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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

予防訴訟をひきつぐ会第2回「教育現場の課題を考える学習・討論会」

2014年06月01日 | 暴走する都教委
 ◆ 新能力主義に基づく「学力」の格差固定化に抗するために
   -都立高校の「学力」スタンダードの実態/小・中・特別支援学校における新能力主義の実態-

《撮影:gamou》

 4月5日(土)、文京区民センターにて開催。参加者は42名(内現職10名)でした。助言者は前回に引き続き市川須美子氏と高橋哲氏。
 <問題提起>
 永井氏から学力スタンダード問題の概要の説明が行われました。
 ①都教委は「東京都教育ビジョン(第3次)」(2013年4月)に位置づけている。
 ②各学校が、どの程度のものを学べばよいかのランクを、自校で設定する。
  (1) 普通科目では学校の目的・習熟度合いに応じて「基礎」「応用」「発展」の3ランク
  (2) 専門科目では、技能スタンダード「1」「2」のランクを設定
 ③年度末に都教委が作成する統一的な「学力テスト」(ランク別)を実施し、到達度を確認して、目標設定した基準に達しない生徒に対しては、年度内に繰り返し指導を行う。
 ④目標と評価(達成度)については、各学校が自校のホームページで必ず公表する。
 ⑤進学重点校、中高一貫校、夜間定時制高校は、学力スタンダード設定から除外する。
 ⑥安倍の教育政策(グローバル経済政策に対応した教育政策)と同根であり、これを具体化したものとなっている。
 <現状報告>
 ①品川区の状況

 品川区小学校教諭高橋氏(4月に異動)から報告。
 品川区では、小学校の4年生から中学3年生まで、区の学力テスト(小4中1)・都の学力テスト(小5中2)・国の学力テスト(小6中3)という形で順次学力テストが行われ、小4以上になると、生徒たちは、毎年学力テストを受けなければならない。
 テスト結果の学校間での順位は公表しないといいながら、各学校のホームページに「定着度」として公表させられている。校長は順位を気にし、教員へは暗黙のプレッシャーがかかり、当然保護者への影響、生徒へのプレッシャーとなって現れる。
 品川区では、英語科を設定して独自の教材「LEEC」を作成。また、道徳を「特別な教科」として位置づける「市民科」を設定し、規範意識の育成を目指している。
 施設一体型小中一貫校をつくり、教育の複線化・早期エリート選抜を目指している。そして、「教育再生実行本部」のメンバーが視察を行った。
 ②特別支援校の状況
 石川氏から報告。義務教育期間中に、何らかの理由で排除された子どもたちが特別支援校に集まってきているので、少子化にもかかわらず、特別支援校では生徒数が増加し、教室が足りずに、廊下や玄関を仕切って教室を増やしているという最悪の環境が放置されている。
 そんな状況の中で、知的障害が軽度の生徒を就労させ納税者となれるように教育するという目的の職業学科(就業技術科)なるものが、つくられだした(永福学園・青峰学園・南大沢学園・志村学園)。
 そして、知的障害をも軽度・中度・重度に分けて、それぞれに適した企業就労を目指した教育を行うという構想が出来上がっている。
 ③「学カスタンダード」推進校アンケート結果報告と資料説明
 高槻氏から報告。アンケートは、推進校32校中19校の協力を得た。
 推進校になることに対して、職員会議で反対意見があった学校が37%。
 生徒の学力保障に効果があったとの回答が21%、なかったとの回答が58%
 推進校になったことで教職員の負担が増えたとの回答は95%。(詳細は別頁で報告)
 資料は、新たたな都立高校推進計画・都立高校「学力スタンダード」実施要綱と内容・東京都教育ビジョン(第3次)・教育再生実行会議この1年間の提言(朝日新聞)・教育再生実行会議第4次提言、その他を説明。
 <討論の中で出された意見>
 小学校から

 A:品川では学力テストが何度も実施されているが、学力が上がっているのかどうかは分からない。品川では、土曜授業が月2回入るが、その検証もない。しかし、子どもは一生懸命テストを受けていて、わからないので泣き出す生徒までいる。
 かつては、学テ反対闘争もあったわけだが、今の親から「学力テスト反対」の声は聞いたことがない。むしろ逆に、テストの風評を聞いて学校を選ぶ親もいる。
 B:体力テストなるものを小学校1年からやって、握力とか背筋力とかを5段階に分けてランク付けされている。何でもランク付けるが、こんなこと意味があるのか?
 高校から
 C:学力スタンダードの件は企画調整会議で話しているようだ。一般の教員はよくわかっていない。教員の評価権はどうなるのか。主幹会議が実権を握っている。
 D:学力スタンダードを現場でどうやって行くのか・・困り果てている。元支援センターにいた人も「よくわからない」と言っている。今度新担任に入ったが、学力スタンダードがもろ入ってくる。形骸化はしても、やらざるを得ない部分はどうしても出てくる。どうすればいいのか。若い人は都が出したひな形を見ている。組合本部に電話したが、その回答にはどうも納得できない。
 E:学力スタンダード導入のため新たな週案の様式が下ろされた。週案がなくなるわけはない。今までは一人一人が書いていたが、今後は統一して一人が書く。授業内容を統制していく中で、専任教員はいらない、ハケン教員でいい、という流れを作るねらいがある。これはいわゆる市場開放絡み。司書や実習教員はすでに専任の採用をストップしている。
 F:目標というのは生徒の顔を見ながら学校ごとに作るもの。学校独自のものが、すべて公開するということで崩されていく。都教委は今年、統一テストをベネッセに委託した。ベネッセのテストをなぜすべての学校でやらなければいけないのか。
 G:勤務校では、学力の低い生徒が多く、生徒はのんびりしている。普段遊んでいても、進級時には必死になる生徒がほとんどだったが、最近はあきらめる生徒が増えている。小学校からの締めつけが酷くなっているためか、「やってもどうせ無理だから」と言って、進級に関わる補習にも出ずに退学して行ってしまう生徒がじわじわ増えている。
 H:そもそも学力って何?ということを考えないと・・。「とにかくやんなきゃいけない」という雰囲気が蔓延してしまいて、それが生徒に伝播して、何も考えなくていい、という雰囲気になっていくのが怖い。
 研究者から
 市川須美子(独協大)
:学力スタンダードは学習指導要領の細目版だ。学習指導要領そのものが、法的には大綱的な基準としてのみ認められている。そう意味で、きちんとした法的裏付けのないことを押し付けているというのが、学力スタンダードの基本的な弱点だ。
 教育は、憲法13条に基づき、子どもの幸福追求の権利として行われるものであるから、子どもや親からすれば、「学力テスト」の受験義務はないはず。過重な負担になるものは、本来なら、親に受験参加の可否を問うべき。だから、子どもは学力テストを受けることを拒否する権利を持つ。低学年の場合は親が拒否権を持つ。訴訟まではちょっと難しいが。
 高橋哲(埼玉大):アメリカの改革と東京のそれを比べると、東京では個別のスタンダードに進んでいる。日本ではなぜ個別化していくのか。学習指導要領や新教育基本法がバックにある。PDAC(計画・実行・評価・改善)サイクルの下、日本では学力テストの結果公表しようとか、子どもに直接制裁を加えるとか、驚くことが起きている。
 76年旭川学テ最高裁判決で、学テの結果を露骨には公表できなくなっているが、その垣根を取っ払うように、教育委員会つぶしの動きも出ている。「せめて納税者に」という一部の特別支援校での動きや、いわゆる「中堅校」の序列化がすさまじい。それが特別支援校をも巻き込んで、序列化を固定化させる動きになっている。怒りを禁じ得ない。
 柿沼:聞いていて、学力スタンダードは普通高校の多様化だと思った。以前、商業高校を出た卒業生が「自分は普通高校を出た人より劣っている」と思ってあきらめる傾向があったが、そこが多様化の恐ろしいところ。自分は「能力が低い」から、人権を制限されても仕方ない、と思いこまされるのが怖い
 永野:戦前の話だが、美濃部達吉の天皇機関説が攻撃され、その後、『国体の本義』という冊子が出た。この後すぐに、その学習参考書が出て、実際、入学試験に出題され、ますます学習参考書が売れる、ということがあった。今後、「学力スタンダード問題集」などが作られ、企業とますます癒着していく。学力スタンダードは道徳にも及んでいく。危険だ。(片山)
 予防訴訟をひきつぐ会『いまこそ 4号』(2014.5.17)

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