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映画「太平洋機動作戦」〜”Take Her Down! "

2021-12-04 | 映画
ジョン・ウェイン主演の戦争映画、「太平洋機動作戦」2日目です。

ここは真珠湾の海軍病院。

看護師でギフォードの元妻、メアリー・スチュアート中尉は、
上司のスティール中佐から「サンダー」を迎えに行くよう命令されました。

ペリー艦長が友人のギフォードのために気を利かせて
元妻に会わせてやろうという企み、艦長特権で 指名してきたのです。

なんのためにペリーがこんなことを画策するのかわかりませんが、
おそらく、彼らが元鞘に収まった方がいいと考えたのでしょう。

その理由は後で明らかになります。

しかし、MSはそれをやんわりと断ります。

「会うならわたしのホームグラウンドがいいんです」

亀の甲より年の功、すぐに女心を察したスティール中佐ですが、
これは一応上官からの命令でもあります。

「でも向こうからの名指しなのでね〜。
・・・あーそうそう、頭痛の具合はどう?」

「酷いです」(きっぱり)

「それでは許可します」(`・ω・´)

メアリーを演じているのはパトリシア・ニール

皆さん当ブログでこの名前と顔に見覚えがありませんか?
この14年後、この二人は「危険な道」(In harm's way)で共演しました。

ニールはまだこのとき24歳でウェインと19歳の年齢差があったため、
ウェインは彼女の起用に反対し、そのせいもあったのでしょう。
彼らは結局撮影が終わるまで打ち解けることはありませんでした。

ニールの方もウェインに全く魅力を感じなかったばかりか、
(それでもキスしたり抱擁したりしなければならない俳優って大変)
彼のゲイの広報担当に酷い扱いを受けた、などと告白しています。

今回この「ゲイの広報担当」と言う言葉に「ん?」と思い、
英語のいわゆる4channelのようなところまで読んでみたら、
ジョン・ウェインにはかなり濃厚な「ゲイ疑惑」があるんだそうです。

彼はアメリカの男らしいヒーローを演じ、大衆には愛されましたが、
ラブシーンがことごとく見るに耐えないのはなぜなのか、ということは
わたしがかねがね気になっていたことの一つです。

まあ、なんでもありのハリウッドなので、よしんばそれが本当だったとしても
あまり驚きませんし、ウェインの女性に対する一種隔壁を感じさせる演技も、
もしそうなら納得というか合点がいくというものです。

パールハーバーへの帰還シーンはどの潜水艦のものか、実写映像です。

着いた途端セットになります。
真珠湾の潜水艦隊司令が乗艦してきて乗員を労います。

コワモテの先任伍長は、子供がいなくなって大慌て。
なんとこんなところから(ボイラーみたいな)出てきて皆大笑い。

艦長以下幹部は基地司令と魚雷の問題について話し合います。
それは磁気式信管に問題があるので、着発信管に戻すつもりだ、と司令。

艦を降りる尼僧たちにお別れの挨拶。

「しかし変だな・・」

デュークに会わせるため、艦長命令で指名した看護師のメアリーはどこ?

あ、いたいた、と後ろからトントンしたら別人でした。

「すっすみません人違いで」

艦長の企みなど夢にも知らないデュークは、
一人で新生児室の「ブッチ」に面会に来ていました。

さっそく怖い婦長少佐が飛んできて、やれ赤ん坊を泣かすなの、
マスクしろのとやいやい怒られてしまいます。

「あなた父親なの?」
「いや僕はあの子をジャングルから連れてかえ」
「ここはジャングルじゃありません!ご機嫌よう」
「ブッチに会いに来ただけなのに・・・」(独り言)

「・・・ブッチですって?」

「・・・そう呼んでる・・君は嫌がるかもしれんが」

「いい名前ね・・・あの子と同じだわ」

ん?

んんんんん〜〜〜?

この二人、離婚したんですよね?
どうしてこうなる!


潜水艦「サンダーフィッシュ」の副長、デューク・ギフォード少佐と、
看護師メアリー・スチュアート中尉はかつて夫婦でした。


二人の最初の息子「ブッチ」が生まれてすぐ亡くなった時、
夫の激務で一緒にいられなかったことが齟齬を生み、二人は離婚に至ります。


しかし互いへの愛情がなくなって離婚したわけではないので、
今回再会するなりつい熱い抱擁をしてしまったようです。

この時の二人の会話によると、メアリースチュアート、MSは
Penance、つまり懺悔の意味もあって、離婚後、
看護師の資格を取り海軍に奉職しました。

「ブッチ」とあだ名をつけた赤ちゃん。
彼女との4年ぶりの再会。
これは運命すぎる!

デュークは勢いついでにその場で復縁を切り出し、
その夜のパーティーに誘いますが、彼女の口からショックなことを聞きます。

「今夜はボブ・ペリーとデートなの」
「・・・艦長の弟か?小さい時よく頭をポンポンしてやったもんだ」


相手が若造だと知ってすっかり安心したデューク、
ダメ押しで押し倒そうとしたら師長に見つかってしまいます。



「ここをどこだと・・・」
その瞬間、MSが

「中佐、見てください!これがわたしの”頭痛の種”なんです」


あのガキなら勝てる、と余裕こいたものの、そこは慎重な潜水艦乗り。
兄であるところの艦長ペリーに、
君には小さい弟がいたけどどうしている、と探りを入れると、

「もう一人前の男になっておまけにイケメン、女の子にMMさ」


(そ、そうなの?)



そこにMSと一緒にご本人ボブ・ペリーが登場。
こりゃ確かにイケメンだし明らかにデュークよりお似合い。
階級も中尉同士で同じだし、おまけに潜水艦乗りの天敵、パイロットだと?

うーむ、これはますます許せん。

しかも、「サンダー」が魚雷の不具合で逃した艦隊は、
僕の航空隊が片付けてしまいましたよ〜とかいうではありませんか。

「ピッグボート・ボーイ(潜水艦乗り)にはこんなことできないっすよね。ふふっ」


カチンときたデューク、MSと踊ろうとするボブに割り込み、
僕と踊ろう、いや拙者が、と女の取り合いが始まりました。
するとMSは二人の間からするりと抜け出して、


「わたしはポップと踊りたいわ」

POP=「親父」「お父さん」だけあって避難所扱いなわけですな。
しかしこの女、どちらも選べないというよりどちらにもいい顔をしたいのね。
そんな狡い女心もお見通し、亀の甲より年の功(アゲイン)。
ポップは彼女にズバッと釘を挿します。

「自分の本当の気持ちをごまかすために弟を利用するのは感心しないな」(正論)



こちら野郎二人のテーブルでは、もうガキじゃないボブがデュークに、

「僕は確かに昔文武両道でスターだったあなたに憧れました。
でも、今ではあなたが彼女を不幸にしたのが許せない。
僕は必ず彼女と結婚します!

と宣戦布告します。
そして、もうプロポーズもしたもんね、という言葉を聞くなり
デュークは席を蹴立てて立ち、


ポップの腕からMSをもぎ取るように奪い、

「奴にプロポーズされたのか?」

幼稚で子供っぽく性急な元夫に呆れた風で、MSは、
今来たばかりだというのにボブを連れてさっさと帰ってしまいます。



女が自分と張り合っていた元夫を振り払って自分に家まで送らせたら、
男なら誰だってこれはオレに脈ありだと思いますよね。

なのにMSはボブのキスを今更拒否するじゃありませんの。

「彼のことどう思ってるの?」
「別れた夫と会えば色々と考えてしまうのよ」


なんとその会話をこっそり物陰で聞いているデューク。
ボブが去るなり飛び出して、



「あいつ(kid)にプロポーズされたのか!」
「海軍と全く関係のないところで暮らそうって言われたのよ」
「あんな子供とキスして感じるのか(zing)!」←おっさん・・

子供子供ってあんたね。
自分が勝ってるところが歳しかないって言ってるのと同じだよねこれ。


彼がいつも君のことを考えていた、もう一度チャンスをくれ、
と熱心に口説いていると、またしても「仕事」が彼の邪魔をしました。


彼の乗員たちが門限を過ぎて外出許可区域外で女の子を読んで馬鹿騒ぎをし、
住民の器物を破損して警衛を殴ったカドで憲兵隊本部に連行されたのでした。



しかも全く反省の色がなく、収監中の檻で歌ったり踊ったり。



なんとか穏便に、と懇願するデュークに憲兵隊中佐は、

「もう我慢できん!毎日うちの部下がボーリングのピンみたいに殴られてるんだ。
『サンダー』だけじゃない。
『タング』『シルバーサイド』『ワフー』
『グラウラー』の連中にな」

はいずれも実在の潜水艦です。

このとき日本語字幕が「グラウラー」だけを翻訳しませんが、
これは翻訳者が「グラウラー」とその艦長の逸話を知らず、この名前が
伏線として出てきたということに気がつかなかったせいでしょう。

デュークは、憲兵隊長に今回の任務で子供や尼僧を助けたから大目に見ろと言い、
さらに被害を訴えていた酒場の親父が密造酒を提供していたのを逆手にとって
全員の無罪釈放に漕ぎ着けます。


そして次の哨戒の出撃の日がやってきました。
この映像では昼ですが、次の瞬間場面は夜になります。



出航する艦長のポップの弟であり恋人のボブと一緒の車に乗り、
見送りに駆けつけたメアリーに、これみよがしのキスするデューク。
後ろで固まるボブ。

この後ボブとMSの二人は喧嘩にならなかったのかしら。


「サンダー」は出航するなり3隻もの船舶を魚雷で葬りました。


しかし、そのうちまたしても魚雷の不調に脚を救われはじめます。
命中したのに爆発しない不発が続いて士気下がりまくり。

艦長は、弾頭が直角に当たった魚雷がいずれも不発だったことから、
その原因を突き止める必要があると断定します。

連絡を取った本部はペリー艦長にその任のために艦を降りることを命令し、
ペリーは後任としてギフォードを艦長に推薦しました。
つまりこの哨戒がポップの「サンダー」艦長としての最後の航海となるわけです。


そして次のターゲットである民間船が現れ、魚雷が発射されました。


撃たれた民間船は魚雷に気がつきました。
しかし、最後の魚雷はまたしても命中したのに不発です。



そのとき、不思議なことが起こりました。
日本の船が国籍旗を降し、代わりに白旗を揚げたのです。

相手に無線でコンタクトを取ろうとしますが応答なし。
そしてなぜかこの貨物船は救命ボートを降し始めました。



浮上して機銃を構えながら近づいていくと、



軽快な中華風のBGMとともに中国人ぽい船員たちが飛び出してきて、
高射砲やブラウニング機銃(日本にねーよそんなもん)をむき出しにしました。

奴らはこれらの武器に風呂敷をかけて航行していたようです。
なんて卑怯なジャップなのでしょうか。

ここでちょっと解説しておきますと、このような武装民間船は、
第一次世界大戦でUボートに対抗するためにイギリス海軍が始めたもので、
Qシップ(Q Ship)といいます。

正直Uボートに対してはあまり実用効果はなく、これにならって
アメリカが運用した5隻のQシップも全く成果はなかったそうです。

日本には「でりい丸」という偽装船が実在しましたが、初出撃の次の日、
この映画のように「正体を表す前に」潜水艦「ソードフィッシュ」にやられました。

「武装商船」Qシップはなにも日本の専売特許でも卑怯な技でもないですが、
白旗を揚げておびき寄せておいて攻撃する、というのは
明らかに創作であり、ついでに悪質な印象操作です。


そして、偽装船の攻撃で艦上にいたペリー艦長が銃弾に倒れました。
彼は叫びます。

「Take her down! Take her down!」

どこかで聞いた言葉だとこのブログをお読みいただいている方は思うでしょう。
そう、彼と同じように特務艦「早埼」の機銃に斃れるも自分を残したまま
艦の潜航を命じたUSS「グラウラー」のハワード・ギルモア艦長の言葉です。

史実によるとギルモア艦長は外からハッチを閉めましたが、この映画では
ペリー艦長はすぐに死んでしまったので、ハッチは中から閉められます。

今や自動的に艦長となったギフォード少佐は、潜航を命じ、その後
貨物船の後方(そっちには武器がないらしい)に浮上をし体当たり
(つまり昔でいうところの衝角攻撃ってやつですね)を決断しました。


艦橋から叫び、自ら斃れた者の銃をとってぶっ放すウェインの姿は
そのまま西部劇の悪漢を倒すガンマンのようです。



「相手への突撃」も、「グラウラー」と「早埼」の間で実際に起こりました。

「グラウラー」と「早埼」はどちらもが体当たりを企図して接近しましたが、
全速力で体当たりしてきたのは「早埼」の方で、それを取舵で避けた結果、
「グラウラー」が「早埼」の艦体中央部に激突したというのが事実です。


実写映像

この映画では卑怯な貨物船は体当たりによって轟沈します。

「グラウラー」は相手を撃沈したと思い込み、記録もそうなっていましたが
実際は「早埼」は日本に無事帰還して終戦を迎えています。

戦後は復員輸送艦となって働き、その後賠償艦としてソ連に引き渡されました。



続く。