ファントムII乗員のための最初の搭乗員控え室、
「レディルーム#6」という展示を見てからさらに進んでいくと、
別の部屋が現れました。
「イントルーダー・レディルーム」。
言わずと知れたA-6「イントルーダー」部隊の搭乗員控え室です。
「intruder」は「侵入者」という意味なので、それを表すマークは
いかにも侵入を図ろうとする者の鋭い眼をデザインしたものとなっています。
ちなみに同型の電子戦型は当ブログでもおなじみ?「プラウラー」です。
今気づいたのですが、戦闘機が「侵入する人」電子戦機が「うろうろする人」、
「グラウラー」(噛みつく人)と、これ「変な人」シリーズだ(笑)
「ムーミン」に出てくるようなキャラが書かれたボードは
先ほど見た「レディルーム#6」の看板だと思われます。
どうしてここにあるのかわかりませんが、ムーミンの人は間違いなく
「ファントム」で、しかも『II』のマークがついていますね。
その横には「SDO」=Squadron Duty Officerの説明があります。
SDOは司令官の直属の代理ともなる役割で、
レディルームの中では、航空隊のジュニアオフィサーが割り当てられ、
24時間交代のローテーションで任務に当たることになっています。
入港時にはSDOは全ての航空隊員の動向を把握しており、
また空母内の各部署との連絡も取り調整を行うと言った具合です。
ワッチや他の任務についている各自についても全て確認し、
緊急時には全ての人員を必要に応じて招集する権限を持ちます。
それだけの任務を、交代でジュニアオフィサーが行うというのも
航空隊らしいといえばらしいですね。
さて、今度のレディルームは、一部をガラスで囲み、
かつてのブリーフィングの様子を活写する展示となっていました。
この展示にあたっては、改装の過程が写真で記録されており、
ビフォーアフターがわかるようになっています。
左下の白黒写真が、1980年代初頭ごろのこの部屋の実際の様子です。
直訳すれば「イントルーダーの飛行」という映画があったようです。
ウィリアム・デフォーは一番右かな?(若すぎてわからん)
調べてみると、日本では案の定
「イントルーダー 怒りの翼」
ってことになっておりました。何が怒りだよ。
Flight of the Intruder - Trailer
ベトナム戦争時代のイントルーダー乗りの話なので、
敵地に不時着してバディを担いで脱出、みたいな話もあるようです。
当時の映画評は低予算のためか散々だったそうですが。
ブリーフィングのデスクは下にオーディオなどのスイッチがあり、
本物であろうと思われます。
コカコーラを瓶で飲んでいるところが時代を感じます。
鉛筆は耳に乗せたかったのだと思いますが、うまくいかなかったようです。
搭乗員となっているのは、後ろの鋭い目の人を見ても
ファッションマネキンではなく、明らかにここ用に作られた人形ですね。
VA-115、ストライクファイター・スコードロン部隊の歴史は長く、
1942年にTBFアベンジャーの部隊として発足し、最初の戦隊章は
ウォルト・ディズニーがデザインしたことでも有名です。
ヘルメットにゴーグルをした天使が魚雷を投げているという・・。
ここで見学記をあげたこともある空母「ホーネット」の艦載機部隊として
沖縄、そしてレイテ島の戦いに参加したという部隊でもあり、
朝鮮戦争を経てベトナム戦争時代はこの「ミッドウェイ」をベースとしました。
その後、湾岸戦争で「ミッドウェイ」が「砂漠の盾作戦」「砂漠の嵐作戦」
に参加した時もここから展開し、その後はホーネットの部隊となって
その後「ロナルド・レーガン」艦載機部隊としてまた再び横須賀を定係港とし、
厚木、そして現在は岩国基地に移動しております。
非常に日本と縁の深い航空隊だということになりますね。
そのうちイントルーダーに乗っていたのは1970年代ということになります。
後ろの三人はマネキン出身らしく男前ばかり。
ホワイトドレスの部屋でサングラスをかけている士官は
ルテナント・ジュニアグレード、つまり中尉であります。
机の上にこれ見よがしに置かれている本はなんと
「LOST INTRUDER」
パーキンソン病を患った元A-6乗りの海軍軍人が、墜落した
イントルーダーをダイビングによって探すというドキュメンタリー。
中尉、カッコつけてるけどズボンが短いです!(笑)
奥にある「グリーニーボード」Greenie boardというのは、先日説明した、
LSOによる着艦の際の「評価表」というようなものです。
「フォックス」「ジッパー」(笑)「ボールズ」(笑)「カウボーイ」
「ノットソー」「パグ」(笑)といったようなふざけたパイロットのタックネームが
左端に書かれ、右に着艦の評価が色で表されます。
緑はOK。ちょっとした逸脱があっても修正ができた。
黄色は普通。理由のある逸脱をカバーできれば良い。
茶色はグレードなし。安全性に欠け平均以下の着艦。
ほとんどがグリーン(のはず)なのでグリーニーボード、というわけですが、
ちょいちょい茶色が混じってしまっている人もいるようです。
それ以外の色についても説明しておくと、
赤はウェイブオフ、つまり着陸していない。
自分の空母を間違えて降りようとしたパイロットに向かって、
「ウェイブオフ!ウェイブオフ!」
と叫ぶのでご存知かと思いますが、甲板にはタッチせず、
着陸態勢に入ってからなんらかの理由でやめて通り過ぎることです。
ゴーアラウンドという言葉も同じ意味ですが、海軍では必ずウェイブオフと言います。
日本語では着陸復行といいますがこの言葉が使われたかどうかは謎です。
海軍は戦争中も「ゴーへー」(ゴーアヘッド)とか、ナイスとか、
公に私に英語を使いまくっていたので、「タッチアンドゴー」は使ったようですが、
(元艦上航空機乗りの人が書いていた)着陸復行のことはなんといっていたのでしょうか。
ちなみにウェイブオフをする理由とは、
視界不良で滑走路が見えない
背風(テイルウインド)または横風(クロスウインド)
滑走路上に障害物や離陸機などがある
といったところで、成績的には「ノーカウント」です。
着艦をやめた航空機がその後どこに行くのか気になりますが。
そして、
青は着陸失敗(ボルター)
これはアレスティングフックが引っかからなかった場合。
着陸許可はLSOから出されますが、この場合は自己判断でタッチアンドゴー、
もう一度着艦をやり直すことになります。
例えばこのグリーニーボードの一番下の「パグス」パイロットは、
いきなりボルターをやらかして動揺したのか、再着艦(次のコマ)では
茶色の「ノーグレード」となってしまいました。(-人-)ナムー
また、
赤を緑でサンドウィッチは「完全なパス」、降りる様子もなかった
白はグライドパスを使った「コンピューターによる着陸」、
このうち⚫️がついているのは夜間着陸となります。(点数高い?)
耐圧スーツにヘルメットのフル武装のパイロットは今降りてきたのでしょうか。
赤いシャツはORDNANCE、武器搭載などを行う係です。
こういう人たちがこの部屋にいたんですよ、という展示でした。
このような着艦の評価は、戦争中でも同じように行われたのでしょうか。
イントルーダーを作っているグラマン社によるポスターには、
「A-6イントルーダー。
パワーを知るものはごくわずかです。
そしてそれを手にする者も。
それができるのはグラマン社だけ」
みたいな?(曲訳です)
「ベトナム戦争空戦戦死者」「イントルーダー発進」
「チェリーストリートの少年たち-大学の狂気の純真さがベトナム戦争で無垢を奪った」
ほとんどがイントルーダー乗りだった作家ステファン・クーンツの作品です。
クーンツは司令官まで海軍軍人を務め、退役後コロラド大学で資格を取って
弁護士となりましたが、作家活動をはじめ、現在に至ります。
イントルーダーの模型自慢コーナー。
海軍のイントルーダー、海兵隊仕様(左下)、給油中、そして
一番右のは試験機でしょうか。
NAVY/MARINES
と機体にペイントされています。
イントルーダーで使われていたコクピットの装備色々。
「高度計」「ウェットコンパス」(航空機用コンパス)
「攻撃角度のためのインジケーター」
「爆撃ナビゲーター用のradar slews tick」(ロック機能付き)
「”オールドスクール”のフライトコンピューターマニュアル」
離発着に関係する部品。
「『ロナルド・レーガン』のアレスティングギアワイヤ一部」
「仕様&未使用のA-6カタパルトのカタパルトと機体を連結すもの」
「A-6Eなどのジェットエンジン”ブーマー缶”」
bumar canエンジンというのがわかりませんでした。
上左から:
「VA-15ブーマーズ」「52ナイトライダーズ」「VWA121グリーンナイツ」
「224ベンガルズ」
下段左から:
「VA-205グリーンファルコンズ」「VA-304ファイヤーバーズ」
「VA-95グリーンリザード」「VMSJ-2プレイボーイズ」
プレイボーイズはヒュー・ヘフナーの許可を得たのでしょうか。
実際のイントルーダーコクピットが再現されていました。
空母「キティホーク」にアプローチしようとしている
イントルーダーの爆撃手目線だそうです。
バニーちゃんがお酒を運んでいるマークのイントルーダー部隊。
これは海兵隊基地を見たことがある私に言わせると本物で、
実際に基地に掲げてあったものだと思われます。
ウェストパックということは、ミッドウェイが横須賀に定係していた頃ですね。
続く。
ベトナムとの和平交渉に悪影響を及ぼさないように、大して軍事的な価値のない目標ばかり割り当てられるイントルーダー飛行隊。それでも、自衛用の機銃もミサイルもない機体で北ベトナムを爆撃に行くので、日々、未帰還が出ます。
どうせ死ぬなら、価値ある目標を攻撃して死にたいと願うグラフトン大尉は、情報士官からハノイの航空写真を入手し、命令に反して、単独でハノイを爆撃に行き、撃墜されるというお話しでした。
著者も同じ思いをされて来たのだと思います。グラフトン大尉がその後、大佐になって、イントルーダーの後継機(開発中止になったアベンジャー)の開発責任者になるまでのシリーズ物です。
マクダネル・ダグラスF-4ファントムⅡ戦闘機
グラマンA-6イントルーダー攻撃機
ヴォートA-7コルセア攻撃機
グラマンE-2ホークアイ空中早期警戒機
カマンUH-2シースプライト汎用ヘリコプター
シルコスキーSH-3シー・キング対潜ヘリコプターでした。
ベトナム戦争後F-14戦闘機,S-3対潜機の搭載が始まりましたがミッドウェーでは運用困難として搭載されませんでした。
F-4 のSLEP化とA-7の代替えとしてF/A-18を先行搭載されました。また戦術電子戦機としてグラマンEA-6Bも搭載されました。
91年の湾岸戦争にも参戦したミッドウェーはF-4S及びA-7Eが2個、A-6E/KA-6Dが1個の編成が86年まで続き、F/A-18Aが3個、A-6E/KA-6Dが1個の編成後、87年から退役までA-6E/KA-6Dが2個でした。
イントルーダー
レーダー覆域下を低空侵攻する全天候攻撃機としては開発され1963年から部隊配備、約700機生産されました。攻撃機は97年までで退役、その後も給油機、電子戦型のEA-6Bが長く使用されましたが現在は電子戦飛行隊もEA-18Gに交代しています。
要目
全幅16.2m、全長16.7m、重量27,500㎏、推力8,437㎏、速力987㎞/h、航続力5,200㎞、兵装爆弾8.1t、乗員2名(並列)
参照海人社「世界の艦船」No685、776、895
余分ですが現在のCVWは
戦闘攻撃飛行隊(VFA、F/A-18C/D/E/F)✖4
早期警戒飛行隊(VAW、E-2C/D)✖1
電子戦飛行隊(VAQ、EA-18G)✖1
回転翼海上打撃飛行隊(HSM、MH-60R)✖1
回転翼海上制圧飛行隊(HSC、MH-60S)✖1の編成だそうです。
機種統一され攻撃、対空戦闘、給油等柔軟に対応でき、兵站支援面の負担軽減や保守、維持、運用も負担軽減となっているようです。
ただ空中給油にF/A-18Fが担当すれば打撃力を損なうことから無人艦載給油機MQ-25スティングレイの開発を促進しています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/燃焼器
空気をタービンで圧縮し、気化燃料と混合して燃焼させるのですが混合比を適正にしなければ燃焼しません。この燃焼器の形式が色々あり、科学の進化と共に変遷があります。また2次空気で燃焼しなかった燃料を燃やしたり、高温になる部分を冷却したりする必要もあります。
その燃焼器の一部だと類推しますがエンジン屋ではありませんので間違えているかもしれません。
エリス中尉の疑問に答えたくて出しゃばりでした。間違えてたら悪しからず。