パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

◆ 卒・入学式で都教委派遣職員、国旗等敬礼8回のピエロ演出

2023年06月30日 | 「日の丸・君が代」強制反対
都教委の"国旗・国歌"実施状況調査用紙。~この画像は日比谷高校用。

 ◆ 直立不動で〝君が代〟斉唱、不起立生徒念頭に「やり直し」も指示(『マスコミ市民』)

永野厚男(教育ジャーナリスト)

 東京都教育委員会が3・4月の卒業・入学式の〝国旗・国歌〟問題等の運営・形態を、自らの支配下に置くよう強制していた生々しい実態が、情報公開請求した市民団体・教育行政研究会の都民への開示文書で明らかになった。

◆ 文科省通知に即反応、〝君が代〟不起立教職員を処分で脅迫

 コロナ禍の〝収束〟化に伴い、〝君が代〟強制問題は卒業式では、岸田文雄首相が2月10日午前、「マスク着用し〝君が代〟斉唱を」という趣旨を発言。文部科学省の藤原章夫(あきお)初等中等教育局長(59歳)が同日午後、これをなぞる通知を出した。都教委は「歌唱は行わない」けれど、「全員起立させた上で、歌唱入り〝君が代〟CDを大音量で流せ」という2020年12月24日発出した通知通りの式を、都立学校(高校・特別支援学校等)に強制した。
 この都教委の新方式は、「天皇の治世の永続を願う意の歌唱入り君が代CD」を大音量で流させるゆえ、「マスク着用での声量が小さい斉唱」よりも、国家主義思想を児童・生徒にindoctrinationする〝効果〟は、実は大(都教委は校長から教職員に「君が代時起立」の職務命令を発出させ、逆らえば「懲戒処分にする」と脅迫。以上は月刊『紙の爆弾』2023年6月号で一部既報)。
 その後、都立学校の多くの卒業式が終わっていた3月17日、藤原局長が「新学期の入学式ではマスク着用を求めず、国歌斉唱等は児童・生徒の体の中心から前方1m程度・左右50㎝程度の距離を確保すること」などと通知。すると都教委の浜佳かよこ葉子教育長(60歳)と4名の課長は同日、「ほぼ同内容プラス、起立・ピアノ伴奏強制」の通知を発出。東京の公立小中高校等の入学式は実質、コロナ禍前の「03年発出の〝10・23通達〟下の〝君が代〟起立・斉唱強制体制」に戻ってしまった(教職員には〝君が代〟不起立に加え、ピアノ不伴奏も懲戒処分にする、と脅迫)。

◆ 派遣職員に「国旗に正対し国歌斉唱、国旗敬礼」演じさせる

 都教委は〝10・23通達〟発出後19年4月まで、都立学校の「祝意を表し都教委の挨拶文を読み上げるため」と称しているが、開示文書は派遣職員の業務内容に、(1)国旗・都旗掲揚状況確認、(2)「国歌斉唱時にCDが鳴らない」時等の「やり直しの対応を行うよう、管理職等への助言」など明記しており、〝君が代〟不起立の監視目的は明白だ(詳細は後掲。以下、引用部の傍線は筆者)。

 〝コロナ後〟の今年3月の都立学校の卒業式で、この職員派遣を3年ぶり再開させたのに伴い、全体主義国(ロシア、中国、北朝鮮、ブッシュ子政権時の9・11同時多発テロ事件後の〝愛国者法〟下の米国)ばりの内部文書を、都教委が復活させていた事実が明らかになった。 都教委指導企画課の〝国旗・国歌〟担当部署と高校教育指導課が主導し、コロナ禍前の19年3月の都立学校の卒業式に派遣した職員全員に、〝卒業式の所作〟と称し「(舞台壇上正面の)国旗に正対し声高らかに国歌を斉唱してください」と、生徒や保護者に尻を向け〝君が代〟を大声で歌うよう強制した上に、登・降壇時、計8回も無人の舞台壇上正面の国旗等への敬礼を指示する文書を手渡していた。
 都教委はさすがに生徒に〝斉唱時の声量の大きさ、国旗敬礼〟の直接的指示はしていないようだが、派遣職員を使い生徒に〝範〟を示させようと謀んでいる。東京都の区市町村立小中でも全校長が舞台壇上への(からの)登・降壇時、国旗敬礼をしており、ある小学校の保護者は、「校長の真似をし卒業式で国旗に深々と礼をする児童がいた」と批判している。
 ところで今年3月の卒業式は、〝君が代〟は「起立・清聴」だったので派遣職員に「歌え」の指示はなし。だが「起立・斉唱」に戻った入学式の〝所作〟文書は、前掲の「国旗に正対し、国歌を斉唱して下さい」という文言が復活。ただ筆者が『週刊金曜日』19年4月5日号で「声高らかに」等を暴き出し、「全体主義国家のやり方だ」と厳しく批判した、その小さい成果かは不明だが、「国歌を」の前にあった「声高らかに」という、声量指示の恐怖の5文字は文書上は消えた。
 こういう事実を踏まえ、都民が前記・指導企画課に、①「声高らかに」を外した理由、②後掲の〝説明会〟時、口頭で「声高らかに」を指示したか問うと、担当者は①は「記録がなく不明」、②は「ない」と回答した。

◆ 事前〝説明会〟まで開催~指導主事が「国旗等敬礼」を実演

 今回の開示文書で驚いたのは、入学式直前の4月4日、都教委ナンバー3の藤井大輔(だいすけ)・教育監(高校教諭出身)の名で、指導企画課が「式に初参列する全職員」を都議会棟1階の都民ホール(約300名収容)に集め、〝説明会〟なるものを開催していたことだ。
 〝説明会〟では、前記〝所作〟等の文書を配った上で、高校教育指導課の山本進一(しんいち)・統括指導主事が、後に詳述する〝式への対応〟を指示した上、「中央に国旗が掲揚されていると見立てての、計8回の国旗等への敬礼」を、〝部下〟の指導主事に実演させてしまった。
 そして山本氏は「計8回の礼の中でも、国旗に対する礼は」絶対に忘れないよう御注意下さい」と述べた上で、挨拶文読み上げ後の降壇前「国旗に背(尻)を向けない」よう強調している(指導企画課によると、この種の〝説明会〟はコロナ禍前も、少なくとも19年は開催していたという)。
 地方教育行政法第18条第3・4項は、指導主事の資格・職務を、「教育に関し識見を有し(略)教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項について教養と経験がある者。上司の命を受け(略)教育課程(略)の指導に関する事務に従事する」などと規定。
 だが、ピエロやロボットのように「計8回の国旗等敬礼」を演じさせられる姿からは、「上司の命を受け」が至上命題で、「教育に関する識見」「教養」は全く見られない。
 〝説明会〟配付資料の「入学式等派遣者用マニュアル」(A4判1枚)を更に詳しく述べた、「全庁挙げての御支援、ありがとうございます」で始まる山本氏の〝読み上げ原稿〟を暴こう。以下の通り式の主人公は生徒ではなく、〝君が代〟・日の丸(背後にある国や都教委)であるかのような記述が目立つ。〝日の君〟への執拗さ・画一的思考が鮮明だ。

(1) 開式前① 山本氏は「学校に到着しましたら、校門周辺を観察いただき、ビラ配布等がないか、(略)ビラを配布し(しようとし)ている人が確認された場合は、管理職に伝え、ビラ配布の中止要請など、管理職がきちんと対応するように御指導・御助言下さい」などと主張。
 「天皇の治世の永続を願う意」ゆえに「主権在民が大原則の憲法に違反する」と考える人が少なくない〝君が代〟。校門外の公道で一部保護者や元教職員ら市民が、登校する生徒・教職員、その後来校する保護者・来賓に、〝君が代〟強制反対のビラをまくのは、憲法第19~21条が保障する「思想・良心・信教・表現の自由」に基づく正当な行動だ。しかし山本氏ら都教委は、法的根拠なく敵視・妨害する主張をしており、憲法違反かつ違法だ(予備校や学習塾、奨学金等のビラまきは敵視・妨害する主張をしておらず、ビラの内容による差別意識鮮明)。都教委は口先では多様性やグローバルを言いつつ、本音は国家主義・画一化志向なのだ。
 ところでコロナ禍前、少なからぬ都立高校等の校門外の公道で、保護者や元教職員ら市民が、「生徒に配るな」と言いに来た(副)校長らの妨害行為に屈せず、「卒業(入学)おめでとう」などと言いながらのビラまきを貫徹している。なお都民の問い合わせに、指導企画課の担当者は「今年はビラ配布中止を求めた学校はない」と回答した。

(2) 開式前② 山本氏は「来校者の動線・視点から見て、国旗がきちんと認知できるよう掲揚されているか、(略)国旗の認知が不十分な場合は、来校者が十分認知できるよう、掲揚塔の他に校門又は玄関にも国旗を掲揚するなどの対応について、御指導・御助言下さい」と細かく主張。
 山本氏の主張通りやると、日の丸は式場内の壇上正面に加え、屋外の掲揚塔and「校門or玄関」の計3箇所に上る。生徒・保護者や来賓等に「これでもか、これでもか」と、日の丸を認識させようとする都教委の異常さは明白。
 なお都民の問い合わせに、指導企画課は「今春の式では、」都教委派遣職員が外の国旗について校長を指導したという報告は受けていない」と回答している。

(3) 式中 式中の都教委派遣職員の行動指示では、前述した「国旗に正対し国歌斉唱、国旗等敬礼」以外を暴こう。
 山本氏は「式典中の危機管理」として「国歌斉唱時にCDが鳴らない、(略)知事のお祝いメッセージの読み上げを失念する、生徒の予定外の行動への対応などが考えられます」と切り出した。
 そして読み上げ原稿によると、山本氏は「卒業・入学式は、学習指導要領に位置付けられた学校行事の儀式的行事ですので、そのままにせず、教育活動の一環として、式典内で正しい方法・内容に修正したり、やり直したりすることが大切です。学校に対しては、(副)校長・経営企画室長(注、事務長のこと)・主幹教諭等が連携して、不足(ママ。「不測」の誤字)の事態発生時」に「やり直しの対応を行うよう、周知してあります」と続け、「派遣職員は必要に応じて管理職等に助言せよ」などと結んでいる。
 都民が「都立高校の卒業・入学式の進行台本に『〝君が代〟不起立の生徒がいたら、司会の主幹教諭等がマイクを使い〝立ちなさい〟と2~3回叫ぶ。立つまで式を始めない』などと明記するよう、都教委の学校経営支援センターが強制している」と、都教委指導企画課に指摘。その上で「都教委流の〝正しい方法・内容〟で『やり直させる』という対象の、〝生徒の予定外の行動不測の事態〟が、〝君が代〟不起立を指すなら、憲法が禁じる『国家権力による(生徒の)思想・良心・信教」の自由の侵害』に当たるのではないか」と質すと、指導企画課は「今春の式でやり直しを行った高校はない。コロナ禍の短縮版の式から元の長めの式に戻り、これまでのノウハウを知らない不慣れな管理職等もおり、連携し対応してという意味」と回答。だがやはり〝君が代〟不起立対策なのは明白だ。

◆ 小池百合子氏メッセージ読上げ~選挙運動だと批判続出

 〝説明会〟の派遣職員への配付資料の中身を数点、暴こう。

(1) 派遣職員に読み上げさせる挨拶文について。数年前までは〝愛国心〟強制や東京オリンピック・パラリンピック大会宣伝等、国家主義や政治色の濃い文言が目立っていた。今春の卒業式では、都教委が昨夏、事務局を担った全国高校総合文化祭(【注】参照)を「多くの人々に感動を与え(略)社会全体を明るくする大きな原動力となりうることを教えてくれ」たと絶賛する内容。入学式では、「人間と社会」と称する〝教科〟(都教委が全都立高に年間35時間強制)の学習を通して「道徳性を養」えと、〝上から目線〟のお説教を垂れた。

(2) 卒業式等と無関係の政策アピールバッジ着用強制問題。入学式では「TOKYOTOKYO」バッジ(卒業式ではこれに加え「HTT」バッジも)の着用を強制。都教委関係者は「ふだんから職として着用し学校訪問等している」と言うが、前者は東京都のPRブランド、後者は「電力をH減らす・T創る・T蓄める」という都環境局作成のもので、必ずしも教育とは関係ない。コロナ禍前は、オリパラ大会宣伝の政治色濃いバッジ着用を強制していた。

(3) 小池百合子氏と知事部局の言いなりで、〝知事メッセージ〟の読み上げと掲示を強制。都政策企画局の下名迫久嗣(しもなさこひさつぐ)秘書課長が2月15日付で都教委の新田智哉総務課長(当時)宛「卒業式への知事メッセージの送付について(周知依頼)」の事務連絡を発出。画像にある無味乾燥な内容の文書を添付した。指導企画課はこれを副校長に「全文読み上げ」させた上に、「新入生・参列者の見やすい場所に掲示する」よう強制した。20年3月の卒業式で小池氏メッセージを配布された保護者は「7月の都知事選直前の売名行為。教育の政治的中立性に違反する選挙運動だ」と憤っていた。

◆ 右翼団体の檄文もどきも配布~不起立の都議に文句言いに来室

 都教委は12年1月24日、臨時会を招集し、「児童・生徒一人一人に、(略)自国の一員としての自覚をもたせることが必要である。また国家の象徴である国旗及び国歌に対して、正しい認識をもたせるとともに、(略)それらを尊重する態度を育てることが大切である。都教育委員会は(略)各学校の入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱が適正に実施されるよう、万全を期していく」などと〝議決〟し、都立学校校長宛、通知した。
 多様性に反し在日外国人生徒を排除する、右翼団体の檄文のようなこの悪文を、都教委は〝説明会〟での配付資料に入れていた。この悪文は、04年春までの〝君が代〟不起立等で懲戒処分にされた、都立学校現・元教職員の2件の処分取消し訴訟で、最高裁が12年1月16日、戒告は容認しつつも、「都教委による教諭2人への減給処分は、重きに失し社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え違法」と判じ、取消しを命じる教職員側一部勝訴判決を出した約1週間後、反発した都教委が負け惜しみで出したもの。
 ところで、今年3月の都立高校の卒業式で、ある都議が勇気ある〝君が代〟不起立をした。すると都教委の役人2名が2日後、この都議の控室に来て「今後は起立してもらえませんか」という趣旨の話をしたという。
 こうしたロシア化した都教委を改心させるには、〝君が代〟不起立への不当処分取消し5次訴訟で勝利するよう現・元教職員を支援すると共に、〝10・23通達〟を廃止する議員が過半数の都議会勢力を作ることが必要だ。

【注】都立高校も多く参加した、昨夏開催の全国高校総合文化祭・東京大会の開会式は、壇上正面の日の丸に向かい〝君が代〟斉唱。秋篠宮(あきしののみや)文仁氏夫婦と長男悠仁(ひさひと)くん(16歳)の入退場時は司会の生徒が拍手を促し、炎天下のパレード(デモ)強行時は、救急車がマーチの高校生2人を搬送する一方、背広姿の文仁氏親子は歩道の特製クーラー付きテントで涼しげに観覧していた。

月刊『マスコミ市民』2023年7月号


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