2019年のブログです
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先日、西園さんの『精神分析技法の要諦』(1999・金剛出版)を再読して、たいへん勉強になったので、こんどは同じ西園さんの『精神療法入門-西園精神療法ゼミナール1』(2010・中山書店)を再読しました。
この本も久しぶりの再読になってしまいましたが、「入門」とはいうものの、内容は深く、しかも、症例が豊富で、こちらもすごく勉強になりました。
西園さんのすごさに改めて感服です。
今回、印象に残ったことを一つ、二つ。
一つめは、記憶の書き換え。
治療者との良い関係が、患者さんの過去の記憶をたぐり寄せて、過去の記憶が書き換えられたり、修正をされるということ。
家庭裁判所の面接でも経験があるのですが、こういう不思議なことが起こります。
いい面接ができると、そのいい関係が過去の記憶を書き換えるということで、ここに心理療法の存在意義の一つがありそうですし、大切な仕事になりそうです。
よく考えるとすごいことで、過去の親子関係や人間関係に悩んでいる人にとっては、貴重な機会になるのではないかと思います。
二つめは、治療者の安定の問題。
これはいろいろな人が述べていることですが、患者さんが不安や怒り、攻撃、見下しなどなど、否定的な感情を持ち込みますので、治療者はそれらを受けとめなくてはならないということ。
治療者が生き残ること、などという表現がなされますが、大切なポイントだと改めて確認しました。
三つめは、あいさつの問題。
平凡なことですが、丁寧なあいさつについて、哲学の例も引かれて、その大切さや重要さを説明されています。
下坂幸三さんも強調をされていますが、普通の、しかし、丁寧なあいさつ、そういうことに象徴されるような人間関係の大切さが説かれています。
小さな本ですが、大きくて、豊かなことを教えてくれる「入門」書です。 (2019.4 記)
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2022年5月の追記です
記憶というのは、現在の感情に色づけられるので、現在の感情によって記憶も変わるようです。
そういえば、子どもの頃の記憶や新婚時代の記憶も変わりますよね。
記憶が少しでも良く変われば、クライエントさんの大きな不安も、少しだけ小さくなるかもしれませんね。 (2022.5 記)