朝、というより昼、目が覚めると部屋が惨劇のあとみたいな状態になっていた。
ダウンジャケットやみかんの皮、脱いだタイツ、踏まれた雑誌、こぼれた消臭ビーズ、空けっぱなしのお茶のペットボトル、そして化粧をしたままで髪の毛が煙草臭く、気分の悪い私。
花瓶が倒れていなかったことだけが幸いだった。
もちろん、覚えていないということはないが、部屋が暴れていることは珍しい。
真夜中の冷たい坂道を自転車の思うままに駆け下りたことも、なぜか食べたかったわけでもないのにみかんを食べたことや、一度ソファで座ったまま寝てしまったことも、明け方に喉が渇いてお茶を飲んだことも、覚えている。
ええかっこしいの私は誰かと一緒にいるときにはたぶん平然としている。
タクシーの中でもたぶん割と平然としている。
「酔う」ということを覚えてしまった私もいいけれど、怪我とか事故とかそういうことは自分に対して案じておこうと思う。
新宿PITINN。
南博さんの3DAYSの一日。
トランペッター類家心平さん。
以前とても良かったものを味わいに行くのだが、また同じようにとても良い、とは限らない。
一緒にセッションする人や自分自身の状態、一緒に聞く人にもよるかもしれない。
みぞれなんか降ってきて、明けない寒さに凍えたけれど、とてもとても、良かった。
こういう3,000円は、どれほど素晴らしい3,000円だろう。
南さんが喋っているのを初めて聞いた。
白髪が美しい、猫みたいな顔をしたピアニストのおじさん。
こんな言葉を使っていいのか分からないが、かなりアウトローなおじさん。
生きるか死ぬか、みたいなことを何度か経験しているのではないかと勝手に想像してしまう。
「医者にメタボだと言われた。
親父に昔ピアノなんか弾いて食っていけるわけがない、と言われたことがあるけど、メタボになってる俺は何なんでしょう」
「若手がね、いいからね、もう僕演奏するのやめちゃおうかな。でも一応南博の3DAYSだからね、やるけど」
「一番前の人は寝てるね。ほっときましょう、何言ってもだめだ」
失笑を誘うことを次々と言う。
周りの類家さんやバンドメンバーも失笑している。
でも、私は南さんのこと、かっこいいと思った。
ちょっとではない心配ごとの霧も晴れて、気兼ねなく気持ちの良い音を浴びる。
酔えない、乗り切れない、ということもない。
類家さんは今日も掠れた音を出して私の隣の彼女を魅了している。
目を閉じると聴覚は鋭くなって、音が脳と体に響く。
感覚と言うのはどこかを封鎖すると違う部分が鋭さを増すように思う。
ジャズであろうとロックであろうと、洋楽だろうと邦楽だろうと、なんでもいい。
私に響くものであればなんでもいい。
気持ちいいっていいね、と艶々した私たち。
音とお酒と言葉を存分に浴びて。
今日の惨事のような部屋もそれでいいやと。
ダウンジャケットやみかんの皮、脱いだタイツ、踏まれた雑誌、こぼれた消臭ビーズ、空けっぱなしのお茶のペットボトル、そして化粧をしたままで髪の毛が煙草臭く、気分の悪い私。
花瓶が倒れていなかったことだけが幸いだった。
もちろん、覚えていないということはないが、部屋が暴れていることは珍しい。
真夜中の冷たい坂道を自転車の思うままに駆け下りたことも、なぜか食べたかったわけでもないのにみかんを食べたことや、一度ソファで座ったまま寝てしまったことも、明け方に喉が渇いてお茶を飲んだことも、覚えている。
ええかっこしいの私は誰かと一緒にいるときにはたぶん平然としている。
タクシーの中でもたぶん割と平然としている。
「酔う」ということを覚えてしまった私もいいけれど、怪我とか事故とかそういうことは自分に対して案じておこうと思う。
新宿PITINN。
南博さんの3DAYSの一日。
トランペッター類家心平さん。
以前とても良かったものを味わいに行くのだが、また同じようにとても良い、とは限らない。
一緒にセッションする人や自分自身の状態、一緒に聞く人にもよるかもしれない。
みぞれなんか降ってきて、明けない寒さに凍えたけれど、とてもとても、良かった。
こういう3,000円は、どれほど素晴らしい3,000円だろう。
南さんが喋っているのを初めて聞いた。
白髪が美しい、猫みたいな顔をしたピアニストのおじさん。
こんな言葉を使っていいのか分からないが、かなりアウトローなおじさん。
生きるか死ぬか、みたいなことを何度か経験しているのではないかと勝手に想像してしまう。
「医者にメタボだと言われた。
親父に昔ピアノなんか弾いて食っていけるわけがない、と言われたことがあるけど、メタボになってる俺は何なんでしょう」
「若手がね、いいからね、もう僕演奏するのやめちゃおうかな。でも一応南博の3DAYSだからね、やるけど」
「一番前の人は寝てるね。ほっときましょう、何言ってもだめだ」
失笑を誘うことを次々と言う。
周りの類家さんやバンドメンバーも失笑している。
でも、私は南さんのこと、かっこいいと思った。
ちょっとではない心配ごとの霧も晴れて、気兼ねなく気持ちの良い音を浴びる。
酔えない、乗り切れない、ということもない。
類家さんは今日も掠れた音を出して私の隣の彼女を魅了している。
目を閉じると聴覚は鋭くなって、音が脳と体に響く。
感覚と言うのはどこかを封鎖すると違う部分が鋭さを増すように思う。
ジャズであろうとロックであろうと、洋楽だろうと邦楽だろうと、なんでもいい。
私に響くものであればなんでもいい。
気持ちいいっていいね、と艶々した私たち。
音とお酒と言葉を存分に浴びて。
今日の惨事のような部屋もそれでいいやと。
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