珊瑚の時々お絵かき日記

夫と二人暮らし、コロナ自粛するうちに気がついたら中国ドラマのファンになっていました。

指輪はどこへ?2

2011年09月12日 | 日々のこと

                           

指輪を失くしたM子さん、帰りのバスでは、もう泣かんばかり。

家に戻ると、すぐにバス会社にも電話を入れた。

やはり、無かった。

「私があの指輪を拾ったら、きっと届けない。だからもう、私の手には戻らない。縁がなかったのかしら、私はこんなに愛しているのに」

まるで、恋人に捨てられた乙女のようだ。

殆ど諦めるしかないという境地に達してはいたけれど、ショックが大きくて、電話を置くと、へなへなと座り込んで、しばらくうずくまっていた。

そして、

「ああ、手を洗わなくっちゃ・・・」と洗面所へ。

すると、洗面所の鏡の前に何か光るものが。

何と、失くした指輪が、どこからか湧き出たように、棚にのっているのだ。

ああ、あったー!と喜びが一挙に湧き上がり、涙がにじむほど感動したそうだ。

「でも、なぜ?わけがわからない」

と彼女は言う。

「一人で歩いて帰ってきたかと思ったけど、そんな事あるわけないしね」

わかっている。自分が始めからしていかなかったのだ。

出かける前に、トイレに行ったから、そのときはずしてそこに置いたのに違いない。

それでも、

「私、バスの中で、こうやって指輪を眺めている自分の姿が目に浮かぶのよね。触ったり、ちょっと回してみたりした感触が、指に残ってる。それなのに、どういうことなの?」

どうしても、納得いかないのだそうだ。

といっても、彼女が指輪をつけずに出かけたことは、誰が見ても明らかだ。 

「私、呆けたのかも・・・」

と、不安げに言う。

「そんなことないよ~、そういうこと、時にはあるって~」

と言って慰めながら、私なんかしょっちゅうよ~とため息をついた。

ああしたつもり、こうしたつもりが、ほんとうにつもりだけなのだ。

しっかり者のM子さんにしてそうなら、私なんかどうなるの?

「 やっぱり年よね~」

結局話はそこへ行ってしまう。

二人でひとしきりため息をついたあとで、

「でも、あってほんとうに良かったね~」

「ほんとうよ~、なかったらスゴイショックだったわ~」

「結果的に、いい刺激になったんじゃない?」

「そうね、細胞が活性化したかも」

 「それって、私達を支えているのは物欲ってことかしらね~」

「そうかもね」

そして、

「ハッハッハッハ」

と、声をそろえて笑ったのだった。