■ 「君が代」強制解雇裁判から
~控訴審第7回口頭弁論(結審)報告
6月27日、裁判所人事異動で東京高裁第16民事部宗宮裁判長が突然依願退職となり、かわって奥田隆文新潟地家裁所長が高裁16民事部部長に着任、本件の担当となった。第一審に引き続いての結審間近の裁判長交代である。これまでの「解雇裁判」進行協議には裁判長ではなく坂井主任裁判官が出席し仕切っていたのもこのためであったか。
6月30日、控訴人側の最終準備書面提出。225ページ。
準備書面は、はじめにこの裁判が考慮すべき視点について、「日の丸君が代」が控訴人の思想良心・教師としての信念のみならず生徒の思想良心の自由にとっても重大な影響を持つことを、もと生徒の証言によって指摘し、さらに本件合格取消が控訴人を狙い撃ちにした重大過酷な不利益処分であることを提示。続いてピアノ最判多数意見を詳細に論駁し、10・23通達によって生徒への身体的強制をも惹起した事実や証言・学者意見・判例等によって通達・職務命令の違憲違法を述べ、最後に都側の裁量権逸脱を厳しく追及している。
同日、都側も84ページからなる最終準備書面を提出。内容はおおむね従来の主張通りだが、ピアノ最判に従い陳述、「採用拒否撤回裁判」中西判決については採用への期待権を否定したばかりか、再雇用制度の趣旨をも否定している。しかしこれだけでは不十分と見たか、延々30数ページにわたり、10数名の校長の陳述書(人事委員会審理を含む)を引用して「10・23通達」発出以前の都立高校の「無秩序」を述べ立て、通達と校長職務命令がやむをえない措置であったことにリアリティを持たせようとしている。この部分は都側が裁判長交代を予測し新裁判長に訴える作戦に出たとさえ思わせる部分である。
弁論直前の7月9日、高裁第16民事部より弁護士に、第7回口頭弁論の時間縮小の打診。新裁判長のこの裁判への判断が奈辺にあるかを示すものか。これは水口弁護士の献身的な交渉によって一定程度押し返すことができたが、弁護士の弁論4名予定を2名に、合計時間も1時間から40分に縮小せざるを得なかった。
7月14日弁論当日、通常法廷開始前20分頃であった傍聴抽選締め切りが、30分前に早々と締め切られ、30名以上が抽選に参加できなかった。これに対し傍聴参加の支援者が口々に怒りの抗議、裁判所職員の弁解は要領を得ずあたりは騒然とした。
11時開廷。更新弁論は行わず、いきなり控訴人4人の陳述。
はじめに近藤光男さんが、10・23通達が教育にあってはならない「強制」を持ち込むものであったため、これまで国歌を斉唱してきた自分は立たなかった、と述べた。
次に桐生早苗さんが、通達発出後式場で起立した時、身を硬くして着席している保護者を見、無言の圧力を加えている自分に気づいて翌年の式では起立しなかった、と述べた。
3番目に太田淑子さんが、多様な問題をかかえた生徒たちに対しては多様な教育活動が保障されていることが大切だと述べた。
最後に平松辰雄さんが、たった1回の国歌斉唱時の不起立で嘱託員としての仕事を追われ職場を奪われることの理不尽さを訴えた。
続いて弁護士の弁論に移り、水口弁護士が、本件裁判がピアノ最判にとらわれず持つべき視点について述べ、秋山弁護士が裁量権逸脱について簡潔な弁論を行った。予定していた金・川口両弁護士の弁論は行えなかった。
新裁判長は法廷では淡々と裁判を進行させこれで本件裁判は結審となったが、判決日を指定せず後日通知を宣した。
閉廷後、弁護士会館で約80名の参加によって報告集会を行い、弁護士さんから裁判長交代についてや今後の予防訴訟・採用拒否裁判等を含めた見通しが報告された。
奥田新裁判長は、司法研修所の在職期間が長い経歴の人物、裁判官エリートである。この交代の働く方向が、違憲違法の綿密な論証か、綿密に検討のうえ合憲合法を導くか、いとも簡単な門前払いか、予断を許さない。しかしどんな判決になろうとも最高裁に場が移されることは確実である。今後とも大きなご支援をお願いしたい。(丸山洋明)
『藤田先生を応援する会 通信』(第36号 2009/8/31)より
~控訴審第7回口頭弁論(結審)報告
6月27日、裁判所人事異動で東京高裁第16民事部宗宮裁判長が突然依願退職となり、かわって奥田隆文新潟地家裁所長が高裁16民事部部長に着任、本件の担当となった。第一審に引き続いての結審間近の裁判長交代である。これまでの「解雇裁判」進行協議には裁判長ではなく坂井主任裁判官が出席し仕切っていたのもこのためであったか。
6月30日、控訴人側の最終準備書面提出。225ページ。
準備書面は、はじめにこの裁判が考慮すべき視点について、「日の丸君が代」が控訴人の思想良心・教師としての信念のみならず生徒の思想良心の自由にとっても重大な影響を持つことを、もと生徒の証言によって指摘し、さらに本件合格取消が控訴人を狙い撃ちにした重大過酷な不利益処分であることを提示。続いてピアノ最判多数意見を詳細に論駁し、10・23通達によって生徒への身体的強制をも惹起した事実や証言・学者意見・判例等によって通達・職務命令の違憲違法を述べ、最後に都側の裁量権逸脱を厳しく追及している。
同日、都側も84ページからなる最終準備書面を提出。内容はおおむね従来の主張通りだが、ピアノ最判に従い陳述、「採用拒否撤回裁判」中西判決については採用への期待権を否定したばかりか、再雇用制度の趣旨をも否定している。しかしこれだけでは不十分と見たか、延々30数ページにわたり、10数名の校長の陳述書(人事委員会審理を含む)を引用して「10・23通達」発出以前の都立高校の「無秩序」を述べ立て、通達と校長職務命令がやむをえない措置であったことにリアリティを持たせようとしている。この部分は都側が裁判長交代を予測し新裁判長に訴える作戦に出たとさえ思わせる部分である。
弁論直前の7月9日、高裁第16民事部より弁護士に、第7回口頭弁論の時間縮小の打診。新裁判長のこの裁判への判断が奈辺にあるかを示すものか。これは水口弁護士の献身的な交渉によって一定程度押し返すことができたが、弁護士の弁論4名予定を2名に、合計時間も1時間から40分に縮小せざるを得なかった。
7月14日弁論当日、通常法廷開始前20分頃であった傍聴抽選締め切りが、30分前に早々と締め切られ、30名以上が抽選に参加できなかった。これに対し傍聴参加の支援者が口々に怒りの抗議、裁判所職員の弁解は要領を得ずあたりは騒然とした。
11時開廷。更新弁論は行わず、いきなり控訴人4人の陳述。
はじめに近藤光男さんが、10・23通達が教育にあってはならない「強制」を持ち込むものであったため、これまで国歌を斉唱してきた自分は立たなかった、と述べた。
次に桐生早苗さんが、通達発出後式場で起立した時、身を硬くして着席している保護者を見、無言の圧力を加えている自分に気づいて翌年の式では起立しなかった、と述べた。
3番目に太田淑子さんが、多様な問題をかかえた生徒たちに対しては多様な教育活動が保障されていることが大切だと述べた。
最後に平松辰雄さんが、たった1回の国歌斉唱時の不起立で嘱託員としての仕事を追われ職場を奪われることの理不尽さを訴えた。
続いて弁護士の弁論に移り、水口弁護士が、本件裁判がピアノ最判にとらわれず持つべき視点について述べ、秋山弁護士が裁量権逸脱について簡潔な弁論を行った。予定していた金・川口両弁護士の弁論は行えなかった。
新裁判長は法廷では淡々と裁判を進行させこれで本件裁判は結審となったが、判決日を指定せず後日通知を宣した。
閉廷後、弁護士会館で約80名の参加によって報告集会を行い、弁護士さんから裁判長交代についてや今後の予防訴訟・採用拒否裁判等を含めた見通しが報告された。
奥田新裁判長は、司法研修所の在職期間が長い経歴の人物、裁判官エリートである。この交代の働く方向が、違憲違法の綿密な論証か、綿密に検討のうえ合憲合法を導くか、いとも簡単な門前払いか、予断を許さない。しかしどんな判決になろうとも最高裁に場が移されることは確実である。今後とも大きなご支援をお願いしたい。(丸山洋明)
『藤田先生を応援する会 通信』(第36号 2009/8/31)より
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます