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各国海軍はなぜ日本に集結したのか〜K氏提供写真その2

2024-09-01 | 軍艦

Kさん提供による各国海軍軍艦写真、続きです。



ドイチュ・マリーネの「バーデン・ビュルテンベルグ」と同じ岸壁には

🇯🇵「むらさめ」JS Murasame DD-101
🇯🇵「おおなみ」JS Oonami DD-111
🇯🇵「ゆうぎり」JS Yugiri DD-153

が肩寄せあうように並んでいます。
「ゆうぎり」は給油中。


横須賀のいつもの顔、
🇺🇸「チャンセラーズビル」USS Chancellorsville CG-62

・・・ではありませんでした。


わたし同様ご存知なかった方もおられると思いますが、この艦は

🇺🇸 ロバート・スモールズ (USS Robert Smalls, CG-62)


にいつのまにか名前を変えていたのです。

2023年2月)

元の艦名は、南北戦争中のチャンセラーズヴィルの戦いに由来しており、
南軍が勝利を収めた戦いに因んで命名された数少ない艦だったのですが、
ロバート・スモールズ下院議員に因んだ名前に改名することになりました。

スモールズは、サウスカロライナ州で生まれた元奴隷の下院議員です。


南北戦争中の1862年に南軍に徴兵された後、
南軍の蒸気船「プランター」を家族や乗組員と共に鹵獲して脱出し、
「プランター」とその搭載物資を米海軍に引き渡したことで知られ、

その後北部の英雄となったことから政治家まで上り詰めました。

「ヘイト南軍が勝利した戦いの名前など軍艦に残す必要なし!」
「何なら南軍を裏切って北軍に協力した黒人議員の名前に変えろ!」


とポリコレ界隈がゴリ押しした結果に違いありません。
しかし、みなさん、そういうポリコレ的斟酌なしで公平に見たとき、

「チャンセラーズビル」
「ロバート・スモールズ」


どちらが軍艦として「らしい」名前だと思います?


以前もほぼ同じ岩壁に係留されていた記憶があるカナダ海軍の

🇨🇦「バンクーバー」HMCS Vancouver, FFH 331

「ハリファックス」級フリゲートの2番艦です。
前も思いましたが、カナダ海軍の艦体のグレーはかなり青みがかっています。


同じくカナダ海軍の「ハリファックス」級12番艦

🇨🇦「オタワ」HMCS Otawa FFH-341

前回は同級の「ウィニペグ」「モントリオール」が来ていた記憶。
同級はカナダの都市名を艦名にしています。



シンガポール海軍は比較的よく来日している印象があります。
「フォーミダブル」級(『トライデント』級とも)フリゲートの5番艦、

🇸🇬「ストルワート」RSS Stalwart72




ちな「ストルワート」の義兄弟(Kさん談)

🇯🇵「くまの」JS Kumano, FFM-2


この、どこを見ても新しい?形の給油艦は、ニュージーランド海軍の

🇳🇿HMNZS「アオテアロア」Aotearoa (A11)

HMNZSは、His Majesty's New Zealand Shipの略です。
前回来日してわたしも見学しましたが、その時は「Her Majesty」でした。



ニュージーランド海軍の正式名はRoyal New Zealand Navyです。
こうしてみると、RNZNの艦も青みがかっていますね。
もしかしたらイギリス系の艦の傾向なのかな。

■ 8月25日の横須賀


いつもは我が自衛隊の空母(じゃないけど)が係留されている岩壁に
なんとイタリア海軍の空母と駆逐艦が!



向こう側は空母「カブール」と一緒に来航したイタリア海軍のフリゲート、

🇮🇹「アルピーノ」Alpino F581



🇮🇹空母「カブール」Cavour C550

この大きさで軽空母です。
でも、「いずも」と比べて3000トンしか違わないらしいです。
(『しか違わない』じゃなくて『も違う』という説も)

「ジュゼッペ・ガリバルディ」に続くイタリア海軍2隻目で、
現在唯一所有する軽空母となります。



上から見るとこんな。
固定翼機はスキージャンプ勾配から発艦する仕組みだそうです。


勾配の上部から甲板を見たところ(wiki)
傾斜角は15度です。


甲板に居並ぶハリアーIIとヘリ。
ヘリの機体に、中心が緑の赤いラウンデル(国籍マーク)が見えています。


「カブール」はオーストラリアやグアムに寄港しながら共同訓練を行い、
8月22日から27日まで横須賀に寄港していたそうです。



おお、旭日旗とイタリア海軍旗がこの横須賀で並んだのは、
少なくとも初めてではなかったはず。
(井上成美大将の話にもありましたね・・伊軍への評価は辛辣でしたが)
イタリア空母打撃群の来日は史上初ということでした。

このときは、日独伊で共同訓練も行われたということで胸熱です。

こちらに並んでいるのはもしかしたら「ライトニングII」?
消去法で言っていますので例によって間違えていたらすみません。


下から艦首を眺めたところ。



ここ、いつもは「いずも」(韻を踏んでる)の定位置だったはず。
それでは「いずも」はいずこ?(韻を略)


「いずも」はここでした。
「カブール」に定位置を開け渡してその間沖に停泊していたそうです。


何とフランス海軍までがアンシャンテ。
「アキテーヌ」Aquitaine級フリゲート艦の5番艦、

🇫🇷「ブルターニュ」Bretagne D655




「ブルターニュ」艦尾部分に翻るトリコロールが美しいですね。

艦尾に「NO TUG」と読めます。
母国語を愛することにかけては世界一を自任するフランス人なのに、
軍艦では流石に「公用語」として英語を用いると知った一枚です。

ところで、どうしてこの夏、こんな賑々しい国際観艦式状態になったか、
理由がわからずKさんにお尋ねしたところ、近隣での訓練(リムパック)、
友好行事等で来日していた(墨・土海軍)、そして台風、
いろいろな理由が重なり「たまたま」そういうことになったそうです。

海自広報も「補給と休養のため」と説明しましたが、だが待ってほしい。
それは表向きで、パンダ(プーかも)と黒電話への示威を兼ねていたのでは?

まあ、それが計画だったか、単なる偶然だったかはともかく、
これがこちらチームの結束を見せつける結果になったのは間違いありません。


我々日本人にとってはこの集結が心強く感じられるものでしたし、
各国ネイビーたちも一堂に集結して、海軍同士の絆を一層深めたことでしょう。

■ 「アメリゴ・ヴェスプッチ」



最後に、息を呑むように美しいイタリア海軍の練習帆船、

🇮🇹「アメリゴ・ヴェスプッチ」Amerigo Vespicci

をご紹介します。
ご存知のようにアメリカ大陸を発見したとされる人の名前を持つこの帆船は、
2023年7月から31カ国に寄港するワールドツァーを行なっています。

1931年に進水(90歳)、全長101メートル。



船首部分。
さすが帆船、装備品入れも木製なんですね。



マストに上るのは練習生の最初の難関に違いありません。
メキシコ海軍、イタリア海軍ではなぜ帆船を士官候補生教育に用いるのか。

 1931年以来行われている古代の公開術では、
六分儀で太陽と星を観察したり、海岸の地点の光学測量で現在船位を知ります。
このようにして、伝統と革新を継続的に比較応用することで、
将来の士官たちは海の上での確かな認識と自信を得ることができるのです。


気が遠くなりそうな数の舫が檣に。
一本一本が船の動力である風を帆が受けるための大事な部分です。

帆は24 枚、そして舫の全長は34 km以上に上ります。



きりりとした表情の警衛。

さすがはファッション王国の軍服、デザインが美しい。



一般公開の日は上陸が許されていた模様。
「銀座にでも行くのかな」とKさんは書いておられましたが、
この格好で街中を歩くのはさぞ暑かっただろうと同情します。



寄港地の翻訳とともに紹介される「アメリゴ・ヴェスプッチ」のモットーは、

Non chi comincia, ma quel che persevera
「始める者が誰かではなく、誰が続けることができるかだ」

これはレオナルド・ダ・ビンチの言葉です。
ある人が彼に向かって

「始めが良ければもう途中まで終わったのと同じ」

と言ったことに対する返答であると言われています。

経験を始めることはもちろんであるが、目標を達成するために
一貫性と粘り強さを持って耐えることが基本的に重要である。


これがイタリア海軍の士官候補生に与えられる最初のメッセージなのです。


最後になりましたが、史上稀に見る過酷な暑さの中、
これだけの船を追いかけて写真を撮ってくださったKさんの熱意に敬礼!

シリーズ終わり