S氏が仕事を辞めたその日、会社を出て歩いていると前方から老人が歩いてきた。
ヨボヨボではあるが帽子をかぶり、三つ揃えのスーツを着て、ステッキを携え
ていた。
すれ違いざまにその老人に、このあたりにこういう方の家がないかと声をかけられた。
S氏は会社に戻り地図を借りて、場所を教えてあげた。
だが、あまりにヨボヨボのお爺さんだったので、連れて行ってあげることにした。
家は探し当てたが留守だった。老人は地方から来ているらしく、
帰るわけにもいかないので、近くの旅館に泊まり、明日もう一度、
訪ねることにした。聞くところによると、老人は、自分はもうそう長くは
生きられないので、とてもお世話になったその方にお礼を言いに訪ねに来た
のだという。
その後、いろいろお世話になったので、老人がS氏にご馳走しましょうと
いうことになり居酒屋で一杯やった。老人は2~3杯オチョコでお酒を飲んだ。
店を出て、旅館へ案内すると、あまりに高齢な為に独りでは泊められないと
断わられた。他の旅館へ行っても同じ理由で泊められないという。
S氏は仕方なく恐縮する老人を自宅へ連れて行くことにした。
S氏は最近同棲し始めていて、彼女もいたが、事情が事情なだけに
彼女にも了解を得た。
明け方、S氏が起きてみると、寝ているはずの老人がいない。すると、
浴室にズボンを脱いで座っている老人がいるではないか。どうしたのかと
尋ねると、お漏らしをしたら申し訳ないので一晩中そこに座っていたいう。
S氏は、思わず泣けてしまった。何と律儀なお爺さんなのだろうと。
もう大丈夫、いろいろとお世話になったと老人は早朝S氏の家を出て行った。
その後、S氏のところに、その老人の家族から感謝の手紙が来て、
まもなく亡くなったことを知った。
S氏は、その老人のザマを見て、その後の自分の生きザマに大きな影響を与え
られたのだった。
ヨボヨボではあるが帽子をかぶり、三つ揃えのスーツを着て、ステッキを携え
ていた。
すれ違いざまにその老人に、このあたりにこういう方の家がないかと声をかけられた。
S氏は会社に戻り地図を借りて、場所を教えてあげた。
だが、あまりにヨボヨボのお爺さんだったので、連れて行ってあげることにした。
家は探し当てたが留守だった。老人は地方から来ているらしく、
帰るわけにもいかないので、近くの旅館に泊まり、明日もう一度、
訪ねることにした。聞くところによると、老人は、自分はもうそう長くは
生きられないので、とてもお世話になったその方にお礼を言いに訪ねに来た
のだという。
その後、いろいろお世話になったので、老人がS氏にご馳走しましょうと
いうことになり居酒屋で一杯やった。老人は2~3杯オチョコでお酒を飲んだ。
店を出て、旅館へ案内すると、あまりに高齢な為に独りでは泊められないと
断わられた。他の旅館へ行っても同じ理由で泊められないという。
S氏は仕方なく恐縮する老人を自宅へ連れて行くことにした。
S氏は最近同棲し始めていて、彼女もいたが、事情が事情なだけに
彼女にも了解を得た。
明け方、S氏が起きてみると、寝ているはずの老人がいない。すると、
浴室にズボンを脱いで座っている老人がいるではないか。どうしたのかと
尋ねると、お漏らしをしたら申し訳ないので一晩中そこに座っていたいう。
S氏は、思わず泣けてしまった。何と律儀なお爺さんなのだろうと。
もう大丈夫、いろいろとお世話になったと老人は早朝S氏の家を出て行った。
その後、S氏のところに、その老人の家族から感謝の手紙が来て、
まもなく亡くなったことを知った。
S氏は、その老人のザマを見て、その後の自分の生きザマに大きな影響を与え
られたのだった。