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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

根津公子さんの「あきらめない」

2008年09月11日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ▲ 根津公子さんの「あきらめない」

 ドキュメンタリー「君が代不起立」の続編「あきらめない」(制作:ビデオプレス)が完成し、9月4日(木)夜、なかのゼロ視聴覚ホールで試写会が行われた。前作同様、根津公子さんの都教委に対する闘いを描いた作品で、2008年2月から3月の緊迫した場面が中心のドキュメンタリーである。


試写会のスクリーンを前にスピーチする根津さん

 このビデオは、根津さんが異動先の町田市立鶴川第二中卒業式で不起立し、停職6か月処分を受けた2007年3月から始まる。
 前年に都議会で「停職6か月から先の処分はない(つまり免職)」という答弁があったので崖っぷちの状態である。そのうえ根津さんは中学校家庭科教員として30年あまりのキャリアを奪われ、養護学校である南大沢学園へ異動となった。10月に職場復帰したものの08年2月1日突然、都教委の呼び出しを受ける。10月に着用していたトレーナーの背中の「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」というロゴが問題にされたのだ。根津さんはせいぜい職務専念義務違反だと考えていたが、職務命令違反が付け加えられていた。職務命令違反となるといままでの処分に累積加重され、3月の卒業式を待たずそれだけで免職にできる。月2回開催される都教委定例会を目標に、庁舎内で責任者に面会を求める行動、庁舎前でのワンデイアクションなど抗議集会、勤務先での抗議行動が連日行われた。

 トレーナーの表の「戦争放棄」という文字は問題はない、このトレーナーは従来も着ていたし他の教員も着用していたが問題にはされなかった、金井任用係長が着ていたベストの「holiday」という文字は職務専念義務違反には問われない、黒田教育情報課長の「所管が回答しないと言ったので、回答しないことが回答」、懲戒分限委員会のメンバーで毎回裁判にも出席する松川法務監察課長の「答える立場にない」、学校で支援者が事故報告を出した尾崎校長に面接を求めると警察に通報しパトカー2台、警察官2人が出動したことなど、都教委の理不尽な対応や迷回答が次々にスクリーンに映し出された。

 3月11日以降、根津さんは時間休暇を取り毎日夕方都庁を訪れた。「歌うのは当たり前という生徒は増えてきている。これはあなたたちの成果ともいえる。でも何も考えられない子どもになったらどうするのか」と都教委の職員に訴えた。いまでは有名になったガードマンの人間バリケードが築かれ、エレベータ前の電気が消され暗闇の中の抗議が続いた。
 そして3月24日の雨のなかの卒業式、28日処分を決める都教委定例会へと進む。竹花豊委員「都民の声は参考になる。われわれに直接紹介してほしい」という発言から「根津さん、河原井さんらを処分するな」という全国12万筆の署名が委員に渡されていないことが発覚した。
 28日の夜、免職を覚悟した根津さんは「南大沢学園で最後の授業の日、みんなで合唱しましょうということになった。『あなたに会えてよかった。ありがとう、さようなら』という歌詞だったが、まさに私のいまの気持ちだと思った。生徒みんなをギュッと抱きしめたくなった。幸せな日だった」と語った。
 週が明け、いよいよ31日処分発令日を迎える。傘を差し校門の外に集まった支援者は口ぐちに「根津先生、がんばれ」と声援を送る。そして校舎2階の職員室の窓から根津さんの「みんな聞いて、クビにさせることはできなかった」という感動の一瞬、ビデオのハイライトである。ふたたび停職6か月処分を受け、4月に異動になったあきる野学園の校門で停職出勤するところで映画は終わる。

 この映画には根津さん、河原井さんを取り巻く、じつに多くの人が登場する。河原井さん根津さんらの「君が代」解雇をさせない会の中心メンバーたち、八王子の夜間中学の近藤さん、町田教組の菊岡さん、東綾瀬の米山さんなど教員、町田の市民グループのお母さんや子ども、教え子、大阪の支援者などである。フランスやアメリカなど海外も含め多くの人の運動の輪が2008年3月の解雇阻止を成功させたことがよくわかった。輪ができたのは、根津さんのことばが一人ひとりの心に届いたからである。
 また映像の力をあらためて思い知らされた。都教委の理不尽な対応、それを追及する根津さんや市民の抗議が動画と音声で再現され、見ている者まで緊迫した空気に包まれているような気になる。3月31日の感動のシーンは部分的には見ていたが、この作品で前後を含めて全体を見ると、根津さんや現場にいた人の感激が丸ごと伝わってくる。

 上映のあと、根津さんはじめ何人かの方からスピーチがあった。

●ビデオプレスの佐々木有美さん
 このビデオに入れられなかったことを紹介する。要請行動として、連日電話、ファックス、メールが都教委に寄せられた。また町田の市民グループの要請から社民党の保坂展人議員が衆議院文科委員会で根津さんのことを質問してくれた。チャリティコンサートをした人もいる。また根津さんは都庁で有名になり、食堂で大盛りのごはんが出たが、これは明らかに好意の表れだった。人間バリケードのガードマンの方のなかにも、声には出せなくても表情から「支援」していることがわかる人も出てきた。こういういろんな人の気持ちがいっしょになり3月末のうれしい結果となった。それぞれの人の自分自身の自由への危機感が生んだものだ。根津さんたち不起立教員の闘いは、人間の自由と尊厳を守る闘いなのである。

●河原井純子さん
 停職6か月で今年も全国行脚をしている。今後はリュックにこのDVDを詰めて歩く。わたしは「がんばらない、あきらめない、楽しみたい、つながりたい」をモットーにしている。ガンジーの孫娘は医師で、インドの格差社会を何とかしたいとがんばっている。その人の診察室の壁に「Never Give up(あきらめない)」という言葉が貼ってあるのをみつけた。わたしも自分のできることで抵抗する。

●根津公子さん
 このDVDをみて、必死だった2月3月のことが全部よみがえってきた。自分の姿をみて自分で泣いてしまった。
 映像の力について述べる。2006年に1年間赴任した町田の鶴川二中では、行く前から「根津はとんでもない教員だ」というウワサが地域に浸透していた。子どもたちも巻き込まれ小国民になっていた。映画にも出てきたが、生徒の雑巾を運んでいたとき1年生の生徒に階段から突き落とされた。その後、映像をみて「根津は間違っていない」ことをわかってくれた。事実を見せることが大事だ。映画の最後のほうで「根津先生、屈するな」と叫んでくれたのがこの町田の生徒だった。こういう映像の力が分限免職阻止につながると思う。

●解雇をさせない会の佐藤丈夫さん
 2月、3月は毎日のように都庁で抗議行動を行った。その後も都庁に行くことがあるが「もうバンダナはしないんですか」と言われることがある。すっかり有名になったようだ。しかし問題は、根津さん・河原井さんの闘いは現在進行中であることだ。来春はどうするかということが大きな課題だ。分限免職にさせないため、解雇阻止運動の一環として、この映画がある。

 その他、ビデオプレスの松原さん、題字を書かれた方、映像を撮影された方、映画にも登場した菊岡さん、菊本さんからスピーチがあった。
 この映画は11月7日(金)18:30から、なかのゼロ小ホールにて、「大上映会」が予定されている。またDVD購入者への発送も9月16日スタートの予定だそうだ。

 DVDは今年4月初めまでだが、現実の運動のほうは現在進行形で進んでいる。根津さんらに都教委が新たな攻撃を仕掛けている。7月15日に発出された*「分限指針」である。そこで根津さん・河原井さんの分限処分を考える集会が下記のように開催される。

 ★ 河原井・根津裁判の勝利をめざす9.19集会
 ――都教委の悪知恵?「分限」指針はおかしいぞ
 日時 2008年9月19日(金)18:30~
 場所 中野区立商工会館

   (JR中野駅北口から徒歩7分)


『多面体F』より(2008年09月08日)
http://blog.goo.ne.jp/polyhedron-f/

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