今月19日、母が旅立った。
最後の10日間程は、肺の機能が低下していたのだろう、
息遣いが荒く苦しげで、見ているのが辛く、早く楽になってほしかった。
それなのに、母の呼吸が止まりかかると、
「母さん、息して!もう一度頑張って!」と必死に呼びかけてしまう。
それが聞こえるのだろうか、そのたび、母は苦しげに息をする。
母を苦しめているだけなのかも知れないのに、呼びかけずにはいられない。
それを繰り返しながら、脈の間隔がだんだん長くなっていく。
そして、遂に消えてしまった。
偶然なのか、父のお墓で、「早く母さんを迎えに来て」と祈った翌々日だった。
きっと迎えに来た父に手を取られて、真っ直ぐ前を向いて行ったと思う。
弟が涙ぐみながらぽつんと言った。
「今日は俺の誕生日だ」
本当に、そう言われればそうだ。
父は、この日を選んで迎えに来たのだろうか。
何だかそんな気がする。
葬儀は家族葬で行った。
何もいらないから、お花を多めにして下さいとお願いした。
弟と私の家族、ごく近しい親戚、母のお友達、それだけのつもりだったけれど、
弟の職場のお友達が何人も来てくださり、思いのほかにぎやかになった。
何よりも、弟が職場で皆さんと良い関係を築いていることが よくわかって
母も安心したことと思う。
出棺の時は、タバコをひと箱、おやつにピザを一切れ、りんご、みかん、
父へのお土産にアンパンを入れた。
後で思いだすと、まるで遠足のようで、少し可笑しい。
葬儀屋さんの方が、
「美人さんだったでしょう?こんな綺麗なお顔のご遺体は久しぶりですよ」
と言ってくださった。
その言葉は、母に聞こえただろうか。
子供や孫に見守られ、たくさんの花に飾られて、母は旅立った。
とてもささやかな葬儀だったけれど、私たちは満足だった。