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9月11日公開 映画「ミッドウェイ」試写会 その3

2020-07-20 | 歴史

試写会で公開前に鑑賞させていただいた映画、
「ミッドウェイ」の解説、三日目になりました。

ところで、冒頭画像はパンフレットの1ページですが、この中に
何か違和感のある部分を見つけられた人はいませんか?

ヒントはSBDドーントレスの米陸軍航空隊のマークです。
ほら、何か違いますよね?

そう、飛行機がつけている国籍機マークの赤い中央の円がないのです。

実際にも米陸軍航空隊のマークから1942年5月からは赤丸がなくなったので、
ミッドウェイ海戦の時には確かにこれでもいいのですが、
これがこの映画では真珠湾攻撃やドゥーリトル空襲のB-25まで
同じように赤丸抜きのペイントになっていました。

実際に赤丸が消されたのは日本の航空機に誤認されるのを防ぐためですが、
映画の場合は、製作の煩雑さを防ぐため?ミッドウェイの仕様を
他のシーンにも同じように使ってしまったものと思われます。

 

さて、前回、unknownさんがお気づきになった「波の切れ方」が
いかにも関係者の視点だと指摘したのですが、ファッション関係に目敏い?
わたしとしては、アメリカ軍人の軍服についてぜひ語っておきたいことがあります。

なんと・・・シワだらけなのです!

ハワイにいるニミッツやレイトンクラスの軍人ですら、襟もシャツもシワだらけ。
はて、これはリアリティというやつなのか、と考えていたのですが、
現在残されているアメリカ軍人のどの写真を見てもこんな軍服を着ている人はいません。

自衛隊ならたちまち「プレス不備!」の一言で上陸禁止です。
ニミッツがロシュフォードのスリッパを非難していましたが、
その前に自分の服のシワをなんとかしろ、と突っ込んでしまいました。

この頃もアメリカでは普通にスターチ(糊)を使ってプレスしていたはずなのに、
まさか当作品の衣装部はそのことを知らなかったのでしょうか。

本作の日本軍人の詰襟の軍服はそんなことはなかっただけにすげー謎でした。

違和感ついでに、わたしは映画で語られる部分でのもっとも重要な、

「日本の最終目的」

が、アメリカ本土への侵攻であるように語られていたのを敏感に聞き取りましたよ。

今では誰でも知っているように、(そして劇中山本五十六もいうように)
日本は最初から長期戦になればアメリカには勝てないと知った上で開戦し、
決定的な戦いにアメリカを引き込んでおいて、6ヶ月以内に終戦交渉を行い、
南方の資源を維持することが目的だったのです。

つまり決定的にアメリカ艦隊、空母を含む攻撃力を脅かすことが必要で、
ミッドウェイはそのために計画された戦いだったとされています。

今更日本の目的はアメリカ侵略だったなんて誰が本気にするんだ、ってなもんですが、
要するに日本の開戦目的が自衛であったという史実を曖昧にしたい、
という「微調整」する力が働いているとわたしは見ましたね。

こういう題材になると、どこからか現れて日本の悪魔化を図る勢力が
作品に介入してくるというのはこの作品に限ったことではありませんが、
映画作品を純粋に作品として評価する評論家たちの多くがこの作品を

「褒められたものではない脚本」

と言い切ったその根本には、これがあるのだとわたしは考えています。

まず、大前提として、この映画は「ミッドウェイ」といいながら
真珠湾攻撃とドゥーリトル空襲に時間を割きすぎています。
ミッドウェイ海戦だけでも十分に映画では語り切れないくらいの
さまざまな駆け引きやドラマがあるはずなのに。

それでは、これらのシーンにはどういう意図があったのでしょうか。

 

まず、真珠湾攻撃。

前半のこの映画のCG映像でクリエイトされた日本軍攻撃のシーンは、
今までどんな写真でも知りようのなかった、そのとき軍艦にいた人々だけが
見たであろう地獄、爆撃によって巻き起こされた業火の中の阿鼻叫喚が
トラウマレベルで悲惨に、そしてリアリティをもって執拗に描かれます。

その中で主人公のパイロット、ディック・ベストの友人であり
兵学校の同級生であった「アリゾナ」のロイ・ピアースが亡くなります。
(遺体がドックタグをしておらず、クラスリングで見分けていたのは謎)
このことをもってベストは敵に対する憎しみを募らせる、つまり映画は

「真珠湾攻撃への復讐心」

をアメリカ軍人たちの戦いの正当性、モチベーションとして据えたかったのでしょう。

 

それからドゥーリトル隊による東京空襲です。
本作ではジミー・ドゥーリトルに「ダークナイト」のハービー・デント、
「ツーフェイス」でお馴染みのアーロン・エッカートを起用。

なんかわかりませんがものすごく気合の入ったキャスティングです。

 

76年版は「東京上空30秒前」から流用した(笑)ドゥーリトル隊の
発艦シーンが現れ、最初に山本五十六がその報告を受けるところから
映画が始まりますが、この映画では延々とこの作戦が描写されます。

わたしがシリーズ初回に

「ミッドウェイにこんなシーン必要ですか?」

と書いたところの宮城の避難シーンですが、とりあえず
クレジットをその後確かめると、「Hirohito」として、
無名の日本人俳優が演じていたことがわかりました。(なんかむかつく)

 

ところで本作のパンフレットには、見開きにページを割いて
「ドゥーリトル空襲 ミッドウェイと日中戦争」というコラムがあります。

それを書いた人の名前を見ただけでわたしは「あ・・・察し」てしまったのですが、
この笠原19司(仮名)なる学者、「その筋」には名高い方じゃないですか。

どんな学者か端的にその業績?を書くと、

日中戦争のとき当時毎日新聞記者がでっちあげた将校の「百人斬り競争」を
学者の立場で?見てもいないのに肯定し断罪している人であり、
日本人でありながら南京師範大学南京大虐殺研究センター客員教授として
南京大虐殺を
中国政府の立場からプロパガンダしている人

いやー、マッカッカじゃないですかー。あ、字のことですけどね。
なんだってこんな人にわざわざ解説させたかなー(棒)

案の定この解説、出だしからこんな具合です。

(このシーンは)ドゥーリトル隊による東京空襲が、日本の
天皇制つまり「国体」に恐怖を与えた歴史事実を 
見事に象徴した場面である。

「天皇制」という左翼ワードもさることながら、

天皇制つまり「国体」(カッコ付き)

と軽く言ってしまうこの香ばしさ。


このほかも「拙著」を紹介しながらの解説はツッコミどころ満載。
(ここではやりませんが)もしお嫌でなければぜひ劇場では
パンフレットを購入し、あくまでも自己責任で目を通していただきたいと思います。

さて、ドゥーリトル機のメンバーが中国本土でパラシュート降下し、
中国軍ゲリラに捕まるも英語の話せる教師により日本を攻撃したことがわかって
一同に大歓迎される、(その後重慶までいって蒋介石と宋美齢に歓待される)
というシーンについてこの学者さんは嬉々として書いていますが、
この部分こそ、今回中国資本が介入してねじ込まれたのは明白です。

最近明らかになった事実で、ドゥーリトルらが大陸上陸後国民党の兵士や
村人に救出されたのは事実だそうですが、村の英語の話せる教師
(なんかこの人のキャラ、猛烈にウザくありませんでした?)は
架空のキャラクターであり、真珠湾で死ぬベストの親友ロイも架空の人物です。

ツッコミどころの多いシーケンスに限ってキャラクターが実物ではなく
わざわざ新たに創造されているというところがポイントかな。

そして、わたしにとっての今回の最大のツッコミどころは、
日本軍の中国本土攻撃によって一般人(女性と子供の遺体が積み重なっているシーンあり)
が殺害された様子を見てショックを受けるドゥーリトル。

何度でも書きますが、アメリカ側の媒体では決して触れないけれど、
ドゥーリトル空襲で亡くなった日本人は少人数とはいえ軍人ではなく民間人でした。
だいたい飛行機に手を振った子供に銃撃を浴びせるなんて、どこの鬼畜でしょうか。

然るにドゥーリトル空襲のシーンでは天皇陛下の避難と空中からの
爆撃投下シーンだけ描き、中国本土爆撃では女子供の遺骸をアップにする。
どこが公平に描かれているのか、って話ですよ。
そもそもこれ、ミッドウェイにどう関係あるの?
勿論何事も因果関係でつながっていくので関係ないことはないかもしれないけど、
「ミッドウェイ」という本筋から見るとほぼ「傍論」ですよね。


とプンスカ怒ってばかりもなんなので、この辺でお待ちかね、
わたしと全く違う視点で映画をごらんになっていた
unknownさんの感想を取り上げさせていただこうと思います。

ミッドウェイ海戦は、日本のぼろ負けですが、
アメリカ側に先にミッドウェイ攻撃の意図を読まれていたことや
兵装転換に時間を要したことが日本の敗因であるとは
(個人的には)思っていません。

日米共、ほぼ同じの機数。

搭乗員の練度で言うと、日本が有利だったところ、
アメリカ側が先に日本の機動部隊を発見したことが
アメリカの勝因
(アメリカの勝利は偶然によるところが大きい)
だと思っていますが、
その観点で見ると、納得の出来る内容

(アメリカがギリギリ勝てたことがわかる)だったと思います。


76年版「ミッドウェイ」でも、帰投後にロシュフォードとニミッツが
その「ギリギリ勝てた」ことについて亡くなったガース大佐(架空の人物)
の口を借りる形で語り合って終わります。

そのときも書きましたが、日本側の「ミッドウェイ」についての記述は
とにかく南雲中将の采配と油断に全ての敗因を被せて悪様に罵るが如きなのに対し、
アメリカ側は自分たちの勝利を必然的なものとは決して思っておらず、
日本軍がこういう時によく言うところの「天佑神助による勝利」と捉えているのです。

今回の「ミッドウェイ」でも、海戦前、相手より少ない空母で不利な戦いに挑む
航空隊のメンバーの様子をはじめ、その「ギリギリ感」がよく出ていたと。


また、真珠湾攻撃が始まった時、ハルゼーが索敵を命じるシーンについても
ツッコミというか疑問をいただきました。
これは、まさに真珠湾に向かっていたときに真珠湾が起こってしまい、
ハズバンド・キンメルがアナポリス同期だったハルゼーに

”commander of all the ships at sea”

を任命したときですよね。

ハワイが奇襲を受けた際、航海中だったハルゼーの空母部隊が、
日本の機動部隊の位置を通信の方向探知で、
ハワイの北側か南側かと推測する場面ですが、

日本からハワイに大圏コース(最短距離)で来れば、
ハワイの北側に来ますが、
ハルゼーは南側の捜索を命じました。

史実でどうだったのかわかりませんが、
北か南のどちらかに賭けるとしたら、普通は北に行くと思います。

南に行くにはハワイ諸島を横断せねばならないので、
アメリカ側に見付かる可能性が増します。
奇襲が成功しているのだから、普通だったら、
北側にいると考えると思うんですよね。


映画制作スタッフはそういったディティールは全て資料通りである、
と豪語?しているのですが、どうもご指摘が正しかったのではないかなと思います。

話題が出たので余談になりますが書いておくと、そもそもハルゼーの艦隊が
なんの任務に出ていたかというと、アメリカ側が

「日米交渉が打ち切られたので一週間以内に何らかの軍事行動に出る」

という日本の外交暗号を傍受したことから、これに対応するために
ウェーク島に航空機を輸送していたのです。
で、本人は”何かあったら”
そのときは「フリーハンド」にするから
(日本と戦っても構わない)と
キンメルに言われて大喜びしていたらしい。

ところが、最悪の形で戦争が始まってしまってハルゼー怒り心頭(笑)

キンメルは、ハルゼーに洋上の全艦船の指揮権を任命し、さらに

日本艦隊の予想避退針路は北西である

との情報をハルゼーに通達しています。

通達を聞く前にハルゼーが情報もなく捜索を命じるはずはないし、

このシーンでそう命じていたのだとしたら(わたしは気づきませんでした)
どうしてそのようにしたのか謎ですね。

 

そうそう、一シーンだけですが、この映画にはそのときミッドウェイ島に
映画を撮りにきていた映画監督のジョン・フォードが登場します。

皆が危ないから避難しろというのにいうことを聞かない爺さんで、
実際にも日本軍の攻撃目標になりやすい発電所の上に立っていたため、
爆弾の破片を足に受けて名誉の負傷をしています。

フォードはもともと海軍贔屓で、開戦と同時に海軍に入隊を志願し、
「表向きは」戦略諜報局の野戦撮影班として映画を撮っていました。

あやしい・・

負傷こそしましたが、頑張った甲斐あってこのときの
The Battle of Midwayはアカデミー短編ドキュメンタリー映画賞を受賞しています。
 
The Battle of Midway: The John Ford Original
 
さっき「表向きは」と書きましたが、実はジョン・フォード、
映画監督とは表向きの姿、実態は
米軍戦略諜報局のエージェントだったそうです。
(といわれてもあまり驚きませんけど)


2008年、米国立公文書館が公開した資料によって明らかになりました。
 
 
続く。