国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

決着へと向かう中印国境紛争

2009年08月07日 | 中国
●中印国境紛争、来年にも決着か=中国側が大きく譲歩の可能性も―香港紙 レコードチャイナ 2009-08-07

2009年8月4日、香港紙・明報によれば、中国とインドの国境紛争が来年にも決着しそうだ。来年の国交樹立60周年に合わせ、長年の懸案に終止符が打たれる可能性が高いという。

中国の載秉国(ダイ・ビングオ)国務院委員とインドのナラヤナン国家安全保障顧問は7日、国境問題について13回目の話し合いを行う。これに先立ち、両国とも国境付近の兵力を増強させるなど不穏な動きが見られたが、記事は「すべてパフォーマンス」であることは内部事情に詳しい人なら誰でも知っており、実際は早ければ来年には国境画定に関する協定が結ばれるとの見方が強まっていると指摘した。

中印が争う国境線は計1700km、面積は計12万5000平方キロメートルに及ぶ。現在はチベット自治区と接する東部と中部はインドが、新疆ウイグル自治区と接する西部は中国がそれぞれ実効支配している。記事によると、中国側は面積の72%がインド、28%が中国の帰属という線で話し合いを進めているが、インド側の方針は「すべて自分たちのもの」だという。

だが、記事はこれを「中国側にとってかなり不利な条件」と指摘。中国当局が本当にこのまま慌ただしく合意するとは思えない、と疑問を呈している。(翻訳・編集/NN)
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=34140&type=





●中國評論﹕中印劃界勿匆匆 免留子孫罵名 2009-08-05

【明報專訊】本周五,國務委員戴秉國和印度國家安全顧問納拉亞南將在印度舉行兩國邊界問題第13次談判。雖然談判前印度在談判前大舉兵邊境,中方也高調宣傳駐藏裝甲部隊戰力。但熟悉內情者都知,這不過是談判前各自對內宣示的小動作,實情是,兩國邊界談判已有重大進展,有消息說,最快或在明年兩國就會就劃界問題達成協議。但與其要一個令國人失望的協議,倒不如再拖一拖的好。


官方新華社昨日發出中國駐印度大使張炎的專訪,稱中印關係具有全球、戰略意義,當前雙方關係正面臨難得的發展機遇,並指兩國必須以極大的政治智慧妥善處理邊界問題,把握歷史機遇,謀求互利共贏云云。

12萬多平方公里 印方要通吃

中印邊界全長1700公里,分東、中、西三段﹕東段爭議領土9萬平方公里,位於西藏,相當於兩個半台灣,比英國與阿根廷爭奪的福島大6倍多,目前被印度佔領,1987年已成立了「阿魯納恰爾邦」;中段爭議領土2000平方公里,約等於一個深圳,也位於西藏,亦由印度佔領;西段爭議領土3.3萬平方公里,即新疆的阿克賽欽地區,控制在中國手中。

中印自03年開始進行邊界談判,中方的底線是:中方放棄在東段的要求,印方放棄西段的要求,作為補償,印方把中段吃下去的2000平方公里吐出來,歸還中國,按此計算,全部爭議的12.5萬平方公里土地中,印度獲得72%,中國僅得28%。但印度的方針卻是:我的是我的,你的還是我的,12萬多平方公里要通吃。

明年是中印建交60周年,之前亦傳出兩國邊界談判取大進展的消息,因此有可能在明年達成劃界協議。不過,在國力正處於上升之際,當局實不宜匆匆解決劃界問題,特別是在不利的條件下,否則,徒留子孫罵名。
http://blog.ifeng.com/article/3023039.html






●中国がベトナム漁船を拿捕、従業員13人を拘束―西沙諸島 レコードチャイナ 2009-08-05

2009年8月4日、AFP通信は、2日、中国とベトナムがともに領有権を主張する西沙諸島(パラセル諸島)でベトナム漁船1隻が中国に拿捕されたと報じた。乗員13人が拘留されている。4日、環球時報が伝えた。

匿名希望のベトナム官僚によると、ベトナム政府は3日、中国外交部に漁船を解放するよう要求したという。中国は今年6月にも西沙諸島でベトナム漁船を拿捕、従業員12人を拘留した。ベトナムの再三の解放要求にもかかわらず現時点では拘留が続いている。

中国は西沙諸島を含む南海諸島一帯で夏季の禁漁を定めている。今年6月、ベトナム政府は禁漁措置について抗議した。これに対し、中国外交部の秦剛(チン・ガン)報道官は「中国は南海諸島及び付近の海域について明白な主権を有している。夏季禁漁措置も長年続けられてきたもので、正常な行政措置である」と反論した。(翻訳・編集/KT)
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=34091






【私のコメント】
香港紙・明報によると、中印両国の国境紛争が決着に向かっているらしい。1962年に国境を巡って戦火を交えた両国の間の係争地帯は東・中・西の3カ所に分かれている。東地区はブータンの東側にあるアルナーチャル・プラデーシュ州、面積9万平方キロでインドが支配している。西地区はカシミール・新疆ウイグル自治区・チベットに囲まれたアクサイチン、面積3万3千平方キロで中国が支配しており、新疆ウイグル自治区と西蔵自治区を結ぶ国道(新蔵公路)が通っているため、戦略的にも重要な地域である。中部地区はチベットとインドの境界に位置し、面積2千平方キロ、インドが支配している。総面積12万5千平方キロのうち、中国が26.4%を、インドが75.6%を実効支配しているのが現状である。中国側の要求は最も小さい中部地区(1.6%)をよこせという控え目なものであり、インド側の要求はアクサイチン全体(26.4%)をよこせという大規模なものだ。これは香港紙・明報が言うとおり、中国にとってかなり不利な交渉である。この背景は何だろうか?

まず、国境交渉が決着に向かっているということは、落とし所も決まっていると思われる。恐らくそれは中国側とインド側の要求の中間点であり、具体的には中国が支配するアクサイチン地区の西半分をインドに割譲することになるだろう。中国としては、重要な交通路である新蔵公路を確保できればよいと考えているのではないだろうか。ただ、中国側も一枚岩ではなく、インドに譲歩しすぎだと考える者がおり、それが香港紙・明報の否定的な報道に繋がったのだと思われる。

中国側がインドになぜここまで譲歩するのか?その最大の理由は、欧州を中心に世界に広まる中国包囲網だろう。日米欧などの先進国の世論は中国の人権問題やチベット・ウイグル問題に批判的であり、多くの分離独立運動家が欧米で活動している。この包囲網を切り崩すことが中国の政策目標であり、その筆頭として同じ途上国の大国であるインドが選ばれたのだろう。

もう一つ考えられる理由は、中国政府が近未来のチベット・ウイグルの分離独立をやむをえないとして容認している可能性である。どうせ分離独立してしまう地域の為に中国政府が頑張る必要もない、それよりもインドに譲歩して、中国とインドの友好関係を獲得したいと彼らが考えても不思議ではない。

中印国境問題が解決した場合、中国に残る国境問題は南シナ海の南沙諸島等と東シナ海の尖閣諸島である。南シナ海では中国は多数の島を実効支配しており、現在ベトナムの漁船を拿捕して問題となっている。また、尖閣諸島はサンフランシスコ条約によって日本帰属が確定しているにも関らず領土要求を繰り返している。インドに対する柔軟姿勢と対照的なこの東シナ海・南シナ海での強硬姿勢は、中国がランドパワーよりもシーパワーを重視していることを示していると思われる。近未来の米国政府破綻で米軍が本土に撤退すると東アジアに巨大な軍事力の空白地帯が生まれることになり、そこを中国が突いてくる可能性が高い。日本としては、米軍の第七艦隊の活動資金を拠出することで軍事力の空白地帯の出現を防ぐことを米国と協議する必要があるだろう。



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3 コメント

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Unknown (あと)
2009-08-08 02:11:47
 インドに対して、一定の譲歩があるが、チベットとウイグルなどの独立が絶対にあり得ない。
 中国が崩壊した方がいいという気持ちが分かるが、問題は独立また領土問題がどの国にとっても、絶対にふみ入れない領域であることが忘れないでください。
 チベットの独立を認めれば、ウイグル自治区はどうなる、次は内モンゴルはどうする、次は台湾はどうする、ドミノのような崩壊となることが言わなくでも分かる。
 チベットは独立すれば、中国とインドのクッションとなるという発想はあんまりにも天真爛漫だ、ウクライナ、グルジアなどはクッションよりもはや時限爆弾を玄関に置いてる。
 もうひとつは忘れてはいけないのは、現在この地域に大量の漢民族も生活してる。(この移民は非難されるかもしれない)旧ソ連、旧ユーゴの例を見て、独立すれば、民族紛争になるのは絶対に避けられない、強くない中国がアメリカ、日本にとって一番いいだが、混乱の中国は周辺地域にとって、絶対にやばい。
 中国の譲歩はある意味は形上の譲歩で実際は進もうということと考えられる、蔵南(アルナーチャル・プラデーシュ州)地区は地理条件で中国の実効管理に非常に難しい、しかもインドは実質上40年以上で経営してる、中国はこの地区に一部を突破して、その後大量移民で実質上食い込もうと考えてる。
 確かに中国がシーパワーがのどから手が出るほどほしいだが、東南アジア、日本、台湾はアメリカにとって、ヨーロッパに続き、最も重要な地域である。中国は近海の資源また将来がインド洋の進出が考えられるが、太平洋でアメリカとの対抗は絶対に避けたい。朝鮮半島、日本、台湾との関係は中国にとって、現状維持は最適と考えてる。 
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Unknown (面白い発想だが)
2009-08-08 22:37:54
中国国内情勢をまず第一に考えるべきかと思います。

中南海ノ黄昏では面白い記事を出しています。
「解放軍の大改編?」
http://ihasa.seesaa.net/article/124840192.html

また江沢民が上海で入院したという情報も出ています。

これは胡錦涛の権力がかなり盤石となりつつあるということを示しているのではないかと思います。国内を固めつつあるのでインドへの譲歩も可能になったのではないかと思われます。

>中国がランドパワーよりもシーパワーを重視していることを示していると思われる。

そうであるならば、中国のインド洋戦略は、第一に雲南省からミャンマーに抜けるルート。第二にカシュガルからカラコラムハイウエイを経由してパキスタンへ抜けるルートです。パキスタンのインド洋側の港湾は中東をにらむ位置にあり戦略的には重要です。すでに中国海軍の基地を作っている情報もあります。

気になる記事がまた出ています。

「米印関係の新たな局面」
http://ihasa.seesaa.net/article/124404899.html

米国はパキスタンの南北分割を画策していますが、上記のの中国のインド洋戦略も意識してのことでしょう。米国が破綻した後であれば、インドがパキスタン分割に与しないとすればOKです。このための取引かと。
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Unknown (うろこ)
2009-08-12 21:32:39
インドは、現在の混沌とした世界情勢の鍵を握ってるような気がします。日本がインドとの安保協定を結んだ事が、この国境問題解決ムードを作ったとは考えられませんか?
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