『シャン・チー テン・リングスの伝説』を観てきました。
★★★★★
今のように中共が力を誇示しはじめる以前に米国・台湾・香港・中国が共同で製作した美しい武俠映画『グリーン・デスティニー』と、今は中共に染まって别人のようなジャッキー・チェンがかつてハリウッドに持ち込んだカンフーアクションとが融合し、マーベル映画として結晶化したような、どこを取っても非が見つからない現代のカンフーヒーロー映画。
しかもあらゆるカンフー映画へのオマージュに満ちているからたまらない。
ここ10年の香港映画で目を奪われるようなカンフー映画と言えば『イップ・マン』シリーズくらいで、その主演ドニー・イェンももう還暦前。
香港自体は昨年完全に中国に飲み込まれてしまったし、既に香港製のカンフー映画は虫の息状態なんですよね。
そこに来て今回のハリウッド映画は大きな可能性を見せてくれたと思います。
ミシェル・ヨーの存在感が『グリーン・ディスティニー』のそれを思い起こさせ、トニー・レオンはかつて香港がずっと先を行っていた映画分野で中国映画界に協力した『HERO』を思い出させる。
ベネディクト・ウォンやベン・キングスレーは一見関係の無さそうなMCUとの繋がりをしっかり思い出させるよう上手くまとめられていて、これらメインキャスト達が全員アジアの血を引いているところがディズニー幹部に言わせると“実験的”だそう。
表現が悪くバッシングされてしまいましたが、中国がああなってしまっては、純粋な中国人ではない俳優を使ってホワイトウォッシュの無い香港活劇映画風なものをハリウッド手動で作ることはこれから必須になるんだろう。
そう言う意味では、メインキャストで唯一香港から参加のトニー・レオンにかかる重圧と覚悟は相当なものなんじゃないだろうか。
主演のシム・リウに関しては、予告編時点でぶっちゃけ「習近平を若くしたような顔でビミョーじゃない?」なんて感じていましたが、映画が始まると全くそんな印象すっ飛んでカッコ良く、彼しか無いと言う印象に変わった。
本物のカンフー演技が出来る人で無くても、VFXで何とでも出来る時代になってしまったのはちょっと寂しいけれど。
ネタバレ(ワンダヴィジョンのネタバレも含みます)
ドラマ『ワンダビジョン』のエンドロール後の映像でワンダが聞いた子供達の声は、ひょっとして魔界からの誘惑?
ひとつだけ残念に思ったのは、ユン・ワーにもう少し活躍の場を与えてあげて欲しかったこと。