましたが、本当にあるんですね」
中島はバックミラーで女を見た。
女は二十代前半のように思えた。
意思の強そうなまなざしは前方のタクシーをとらえている。
「お手間とらせます」
女はぺこりと頭を下げた。