最近2週間ほどの感染者数の増加について、日本と韓国を比較したグラフを作成した。数字については日経新聞のサイトのデータを使っている。そのため、NHKなどテレビ報道で伝えられている数値とは若干の異同がある点をご容赦いただきたい。
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最近の韓国の感染者の増加数はなだらかな高原状の曲線を描いて推移し、日が経つほどに少しずつ減少する傾向にある。一方、日本の感染者数は3月下旬から増加の一途を辿っていて、特に首都圏と阪神地方での感染蔓延が著しく、政府が緊急事態宣言を発表する事態になった。
韓国で大統領が緊急事態宣言を発したのは、今から1か月半前の2月23日である。大邱で感染爆発が起き、2月22日から23日の間に感染者数が346人から602人に増えたときだ。現在、感染者累計は韓国が1万284人で日本が3654人となっていて、まだ2.8倍の開きがある。死者数は韓国が186人で日本が85人、約2.2倍の差となっている。
が、おそらく、感染者数も死者数も日本が今後急上昇で増えて行き、4月下旬に韓国と並び、4月末には追い越しているだろう。韓国は3月10日前後に感染の速度が止まり、一日に発生する新たな感染者数が減って行った。現在は安定した状態にある。
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韓国では都市封鎖もなく、大きな医療崩壊もなく、短期に収束の山場を過ぎ、現在、平穏な日常下で総選挙が行われている。一方、日本の方は、感染爆発もしてないのに、あっと言う間に医療崩壊の危機と破局を迎えた。
報道によると、台東区の永寿総合病院、新宿区の慶応義塾大学病院、港区の東京慈恵医大病院、大田区の特別養護老人ホーム「たまがわ」で深刻な院内感染を起こしていて、東京都の感染者数の増加の要因となっている。首都圏および全国の地域で、総合病院の院内感染が続発しており、緊急事態宣言が発表されたとしても、その被害が大きくなることは確実視されている。
日本全国の感染者数が、今後1週間で2倍ずつ増えてゆくとすると、4月12日には7000、4月19日には1万4000、4月26日には2万8000となる。NYのここ3週間の驚異的な感染速度と医療崩壊の現状を見ると、日本でこの数字が現実になっても何の不思議でもなく、現時点でリアルな推計だ。
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尾身茂の説明では、日本では「オーバーシュート」の前に医療崩壊が起きるのだと言う。もともと「オーバーシュート」自体が医学用語ではなく、定義不明の怪しい言説細工で、厚労省と専門家会議がその場凌ぎで大衆に撒いていた胡乱な目眩ましのコピーフレーズだった。
だから、「オーバーシュート」が本当に現実になれば、専門家会議そのものの自己否定になる。そのため、責任をゴマカすために子供騙しの詐術を駆使していたわけだが、時間稼ぎに失敗し、国民生活にとって死活問題である医療崩壊が一瞬で目前になった。目前どころか、すでに台東区など都の住民にとっては現在進行形のパニックだ。
もともと、二つの曲線の山を左右に描いた感染対策のモデル図は、感染のピークを後ろにずらし、感染爆発を押さえ、そのことによって医療崩壊を防ぐことを目的とした政策概念だが、米欧諸国と同様、日本でもその目的を得られず、対策に失敗したことになる。明瞭な結果と総括は今から2週間後には明らかになるだろう。
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専門家会議と厚労省の過失責任は免れない。日本政府の失敗の原因は、油断というよりも方針のミスにあったと言える。検査しないという方針を最初に決め、それを貫徹した点だ。堀賢は、3月29日のサンデーモーニングで関口宏に「どうして日本は検査しないのか」と訊かれ、「それは日本のポリシーだから。ポリシーが韓国とは違うから」と答えた。専門家会議・厚労省の方針を率直に語っている。
無検査主義は現在まで日本の対策方針で、例えば、東京都は1日に150件とか200件の検査をして、100人の感染者を出すというオペレーションを続けている。検査は、入院中の軽症者の陰性確認のためにも行われるから、実際には、100%陽性だと当局(相談センター・接触者外来)が判断している患者(相談者)のみに検査を行い、そして100%の陽性反応を出していると考えられる。つまり、検査して陽性発表される数というのは、当局にとって市中感染者の「在庫」なのだ。「在庫」を小出しに、計画的に発表しているのである。
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その感染者の「在庫」が飽和状態になっている。飽和状態になり、臨界点を超えるとどうなるかというと、呼吸困難で自宅で倒れて救急車で搬送される患者が急増することになる。当局はそれを予測しているからこそ、緊急事態宣言の発令を急ぎ、そして、何やら面妖な調査手続きを行って、これまでの無検査方針を姑息に撤回しようとしているのである。検査数を増やす思惑なのだ。
検査数を増やし、「在庫」である感染者=軽症者をどんどん宿泊施設に入れようとしている。従来の東京都の感染者発表数は、入院させる病院のベッド数を睨んでの、「在庫」の放出と調節の数だった。だから、ベッド数を懸命に増やしながら、釣り合う分、検査数を増やして感染者数を表に出すというオペレーションをやってきた。
ベッド数ありきの検査数であり、コントロールされた感染者数だった。だが、今や、無検査方針(=市中感染の放置)が裏目に出て、「在庫」が増えすぎ、コントロールが半ば破綻したのである。
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一週間で感染者が倍増してゆく状況では、おそらく、ホテルを宿泊施設にする対策も効を奏さず、重症者を入れる病院ベッド数も集中治療室も不足し、軽症者を療養施設で観察する医師・看護師の数も不足する。結局のところは、NYで大型展示場を病院に改造したように、首都圏もまた、体育館や展示場やドーム型野球場を野戦病院にする方策になるだろう。
患者を一か所に集中させる野戦病院の形態が、最も効率的で合理的なのだ。治療する医師と看護師の数を節約でき、ロジスティックスが簡便で費用が安上がりだから。地域の病院をコロナ患者と切り離すことができるから。さて、結論だが、韓国と日本の対策の違いはどこから来るものだろう。テレビに登場する御用学者や官邸に媚びへつらうしか能のないキャスターやコメンテーターたちは、韓国にはMARS禍の苦い経験と教訓があったからと理由を述べる。だが、本当にそうだろうか。私は違うと思う。もし、韓国が李明博政権や朴槿恵政権であったなら、このような理想的な対策はとれなかっただろう。
韓国がソシアルな理念を持った左派政権だったからこそ、こうした模範的な社会政策を打つことができたのだ。韓国のコロナ対策は、単に検査方式の見事さだけでなく、検査費と治療費を無償にしたり、隔離した患者の家族に十分な給付金を支給したり、国民に対する支援が最初から手厚い点が特徴だった。憲法25条的なコロナ政策が一貫して遂行されていた。
それは、ソシアル主義の政権だからできたことだ。日本の場合は真逆で、コロナ対策に当たってはネオリベラルな自己責任主義が中軸に据わり、無検査による市中感染放置(集団免疫路線)が徹底され、自宅での自前の療養克服(4日間我慢)が国民に強いられた。その結果が、現在の韓国と日本の彼我なのである。
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最近の韓国の感染者の増加数はなだらかな高原状の曲線を描いて推移し、日が経つほどに少しずつ減少する傾向にある。一方、日本の感染者数は3月下旬から増加の一途を辿っていて、特に首都圏と阪神地方での感染蔓延が著しく、政府が緊急事態宣言を発表する事態になった。
韓国で大統領が緊急事態宣言を発したのは、今から1か月半前の2月23日である。大邱で感染爆発が起き、2月22日から23日の間に感染者数が346人から602人に増えたときだ。現在、感染者累計は韓国が1万284人で日本が3654人となっていて、まだ2.8倍の開きがある。死者数は韓国が186人で日本が85人、約2.2倍の差となっている。
が、おそらく、感染者数も死者数も日本が今後急上昇で増えて行き、4月下旬に韓国と並び、4月末には追い越しているだろう。韓国は3月10日前後に感染の速度が止まり、一日に発生する新たな感染者数が減って行った。現在は安定した状態にある。
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韓国では都市封鎖もなく、大きな医療崩壊もなく、短期に収束の山場を過ぎ、現在、平穏な日常下で総選挙が行われている。一方、日本の方は、感染爆発もしてないのに、あっと言う間に医療崩壊の危機と破局を迎えた。
報道によると、台東区の永寿総合病院、新宿区の慶応義塾大学病院、港区の東京慈恵医大病院、大田区の特別養護老人ホーム「たまがわ」で深刻な院内感染を起こしていて、東京都の感染者数の増加の要因となっている。首都圏および全国の地域で、総合病院の院内感染が続発しており、緊急事態宣言が発表されたとしても、その被害が大きくなることは確実視されている。
日本全国の感染者数が、今後1週間で2倍ずつ増えてゆくとすると、4月12日には7000、4月19日には1万4000、4月26日には2万8000となる。NYのここ3週間の驚異的な感染速度と医療崩壊の現状を見ると、日本でこの数字が現実になっても何の不思議でもなく、現時点でリアルな推計だ。
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尾身茂の説明では、日本では「オーバーシュート」の前に医療崩壊が起きるのだと言う。もともと「オーバーシュート」自体が医学用語ではなく、定義不明の怪しい言説細工で、厚労省と専門家会議がその場凌ぎで大衆に撒いていた胡乱な目眩ましのコピーフレーズだった。
だから、「オーバーシュート」が本当に現実になれば、専門家会議そのものの自己否定になる。そのため、責任をゴマカすために子供騙しの詐術を駆使していたわけだが、時間稼ぎに失敗し、国民生活にとって死活問題である医療崩壊が一瞬で目前になった。目前どころか、すでに台東区など都の住民にとっては現在進行形のパニックだ。
もともと、二つの曲線の山を左右に描いた感染対策のモデル図は、感染のピークを後ろにずらし、感染爆発を押さえ、そのことによって医療崩壊を防ぐことを目的とした政策概念だが、米欧諸国と同様、日本でもその目的を得られず、対策に失敗したことになる。明瞭な結果と総括は今から2週間後には明らかになるだろう。
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専門家会議と厚労省の過失責任は免れない。日本政府の失敗の原因は、油断というよりも方針のミスにあったと言える。検査しないという方針を最初に決め、それを貫徹した点だ。堀賢は、3月29日のサンデーモーニングで関口宏に「どうして日本は検査しないのか」と訊かれ、「それは日本のポリシーだから。ポリシーが韓国とは違うから」と答えた。専門家会議・厚労省の方針を率直に語っている。
無検査主義は現在まで日本の対策方針で、例えば、東京都は1日に150件とか200件の検査をして、100人の感染者を出すというオペレーションを続けている。検査は、入院中の軽症者の陰性確認のためにも行われるから、実際には、100%陽性だと当局(相談センター・接触者外来)が判断している患者(相談者)のみに検査を行い、そして100%の陽性反応を出していると考えられる。つまり、検査して陽性発表される数というのは、当局にとって市中感染者の「在庫」なのだ。「在庫」を小出しに、計画的に発表しているのである。
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その感染者の「在庫」が飽和状態になっている。飽和状態になり、臨界点を超えるとどうなるかというと、呼吸困難で自宅で倒れて救急車で搬送される患者が急増することになる。当局はそれを予測しているからこそ、緊急事態宣言の発令を急ぎ、そして、何やら面妖な調査手続きを行って、これまでの無検査方針を姑息に撤回しようとしているのである。検査数を増やす思惑なのだ。
検査数を増やし、「在庫」である感染者=軽症者をどんどん宿泊施設に入れようとしている。従来の東京都の感染者発表数は、入院させる病院のベッド数を睨んでの、「在庫」の放出と調節の数だった。だから、ベッド数を懸命に増やしながら、釣り合う分、検査数を増やして感染者数を表に出すというオペレーションをやってきた。
ベッド数ありきの検査数であり、コントロールされた感染者数だった。だが、今や、無検査方針(=市中感染の放置)が裏目に出て、「在庫」が増えすぎ、コントロールが半ば破綻したのである。
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一週間で感染者が倍増してゆく状況では、おそらく、ホテルを宿泊施設にする対策も効を奏さず、重症者を入れる病院ベッド数も集中治療室も不足し、軽症者を療養施設で観察する医師・看護師の数も不足する。結局のところは、NYで大型展示場を病院に改造したように、首都圏もまた、体育館や展示場やドーム型野球場を野戦病院にする方策になるだろう。
患者を一か所に集中させる野戦病院の形態が、最も効率的で合理的なのだ。治療する医師と看護師の数を節約でき、ロジスティックスが簡便で費用が安上がりだから。地域の病院をコロナ患者と切り離すことができるから。さて、結論だが、韓国と日本の対策の違いはどこから来るものだろう。テレビに登場する御用学者や官邸に媚びへつらうしか能のないキャスターやコメンテーターたちは、韓国にはMARS禍の苦い経験と教訓があったからと理由を述べる。だが、本当にそうだろうか。私は違うと思う。もし、韓国が李明博政権や朴槿恵政権であったなら、このような理想的な対策はとれなかっただろう。
韓国がソシアルな理念を持った左派政権だったからこそ、こうした模範的な社会政策を打つことができたのだ。韓国のコロナ対策は、単に検査方式の見事さだけでなく、検査費と治療費を無償にしたり、隔離した患者の家族に十分な給付金を支給したり、国民に対する支援が最初から手厚い点が特徴だった。憲法25条的なコロナ政策が一貫して遂行されていた。
それは、ソシアル主義の政権だからできたことだ。日本の場合は真逆で、コロナ対策に当たってはネオリベラルな自己責任主義が中軸に据わり、無検査による市中感染放置(集団免疫路線)が徹底され、自宅での自前の療養克服(4日間我慢)が国民に強いられた。その結果が、現在の韓国と日本の彼我なのである。
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