朝、一寸肌寒さを感じるほど急に涼しくなってきました。生き返る思いです。
近所を散歩していて、よそ様の垣根から萩が楚々と咲いて枝を垂らしておりました。
父母と暮らした実家を思い出しました。
私は山口県防府市のはずれの村で育ちました。60メートルばかりの山の中腹に家がありました。子どもの頃、若い体力のある頃でしたから、上り下りする坂道も少しも苦にならず毎日当たり前のこととしていました。高校への通学は自転車でしたが、とても乗って登ることはできませんでしたし、下りも押しておりました。4兄が遅刻しそうと乗っておりて見事に骨折をしたほどの坂道でした。
門を入り、坂道を上ると高さ1.5メートルほどの石垣につきあたります。少し右に回って玄関、や勝手口へ行くのです。石垣の上は5・6坪の広場になっておりました。夏は縁台を置いて夕涼みの場所ができるところでした。
その広場の縁・石垣の上には母は自分の好きな白萩を植えておりました。石垣の上でこんもりと茂り、下枝は石垣を下るように垂れて季節には美しく石垣を飾ったものでした。。
説明が遅れましたが、その広場からは瀬戸内海が見下ろせるのです。父の大の自慢の見晴らしでした。
父と母は8人もの子供をなした夫婦でしたが、子どもがこんなことを言うのも失礼と思うのですが凸凹夫婦でした。背が高く細い父、低くてぽっちゃりした母。せっかちな父、遅れがちな母。趣味と言って戦後そんなことからは遠い生活でしたが、一致はしなかったと思います。
海が見えることが大事な父、母の白萩の茂りが、海の見晴らしを邪魔します。母の育てた萩をつんつるテンに剪定ばさみで切ってしまうのです。
かなり激しい言い合いが突発していた記憶があります。
嫁いで、地方勤務の夫について任地を回り借家住まいをしましたが、東京の今の住所の古家に暮らす時がありました。夫の兄と二つに割る前でしたから、庭もかなり広かったのです。実家の母の白萩の根を掘り起こして持ち帰り、移し植えたことがありました。萩、強いんですね。見事に茂りました。土が合ったというのでしょうか、丈高く、株は大きく庭を独り占めしてしまうようでした。萩は高いところに植えて枝を垂らしてこそいい景色になるのでしょうか、場所はとる、葉っぱばかりで、花枝はは土の上にのたくるばかりで、美しさはない緑の塊にしかありませんでした。夫・子どもからは不評、自分でもこれはだめだなあ、と思いました。結局、掘り起こして廃棄してしまいました。
母が同居していたら、嘆いたあなあ。他家の萩を見ての思い出です。