昨日、壺坂酒造様の「雪彦山 山廃純米」の話題に触れたので
山廃造りについて整理しておきます。
酒母は大きく分けて、「生酛系」と「速醸系」に分類されます。
「生酛系」は、「生酛」と「山卸廃止酛」があり、
「速醸系」には「速醸酛」と「高温糖化酛」があります。
まず「生酛系」は、低温下において「天然」の硝酸還元菌による亜硝酸の生成、
次に「天然」の乳酸菌の生成を促して生酸することで
有害な細菌類を淘汰して優良な酵母を育てます。
ただし、暖冬で気温が高かったり、その年の米質が悪いなどの外的要因で
硝酸還元菌や乳酸菌の生成が不良な場合など、
有害な細菌類を淘汰できないので、常に腐造の危険が伴います。
一方「速醸系」は、酛たて当初に「人為的」に乳酸菌を添加して、
有害な細菌類の活動を抑え込み、酵母を育てるので
多少気温が高い場合などでも腐造の危険性がかなり低くなることが
「生酛系」との大きな違いです。
次に「生酛」と「山廃(山卸廃止)酛」の相違です。
「生酛造り」の流れは・・・
「酛たて」蒸米と麹と水を半切桶数枚に等量に分けて撹拌する。
「手酛」物量が均一になるよう混ぜる
「山卸」蕪櫂で物量を摺る(品温は5~6度)
「折り込み・酛寄せ」半切り桶2枚分の物量を1枚にする(折り込み)ことを繰り返し最後に物量全部を壺代に一緒にする(酛寄せ)
「打瀬(うたせ)」櫂入れを行い米粒の溶解、糖化を図る
「暖気(だき)操作」暖気樽を操作し品温を上げ、硝酸還元・生酸・酵母の繁殖を促進する
「膨れ」亜硝酸が消失してから酵母を加え、「トロロ泡」が現れる膨れへ導く
「湧きつき」炭酸ガスがブツブツと放散する状態
「湧き付き休み」湧き付き以後、発酵熱により20度内外の品温を維持するので暖気入れを休む
「酛分け」このまま温度を維持すると酒母のボーメ(12~8)が切れすぎ味が少なくなりすぎ、酸とアルコールによって酵母が衰弱してしまうのを防ぐため、酒母を半切り桶2,3枚に分けて冷やす
「枯らし期間」酛分けから酒母の使用までの期間を枯らし期間といい、この間に香味の調熟作用が進行する
「山卸廃止酛」は・・・
単純に「山卸し」という酛を摺る行為を省略したものです。
「生酛」では品温5,6度の早い時期から櫂入れをたくさん行うので、米のでんぷんがアルファ化(糖化溶解)し、さらにベータ化(分子構造の小さいぶどう糖化)するので、デキストリン(糊精)は少ない。
それゆえ、暖気操作も「温湯浮かせ暖気」を用い、「乳酸菌の生酸(適温30~40度)」「硝酸還元菌の還元(適温30~35度)」「酵母の増殖(適温24~25度)」を促進するよう暖気操作を行う。
一方、櫂入れの少ない「山廃酛」の場合、蒸米のでんぷんを糖化するといっても、分子構造の大きいデキストリン(糊精)のままなので、「酵素糖化作用(適温50~55度)」を進める為に、最初からがっちりと「熱湯留め暖気」を操作する必要があるのです。
山廃づくりで、生酛づくりと同じように「濃醇でもキレのある味わい」を作り出すには「暖気樽操作」が根本的に違ってくることを知っておかねばなりません。
(以上、上原浩先生の「いざ、純米酒」を参考にしました。)
ということで、このような基本ができていない「生酛系の日本酒」は
糊味だらけのごわごわした味の多いお酒となってしまいます。
このような造りに失敗した「生酛づくり」「山廃づくり」の
味の多いお酒を、ありがたがり、「旨い!」といって勘違いする飲み手も大いに
反省せねばなりません。
今、わたしが取り組んでいるのは、本物の基本に忠実な造りをした日本酒を
唎き比べることができる「唎き酒」の能力です。
これがあって初めてお客様に「本物の日本酒」を薦めることができることを
遅まきながら、理解しました。
山廃造りについて整理しておきます。
酒母は大きく分けて、「生酛系」と「速醸系」に分類されます。
「生酛系」は、「生酛」と「山卸廃止酛」があり、
「速醸系」には「速醸酛」と「高温糖化酛」があります。
まず「生酛系」は、低温下において「天然」の硝酸還元菌による亜硝酸の生成、
次に「天然」の乳酸菌の生成を促して生酸することで
有害な細菌類を淘汰して優良な酵母を育てます。
ただし、暖冬で気温が高かったり、その年の米質が悪いなどの外的要因で
硝酸還元菌や乳酸菌の生成が不良な場合など、
有害な細菌類を淘汰できないので、常に腐造の危険が伴います。
一方「速醸系」は、酛たて当初に「人為的」に乳酸菌を添加して、
有害な細菌類の活動を抑え込み、酵母を育てるので
多少気温が高い場合などでも腐造の危険性がかなり低くなることが
「生酛系」との大きな違いです。
次に「生酛」と「山廃(山卸廃止)酛」の相違です。
「生酛造り」の流れは・・・
「酛たて」蒸米と麹と水を半切桶数枚に等量に分けて撹拌する。
「手酛」物量が均一になるよう混ぜる
「山卸」蕪櫂で物量を摺る(品温は5~6度)
「折り込み・酛寄せ」半切り桶2枚分の物量を1枚にする(折り込み)ことを繰り返し最後に物量全部を壺代に一緒にする(酛寄せ)
「打瀬(うたせ)」櫂入れを行い米粒の溶解、糖化を図る
「暖気(だき)操作」暖気樽を操作し品温を上げ、硝酸還元・生酸・酵母の繁殖を促進する
「膨れ」亜硝酸が消失してから酵母を加え、「トロロ泡」が現れる膨れへ導く
「湧きつき」炭酸ガスがブツブツと放散する状態
「湧き付き休み」湧き付き以後、発酵熱により20度内外の品温を維持するので暖気入れを休む
「酛分け」このまま温度を維持すると酒母のボーメ(12~8)が切れすぎ味が少なくなりすぎ、酸とアルコールによって酵母が衰弱してしまうのを防ぐため、酒母を半切り桶2,3枚に分けて冷やす
「枯らし期間」酛分けから酒母の使用までの期間を枯らし期間といい、この間に香味の調熟作用が進行する
「山卸廃止酛」は・・・
単純に「山卸し」という酛を摺る行為を省略したものです。
「生酛」では品温5,6度の早い時期から櫂入れをたくさん行うので、米のでんぷんがアルファ化(糖化溶解)し、さらにベータ化(分子構造の小さいぶどう糖化)するので、デキストリン(糊精)は少ない。
それゆえ、暖気操作も「温湯浮かせ暖気」を用い、「乳酸菌の生酸(適温30~40度)」「硝酸還元菌の還元(適温30~35度)」「酵母の増殖(適温24~25度)」を促進するよう暖気操作を行う。
一方、櫂入れの少ない「山廃酛」の場合、蒸米のでんぷんを糖化するといっても、分子構造の大きいデキストリン(糊精)のままなので、「酵素糖化作用(適温50~55度)」を進める為に、最初からがっちりと「熱湯留め暖気」を操作する必要があるのです。
山廃づくりで、生酛づくりと同じように「濃醇でもキレのある味わい」を作り出すには「暖気樽操作」が根本的に違ってくることを知っておかねばなりません。
(以上、上原浩先生の「いざ、純米酒」を参考にしました。)
ということで、このような基本ができていない「生酛系の日本酒」は
糊味だらけのごわごわした味の多いお酒となってしまいます。
このような造りに失敗した「生酛づくり」「山廃づくり」の
味の多いお酒を、ありがたがり、「旨い!」といって勘違いする飲み手も大いに
反省せねばなりません。
今、わたしが取り組んでいるのは、本物の基本に忠実な造りをした日本酒を
唎き比べることができる「唎き酒」の能力です。
これがあって初めてお客様に「本物の日本酒」を薦めることができることを
遅まきながら、理解しました。
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