時に抱かれた大古酒
「龍力 純米古酒1999BY」
純米燗金太郎です。
時に抱かれて、20有余年。
いくつもの年輪を重ねて
凝縮したその旨味は、語り尽くせぬ奥深さがある。
「龍力 純米古酒1999BY」
1999年(H11BY)醸造の熟成古酒です。熟成古酒特有の黒糖や栃餅、ナッツにも例えられる熟成香がバリバリにあります。かなり強いので、この香りが生理的に嫌いなかたは耐えられないと思いますが、私には食欲をそそる良い香りです(笑) それに呼応する旨味の凝縮感、集積感は半端じゃなく、濃い昆布だしの様です。酸はそれほどに立たず、旨味が前面にでてきます。
燗につけると、酒質が一層充実し、安心感がありますね。常温では、旨味に押されて隠れていた酸も一気に立ってキレも俄然よくなります。古酒を語るなら一度は呑んでおきたい熟成純米酒です。残念ながらサイズは、4合瓶(720ml)しか発売されていません。是非、この燗酒を、濃い味わいの中華や肉、ジビエ料理、チーズ料理などに合わせて、そのマリアージュをお愉しみください。
*日本酒の熟成の香りの考察
「老香(ひねか)」「生ひね香」「熟成香」とは?
私が得意でない日本酒の香りに「生ヒネ香」というものがある。
「生ヒネ香」とは、火入れしていない生酒につきやすい独特の甘い香りである。
この香りを好きな人もいれば、私の様に生理的に受け付けない人もいる。
大抵の生酒を零度以上で保存していると、2,3日ではっきりと「生ヒネ香」が顔をもたげてくる。
この「生ヒネ香」は、
「イソバレルアルデヒド」や「ポリスルフィド」が原因物質であるので、
「つわり香」「甘臭」「漬けもの臭」「焦げ臭」
などが複雑にいりまじった香りであり、ナッツのような香ばしさや、甘い香りを伴う。
この生ヒネ香がついてしまった生酒は、冷たいときには、この香りがマスキングされて呑むことができても、燗にすると極端に浮き上がってくるので、興ざめしてしまう。
この「生ヒネ香」とは別に、
火入れした清酒が劣化した時の臭いの「老香(ひねか)」も、
成分的には「生ヒネ香」同様に
「イソバレルアルデヒド」や「ポリスルフィド」が起因する。
生ヒネ香との相違は、「甘臭」は余り伴わず、
「漬けもの臭」様の香りが強いかな、と思う。
ただ、これは私の感性であって、人によって、この香りをかいで受けるイメージは違うはずだ。
また古酒になると発する熟成の香り「熟成香」もある。
いわゆる「黒糖」「ナッツ」「醤油」「みそ」などにたとえられる香りで
「紹興酒」などについている香りや、梅酒につく香りなどを想像していただければ、
分かりやすいかもしれない。
この「熟成香」を「老香(ひねか)」と勘違いされるかたが多い。
ただ、この二つの香りを完全に分けることも難しいのが現実だ。
嗅いだときの感じ方に個人差があるから仕方がない事だ。
要は、「美味しそうな、旨そうな」香りが「熟成香」であり、
「生理的に嫌な臭い、不味そうな臭い」を「老香」と分類するしかないのだろう。
このなかで「生ヒネ香」は、生酒なら、どの酒にもつくかといえば、そうでもないのだ。
「お米の品種の違い」、「お米を生産する農家の違い」「お米の育つ立地の違い」
などの要因により
「この農家が栽培した米のお酒は、ほとんど生ヒネ香がつかない」
という経験則がある蔵元さんもいらっしゃる。
また、「澱(おり)が絡まないお酒」は、「澱が絡んだお酒」よりも生ヒネ香が出やすいんじゃないか?・・と私は感じる。
澱成分(にごり酒の成分のこと)が、生ヒネ香を吸着して生ヒネ香をマスキングする効果があるのかもしれない。
もちろん醸造過程での杜氏さんのスキルによっても生ひね香の出現に違いが出てくるであろう。
このように「香り」ひとつとっても純米酒は奥が深い。
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