TDY、Temporary Duty。アメリカの軍隊用語で出張を意味する。世界の僻地の出張記録!TDYの次は日常の雑感

現役時代の出張記録。人との出会いと感動。TDY編を終え、写真を交えた日常の雑感を綴る。

TDY, Temporary Duty パプアニューギニア編 6

2015年02月09日 | 旅行
 清々しい朝を迎えた。昨夜は、夕食を終えるとシャワーも浴びずにベッドに入ってしまった。クリスの話では、一緒に飲まないかと私を誘いに来てくれたが全く返事がなかった。心配になったのでドアーを開けてみたところ、私は前後不覚に寝ていたらしい。従ってリビングルームで島の住人たちと賑やかにやっていたことなど全く知らなかった。
 夜になって灯りがつく家は、発電機を持っているクリステンセン家しかない。近くの住人は誘蛾灯に誘われるように、夜になると集まってくるのだ。これは、この島に滞在中に一日も休むことはなかった。

 クリスはまだ起きていないようだった。バルコニーを通ってトイレに行き、シャワーを浴びた。気持よかった。この家を改装したとき、トンチキな島の大工がトイレ、洗面所と浴室に行く通路を間違えて塞いでしまったため、外からでなければ行けない。トンチキな大工もそうだが、それを直させようともしないクリステンセン夫妻も相当なものだ。

 昨夜云われていた朝食の時間にはだいぶ間があったので、散歩をすることにした。


 我が家から少し上に行くと、起きたばかりの海が見渡せた。


 山側の斜面には島民の集落があった。


 東に向かう道路まで下りてきた。


 脇道があったので、そこを入ってみると島民の住居があった。後日、何軒もの住居を見たが、それらと比較するとかなりの豪邸であった。


 豪邸の脇の道を行ってみた。だが、直ぐに行き止まりのようになっていた。道が残っていたところを見ると、この先にも住居があったのでないだろうか。

 朝食後に、全員で材木置き場に向った。少しでも涼しいうちに、少しでも多くのフリッチの検品を行いたかった。


 現場では担当の作業員が私の検品に必要なフォークリフトに向うところだった。


 
 バインダーに挟んだ私の会社のLog List(マダガスカル編の15をご参照願いたい)を持って検品を始めようとしたら、ローランド・クリステンセンの作業員から彼等のLog Listを手渡された。ローリーは置き場のフリッチの山ごとにリストは作られているので、それを参照してくれと云った。確かにきちんと整理されていた。但し、私の希望しているより全てのフリッチの長さが長い。契約をする前にフリッチの径に依り、3.1メートル、3.6メートル、そして4.1メートルと私の希望する寸法を云ってある。先方のリストにある通りの長さで買うとしたら、日本での販売の際に余分な長さを切り落として売らなければならないので、非常に高いものになってしまう。そのことを云うと、ローリーは「ちゃんと契約通りの寸法で買って頂くように手配してあります」とのことだった。即ち、3.4メートルのものは自動的に3.1メートルに計算して出荷するようにしてある。また、径の大きいものは、半端な長さを切り落とし、それをクリス・ブルックが買うようになっているとのことだ。これなら三者とも損はない。
 彼等のログリストには「S」、「M」、「B」のマークが入っていた。「S」はStripe(縞黒檀)、Marble(班入黒檀)、Black(本黒檀及び青黒檀)の種類の別であるとの説明を受けた。価格は同じだが、木目の文様が違う。日本で一番人気のあるのは縞黒檀である。リストを見ると、70~80%に「S」のマークがついていた。本黒檀と青黒檀はほぼ同じだが、青黒檀は本黒檀の黒を超えた黒と理解して頂きたい。そしてより密度が高い。日本では非常に珍重される黒檀である。班入黒檀は渦巻き模様のビー玉に似ているとお考え頂きたい。日本では殆ど知られていない黒檀である。何れにしろ、全体量からすれば、その割合は少ないので、さして問題にしなかった。或いは大きく儲かるかもしれないと考えた。
 彼等のリストは非常にきちんとして信頼がおけると考えた。而し、鵜呑みには出来ないので、彼等のリストに従って寸法を測ってみた。非常に正確であった。スポットチェック(抜き取り検査)だけで済ませることにした。そうしなければ、膨大な量の黒檀のチェックを決められた時間内で済ますことは非常に難しい。パプアニューギニアに到着してから、かなりの無駄な時間をポートモレスビーとアルタオで過ごしてしまっていた。


 クリステンセン家の山側に面したところに、バルコニーともベランダとも云いようのない、涼み台ようなものがあった。6畳ほどの広さだが、非常に快適であった。昼食後に楽しい話をしながらのんびりと過ごした。


 庭に何本ものヤシの木が植えられている。そのうちの一本に、年かさの少年が登り、我々のためにヤシの実を取ってくれた。こんな高い木に登れるのかと気遣ったが、あっという間に登ってしまった。


 必要な分だけのココナッツの実をもぎ取ると、慎重に下りてきた。登るより、降りるときの方が危険らしい。
 クリステンセン家の海側に面した庭である。前方に見えるのがエイミーから提供された私とクリスの家である。夜になると、この家に島の住人が集まってくる。少ないときでも5人ほど、多いときは10人を超える人たちが来る。賑やかで楽しい。
 我が家の前面に円筒型をした、大きなタンクがご覧頂けると思う。これが雨水を溜めておく貯水タンクだ。屋根から雨水が樋を伝わって此のタンクに貯まるのだが、蓋が完全ではない。覗いてみると、木の葉や虫の死骸が浮いていた。これを飲料水やシャワーに使っているのだが、深く考えないことにした。コップに入った、無色透明な水だけを思い浮かべることにしていた。

 ある日、一番の年かさの少年にココナッツジュースを飲みたいので、よく熟れたココナッツを取ってきてくれと頼んだ。私の手元に届いたのは、小さくて多少しなびたココナッツだった。ジュースは旨かったが、新鮮な感じはしなかった。ココナッツの実は硬くなっていた。年かさの子は自分で行かず、自分の子分に云いつけたらしい。そして次々に下請けに出した。最後の小さな子は木に登れないので、床下にあった古いココナッツを持ってきて私に差し出した。ラムと云う一番の年かさの少年に文句を云おうとしたら、非常にすまなそうな顔をして私を見ていたので、何も云わずにおいた。床下のココナッツで間に合わせた一番小さな子はトトと云う非常に可愛らしい子供だった。