◆ 校長主導 学力テスト不正
足立区の公立小 昨年の試験、誤答指さす
昨年四月に実施された東京都足立区の学力テストの際、区西部にある公立小で、試験中に教員が児童の答案を指さして誤答に気付かせる不正を行っていたことが七日、分かった。共同通信の取材に対し、六人の教員が「校長の指示があった。校長自身も教室に来て、自ら率先して『指さし』をした」などと証言した。
◆ 区内順位 前年の44位から1位へ
校長は「日常の指導の一環でノートや小テストを指さすことはあるが、学力テストではやっていない」と否定。区教育委員会は「テストは適正に行われたと考えている」とする一方、事実関係を把握するため、調査を始めた。
足立区はテストの順位を公表しているほか、学校予算の傾斜配分や学校選択制を取り入れており、教育関係者からは「競争原理の導入が不正の背景にあるのではないか」との指摘も出ている。
同小は区内七十二小学校中、二〇〇五年は四十四位だったが、不正のあった〇六年は一気に一位になっている。
テストは昨年四月二十五日、小学校では区内の二年生から六年生を対象に国語と算数で実施された。同小の複数の教員は試験中に机の間を歩き、答案に間違いがあると、問題を指さして児童に気付かせた。
教員らによると、校長も教室の中に入り、自ら指をさした。教室内で教員に「指さし」を促すような態度を取ることもあったとしている。
教員の一人は「指をさして意味の分かる児童とそうでない児童がおり、不正ぎりぎりだと思った。校長の指示があったかどうかと言えばイエスだ」と証言。教員らは「校長は学校の平均点を上げるのが目的だったのだろうが、あんなやり方で一位になっても子どもは喜ばない」と話している。
また、校長は、本来すべてをそのまま回収しなければならないのに、〇五年のテストの問題をほとんどメモし、翌年の児童に練習問題として繰り返しやらせていた。
翌〇六年のテストは、九割以上が〇五年と同一問題だった。
校長は「(〇五年の問題が)良かったので参考にした。翌年も同じ問題が出るとは思わなかった」とする一方、「過去問をやらなければ一位にはならなかったと思う」とも話している。
区教委は「メモを取ったのは不適切な行為」としている。
◆勇気ある不正証言 教育評論家の尾木直樹法政大教授(臨床教育学)の話
学力テストをやれば必ず指さしなどの不正が起きる。答えを丸暗記するほど過去問を繰り返しやらせ、通常の授業時間が削られるような状況も生まれるなど、学力テストを行うことでかえって基礎学力が落ちてしまう。不正を証言した教員はとても勇気がある。子どもに対する本当の愛情が感じられ、生き方そのものが教育者としての姿勢を示している。管理が強まる学校の中で、不正があっても声を出せない教員は少なくない。全国では同じような問題がたくさんあるはずだから、後に続く人が多く出てきてほしい。
『東京新聞』(2007年7月8日 朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007070802030557.html
◆足立・テスト不正
背景に競争的施策
自治体が実施する学カテストをめぐり、不正が明るみに出た。表面化することはまれだが、学校の成績を上げるために不正が行われているとの指摘は各地にあり、不正行為は今回の学校に特有のものではない。
「説明責任」を理由に、学校の成績を公表する自治体は全国で増加、背景には学校が競争的な環境に囲まれている状態を見て取ることができる。
成績の公表は学校の評価に直結する。学校側が「テストで測れる学力はあくまで子供の能力の一部だ」と強調しても、保護者は数字で学校の良しあしを判断しがちだ。
児童生徒の指導改善に生かすのが学カテスト本来の目的だが、現実には校長が目先の評価にとらわれ、目的を逸脱しているケースも少なくない。
◆ 成績が学校評価に直結
東京都足立区の場合、テスト結果の公表に加え、学校選択制、学校予算の傾斜配分など競争的な施策を次々に導入した。同区の校長や教員の多くは「人気校になるために、度を越したテスト対策に走る学校が出てきても不思議ではない」と現状を分析する。
政府の教育再生会議は公教育への競争原理導入を強く打ち出した。国は九月にも全国学カテストの結果を都道府県別に公表することにしている。
『東京新聞』(2007年7月8日 朝刊)
◆足立・テスト不正
教員に聞き取り調査 『1週間以内に結果』
二〇〇六年度の足立区立小学校の学力テストで、試験中に「誤答指さし」の不正が行われたとの指摘などを受けて、区教育委員会は七日夜、記者会見を開いた。区教委は、不正を主導したとされる小学校の校長に尋ねたところ、校長は不正を否定したと説明。ただし、区教委は、当時の同校教員について、個別に聞き取り調査を行う方針を表明した。
また、この問題とは別に、同校で一部児童を保護者に無断で採点対象から除外していたことを明らかにした。
誤答指さし不正について、斉藤幸枝区教委事務局次長は「できれば一週間以内に一定の結果をまとめたい」とした。過去問題の反復などテスト前の学習状況については、区内小中学校百九全校を対象に調査するとした。
区教委は昨秋、学力テストの成績などで各校をランク分けして、各校の追加的予算配分に反映させる方針を表明し、その後撤回した経緯がある。今回、問題となった小学校長の行動の背景には、区教委が一時打ち出したこの方針が関連しているのではとの見方については、西野知之教育政策課長は「ありえない。方針は(問題の学力テストが終わった後の)十月に決めた。時期的に関係ない」と否定した。
『東京新聞』(2007年7月8日 朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20070708/CK2007070802030565.html
足立区の公立小 昨年の試験、誤答指さす
昨年四月に実施された東京都足立区の学力テストの際、区西部にある公立小で、試験中に教員が児童の答案を指さして誤答に気付かせる不正を行っていたことが七日、分かった。共同通信の取材に対し、六人の教員が「校長の指示があった。校長自身も教室に来て、自ら率先して『指さし』をした」などと証言した。
◆ 区内順位 前年の44位から1位へ
校長は「日常の指導の一環でノートや小テストを指さすことはあるが、学力テストではやっていない」と否定。区教育委員会は「テストは適正に行われたと考えている」とする一方、事実関係を把握するため、調査を始めた。
足立区はテストの順位を公表しているほか、学校予算の傾斜配分や学校選択制を取り入れており、教育関係者からは「競争原理の導入が不正の背景にあるのではないか」との指摘も出ている。
同小は区内七十二小学校中、二〇〇五年は四十四位だったが、不正のあった〇六年は一気に一位になっている。
テストは昨年四月二十五日、小学校では区内の二年生から六年生を対象に国語と算数で実施された。同小の複数の教員は試験中に机の間を歩き、答案に間違いがあると、問題を指さして児童に気付かせた。
教員らによると、校長も教室の中に入り、自ら指をさした。教室内で教員に「指さし」を促すような態度を取ることもあったとしている。
教員の一人は「指をさして意味の分かる児童とそうでない児童がおり、不正ぎりぎりだと思った。校長の指示があったかどうかと言えばイエスだ」と証言。教員らは「校長は学校の平均点を上げるのが目的だったのだろうが、あんなやり方で一位になっても子どもは喜ばない」と話している。
また、校長は、本来すべてをそのまま回収しなければならないのに、〇五年のテストの問題をほとんどメモし、翌年の児童に練習問題として繰り返しやらせていた。
翌〇六年のテストは、九割以上が〇五年と同一問題だった。
校長は「(〇五年の問題が)良かったので参考にした。翌年も同じ問題が出るとは思わなかった」とする一方、「過去問をやらなければ一位にはならなかったと思う」とも話している。
区教委は「メモを取ったのは不適切な行為」としている。
◆勇気ある不正証言 教育評論家の尾木直樹法政大教授(臨床教育学)の話
学力テストをやれば必ず指さしなどの不正が起きる。答えを丸暗記するほど過去問を繰り返しやらせ、通常の授業時間が削られるような状況も生まれるなど、学力テストを行うことでかえって基礎学力が落ちてしまう。不正を証言した教員はとても勇気がある。子どもに対する本当の愛情が感じられ、生き方そのものが教育者としての姿勢を示している。管理が強まる学校の中で、不正があっても声を出せない教員は少なくない。全国では同じような問題がたくさんあるはずだから、後に続く人が多く出てきてほしい。
『東京新聞』(2007年7月8日 朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007070802030557.html
◆足立・テスト不正
背景に競争的施策
自治体が実施する学カテストをめぐり、不正が明るみに出た。表面化することはまれだが、学校の成績を上げるために不正が行われているとの指摘は各地にあり、不正行為は今回の学校に特有のものではない。
「説明責任」を理由に、学校の成績を公表する自治体は全国で増加、背景には学校が競争的な環境に囲まれている状態を見て取ることができる。
成績の公表は学校の評価に直結する。学校側が「テストで測れる学力はあくまで子供の能力の一部だ」と強調しても、保護者は数字で学校の良しあしを判断しがちだ。
児童生徒の指導改善に生かすのが学カテスト本来の目的だが、現実には校長が目先の評価にとらわれ、目的を逸脱しているケースも少なくない。
◆ 成績が学校評価に直結
東京都足立区の場合、テスト結果の公表に加え、学校選択制、学校予算の傾斜配分など競争的な施策を次々に導入した。同区の校長や教員の多くは「人気校になるために、度を越したテスト対策に走る学校が出てきても不思議ではない」と現状を分析する。
政府の教育再生会議は公教育への競争原理導入を強く打ち出した。国は九月にも全国学カテストの結果を都道府県別に公表することにしている。
『東京新聞』(2007年7月8日 朝刊)
◆足立・テスト不正
教員に聞き取り調査 『1週間以内に結果』
二〇〇六年度の足立区立小学校の学力テストで、試験中に「誤答指さし」の不正が行われたとの指摘などを受けて、区教育委員会は七日夜、記者会見を開いた。区教委は、不正を主導したとされる小学校の校長に尋ねたところ、校長は不正を否定したと説明。ただし、区教委は、当時の同校教員について、個別に聞き取り調査を行う方針を表明した。
また、この問題とは別に、同校で一部児童を保護者に無断で採点対象から除外していたことを明らかにした。
誤答指さし不正について、斉藤幸枝区教委事務局次長は「できれば一週間以内に一定の結果をまとめたい」とした。過去問題の反復などテスト前の学習状況については、区内小中学校百九全校を対象に調査するとした。
区教委は昨秋、学力テストの成績などで各校をランク分けして、各校の追加的予算配分に反映させる方針を表明し、その後撤回した経緯がある。今回、問題となった小学校長の行動の背景には、区教委が一時打ち出したこの方針が関連しているのではとの見方については、西野知之教育政策課長は「ありえない。方針は(問題の学力テストが終わった後の)十月に決めた。時期的に関係ない」と否定した。
『東京新聞』(2007年7月8日 朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20070708/CK2007070802030565.html
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます