ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングやメールカウンセリングなどをやっています

山中康裕『こころと精神のはざまで』2005・金剛出版-こどもごころを残したすてきな臨床家に学ぶ

2024年05月10日 | 心理療法に学ぶ

 2020年5月のブログです

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 山中康裕さんの『こころと精神のはざまで』(2005・金剛出版)を久しぶりに読みました。

 このところ、BS放送大学の小野けい子先生の「イメージと心理療法」を見ていて、ゲストで登場される山中さんの切れのいい、しかし、温かみとユーモアのあるお話をお聞きして、やはりすごい先生だな、と思い、何冊かの本を読み返しています。

 本書は、雑誌「臨床心理学」に、河合隼雄さんの後を受けて連載されたエッセイというか、論文で、山中さんの学術的な経験が本音でどんどんと語られます。

 バウムテストや絵画療法の思い出、ひきこもりの「内閉論」、こころの「窓」論、箱庭療法のカルフさんとの思い出、などなど、その専門性の高さはじーじも尊敬をするところです。

 また、河合隼雄さんだけでなく、中井久夫さんや木村敏さん、その他の優秀な学者さんとの交流もすごいです。

 ちなみに、精神分析の成田善弘さんは中学の同級生で、それ以来の付き合いとか、これもすごいです。

 山中さんのすごさは、その素直さではないでしょうか。

 こどものこころを残したおとな。

 学者らしからぬ、気さくで楽しい人柄は、とてもいい臨床家の姿を体現されています。

 本書でも、多少の失敗も正直に記されていますが、素直に反省をされるので、そこから治療が進展したりします。

 なかなかできないことですが、見習いたいです。

 さらに、読み込んでいきたい本だと思います。      (2020.5 記)

 

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川上範夫『ウィニコットがひらく豊かな心理臨床-「ほどよい関係性」に基づく実践体験論』2012・明石書店

2024年05月09日 | 心理療法に学ぶ

 2020年5月のブログです

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  川上範夫さんの『ウィニコットがひらく豊かな心理臨床-「ほどよい関係性」に基づく実践体験論』(2012・明石書店)を初めて読みました。

 川上さんの論文は、これまでにいくつか読ませていただいています。

 そのこまやかでていねいな実践を踏まえた論考にはすごく感心させられることが多かったのですが、今回、単行本を古本屋さんで手に入れることができました(こんないい本が品切れなのはもったいないことです)。

 すごい本です。

 川上さんは、ご自分のケースを紹介しながら、ウィニコットさんをとてもわかりやすく説明してくれていますが、それがすごいです。

 ウィニコットさんをこんなに深く理解して、説明されるかたはそういません。

 ひょっとすると、ウィニコットさんが表現できなかったことも説明されているような気もします。本当にすごいです。

 例によって、特に印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、遊ぶこと、二人でいながら一人、抱えること、などなどのウィニコットさんのアイデアが、ほどよい関係性、という川上さんの考え方とご自身のケースで、こまやかにわかりやすく説明されます。

 こんなにわかりやすいウィニコットさんの説明は初めてですし、さらに深い理解に誘われて刺激的です。

 二つめは、関係性、という考え方から、精神病や発達障碍などを説明されて、それがまたとてもわかりやすいこと。

 それだけでなく、母子関係や親子関係の理解にも広がって、さらには、時代の病いである不登校や非行、虐待などの理解にも進みます。

 このあたりは、乳児の関係性からはじまって、それがおとなや時代の関係性にまで広がっていて、視野が広いですし、理解が深いです。

 いい本に出会えたなと思います。

 今後、さらに、読み込んでいきたいと思います。    (2020.5 記)

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 2023年5月の追記です

 ウィニコットさんの言葉の中で印象深いものに、治療者の解釈は治療者の限界を示すため、というのがあります。

 どんな解釈にも限界があるということとともに、治療者が限界を見せることで、クライエントさんの自立をうながす側面があるのではないかと思います。

 治療者の言葉が、もし、いつもあまりに完璧過ぎると、クライエントさんの依存性を助長して、自立を阻害してしまうのだと思います。

 ほどよい関係性、ほどよい母親ということの一面を示しているように、じーじには感じられます。     (2023.5 記)

 

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松木邦裕ほか『摂食障害との出会いと挑戦-アンチマニュアル的鼎談』2014・岩崎学術出版社

2024年04月15日 | 心理療法に学ぶ

 2020年3月のブログです

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 松木邦裕・瀧井正人・鈴木智美『摂食障害との出会いと挑戦-アンチマニュアル的鼎談』(2014・岩崎学術出版社)を久しぶりに読みました。

 じーじにしては早めの再読、と思ったのですが、もう6年ぶりになるのですね。いかん、いかん(松木さん、ごめんなさい)。

 付箋がいっぱいだったので、少し整理をしながら読んだら、だいぶすっきりしました(?)。

 もっとも、本当に理解できているのかな?やや心配です。

 鼎談相手の瀧井さんは心療内科医、鈴木さんは精神分析医と3人それぞれの立場で治療に従事しておられますが、3人とも、摂食障害は食の病いというより、こころの病い、という理解で一致しているようです。

 そうなのです。摂食障害は食の病いとして表現されますが、こころを深く理解していくと、生きていることの不安を見つめられずに、不安を感じまいとして行動でまぎらわしている病い、として理解されておられます。

 たしかに、体重は比較的コントロールしやすいので、不安を見つめないで、万能感を保持しやすいのかもしれません。

 摂食障害の人に、万引きなどの問題行動が伴いやすいこともそれを証明しているようです。

 しかも、世の中、DSMなどのマニュアルが流行していて、こころの中を理解するより、表面の行動や症状のみで治療が行われているので、問題が深刻化しやすい、と述べられています。

 やはり、こころの問題が重要なんですね。

 成長にしたがって出会う抑うつ不安といかに付き合っていくのか、周りがどれくらいサポートできるのか、が大切なようです。

 なかなかいい本ですので、もっともっと経験を積んで、学びを深めていきたいと思いました。      (2020.3 記)

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 2022年9月の追記です

 今、読み返してみると、ここでも、あいまいさに耐えること、わからないことに耐えることの大切さがポイントになっているようです。    (2022.9 記)

 

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下坂幸三・飯田眞編『家族療法ケース研究5・うつ病』1993・金剛出版-ていねいな家族療法に学ぶ

2024年03月02日 | 心理療法に学ぶ

 2020年3月のブログです

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 下坂幸三さんと飯田眞さん編集の『家族療法ケース研究5・うつ病』(1993・金剛出版)を久しぶりに読みました。 

 家族療法学会にはしばらく顔を出していませんので、なんとなく疎遠になった感じですが、しかし、実はじーじの面接は、50歳前後のしばらくの間、家族療法の勉強の中で鍛えられた感じがします。

 面接の逐語録をそのまま報告書に書いて、調停委員さんには評判が良かったのですが、裁判官からは、もう少し短く書いてくださいね、と注文をつけられたりしました(裁判官さん、ごめんなさい)。

 その後は、精神分析的な面接が中心になっていますが、母子面接などの家族面接も大切だと考えていて、その重要さは変わりません。

 今回、うつ病の家族療法を再読して、懐かしさとともに、新たに考えるところが多々ありました。

 例によって、印象に残ったところを一つ、二つ。

 一つめは、後藤雅博さんの、うつ病患者さんの家族合同面接。

 後藤さんは新潟の家族療法の第一人者で、裁判所の研修にもたびたび講師で来ていただいて、勉強させていただきました。

 この論文では、うつ病の夫と妻の合同面接を逐語録も提示されてていねいに検討されていて、とても参考になります。

 特に、リフレーミング(再枠づけ)がうまいなあ、と感心させられました。

 二つめは、すっかり忘れていたのですが、大平健さんの「妄想を伴ったうつ病患者の一例」という論文。

 大平さんといえば、『診察室に来た赤ずきんちゃん』『やさしさの精神病理』などで有名ですが、家族療法の論文も書かれているのは意外な感じでした(一度読んでいるはずなのに、意外、もなにもないのですが…。大平さん、ごめんなさい)。

 例によって、大平さんのドラマのような症例報告で、堪能させられました。やはりすごいです。

 昔の本を、新刊本のように(?)新鮮な気持ちで読むことができて、とても贅沢な1週間でした。   (2020.3 記)

 

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氏原寛・成田善弘編『転移/逆転移-臨床の現場から』1997・人文書院-心理療法における転移・逆転移を学ぶ

2023年06月03日 | 心理療法に学ぶ

 2020年6月のブログです

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 氏原寛さんと成田善弘さんが編集された『転移/逆転移-臨床の現場から』(1997・人文書院)を久しぶりに読みました。

 中級者向けの事例中心の本ですが、理論面でもかなり高い水準の本で、じーじなどはまだまだ十分に読み込めていない論文もあります。

 2001年に購入したと思うのですが、購入の動機は若き日の藤山直樹さんと松木邦裕さんの論文があったことから。

 お二人とも、いい論文を寄せられています。

 藤山さんは、「私」の危機としての転移/逆転移、というテーマで、心理療法中の「再演」などの危機の状況の時に、どのくらい事態を読めるかの重要性などについて論じています。

 提示されている事例がすごいケースで、勉強になります。

 松木さんも、難しい事例の中で、転移の占める部分をできるだけ明確に理解していくことの大切さを論じます。

 さらに、菅佐和子さんの論文がいいです。比較的平易な文章で、率直な語りを通して、転移・逆転移について述べられています。

 そんな中で、今回、じーじが一番印象に残ったのが岡田敦さんの論文。

 岡田さんは、「転移劇」というキーワードで、転移・逆転移を事例を通して読み解きます。

 これがすごいです。

 精神分析と劇の関係については、フロイトさんから始まって、いろんなかたが述べており、岡田さんもウィニコットさんや土居健郎さん、小此木啓吾さん、北山修さんらの説を挙げて、説明されます。

 そして、心理療法の中での患者さんの「再演」をよいものに改定していくことの大切さを述べています。

 くしくも、心理療法の中での患者さんの「再演」を読む解くことの重要性が重ねて論じられていた印象を今回、感じました。

 今のじーじの問題意識がそこにあるせいでもあるでしょうし、やはり大切なポイントでもあるからだろうと思います。

 さらに勉強を続けていこうと思います。 (2020.6 記)

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 2022年春の追記です

 文中でも述べていますが、じーじの理解が不十分な状態での感想文で、理屈っぽい、わかりにくい文章になっています。

 今も理解が深まったとはいえないのですが、「再演」とは,、じーじの今の理解では、心理療法の中で、クライエントさんがご自分の感情などを言葉で表現できずに、行動で「反復」してしまうことではないかと思います(それで合っているのかなあ?、ちょっと心配。いろんなレベルでの理解があると思います、と少し逃げておきます)。

 そして、「再演」を治療者がきちんと受けとめられると、クライエントさんは少しずつ言葉でご自分の感情などを表現できて、自身の行動の「反復」に気づけるようになる、というのが、今の精神分析的な心理療法の考え方ではないかと思います(まだわかりにくい文章ですね。じーじはもっともっと勉強しなければなりません)。 (2022.4 記)

 

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