国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

決着へと向かう中印国境紛争

2009年08月07日 | 中国
まず、国境交渉が決着に向かっているということは、落とし所も決まっていると思われる。恐らくそれは中国側とインド側の要求の中間点であり、具体的には中国が支配するアクサイチン地区の西半分をインドに割譲することになるだろう。中国としては、重要な交通路である新蔵公路を確保できればよいと考えているのではないだろうか。ただ、中国側も一枚岩ではなく、インドに譲歩しすぎだと考える者がおり、それが香港紙・明報の否定的な報道に繋がったのだと思われる。 中国側がインドになぜここまで譲歩するのか?その最大の理由は、欧州を中心に世界に広まる中国包囲網だろう。日米欧などの先進国の世論は中国の人権問題やチベット・ウイグル問題に批判的であり、多くの分離独立運動家が欧米で活動している。この包囲網を切り崩すことが中国の政策目標であり、その筆頭として同じ途上国の大国であるインドが選ばれたのだろう。 もう一つ考えられる理由は、中国政府が近未来のチベット・ウイグルの分離独立をやむをえないとして容認している可能性である。どうせ分離独立してしまう地域の為に中国政府が頑張る必要もない、それよりもインドに譲歩して、中国とインドの友好関係を獲得したいと彼らが考えても不思議ではない。 中印国境問題が解決した場合、中国に残る国境問題は南シナ海の南沙諸島と東シナ海の尖閣諸島である。南シナ海では中国は多数の島を実効支配しており、現在ベトナムの漁船を拿捕して問題となっている。また、尖閣諸島はサンフランシスコ条約によって日本帰属が確定しているにも関らず領土要求を繰り返している。インドに対する柔軟姿勢と対照的なこの東シナ海・南シナ海での強硬姿勢は、中国がランドパワーよりもシーパワーを重視していることを示していると思われる。近未来の米国政府破綻で米軍が本土に撤退すると東アジアに巨大な軍事力の空白地帯が生まれることになり、そこを中国が突いてくる可能性が高い。日本としては、米軍の第七艦隊の活動資金を拠出することで軍事力の空白地帯の出現を防ぐことを米国と協議する必要があるだろう。 . . . 本文を読む
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