2019年のブログです
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神田橋條治さんと滝口俊子さんの対談『不確かさの中を-わたしの心理療法を求めて』(2002・創元社)を再読しました。
これもずいぶん久しぶりの本で、アンダーラインがあまりなかったのも、先日の下坂さんの本と同じです。
しかし、この本も再読をしてみるとすごい本で、当時のわたしは本当に何を読んでいたんだろうと、反省すること大です。
良く解釈をすれば、この20年ほどの間に、これらの本が少しは理解をできる程度に成長してきた、といえるのかもしれませんが、それにしてもお粗末です。
例によって、印象に残ったことを一つ、二つ。
一つめは、これも最近よく目にしますが、部分の中に全体がある、という考え方。
神田橋さんは、フラクタル理論から思いつかれたとのことですが、精神分析ではいろんな方が同じような趣旨のことを言われます。
だからこそ、今、ここで、の重要性が強調されることになります。
二つめは、これもよく指摘されますが、現在によって過去の記憶が変わるということ。
ゆえに、現在を充実させられれば、過去の記憶も充実したもの、意味のあるものに変化をする可能性があるということで、心理療法の意味付けにもなりそうです。
こういう大切なお話が、神田さんと滝口さんの人生を振り返りながら話されますので、すごい読み物になっています。
お二人とも、ご自分の信ずる道をていねいに生きてこられた方なので、その語りには重みと説得力があります。
特に、神田橋さんのお話は、やや毒舌気味とところがありますので、痛快です。
その神田橋さんでも、中井久夫さんの天才ぶりには圧倒されっぱなしのようで、中井さんがいかにすごい人なのかがわかります。
この本も読んで損をしないいい本だと思います。
こちらもまた数年内に再読をぜひしたいなと思いました。 (2019.4 記)
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2022年2月の追記です
よく考えると、本書の題名である、不確かの中を、という言葉も、わからないことやあいまいさに耐えることの大切さ、と関係しているように思います。 (2022.2 記)
うちのお父さん(編集者で今は天国)が長年「みすず書房」の校正の仕事もしていまして、実家にはみすず書房の本がたくさんあるんです📚(中井先生はけっこうみすずから出版されているんですよね💡)
ご実家のお母さんも、おうちのお父さんもすごいですね。ただ者ではありませんね。
クリンちゃんのリコメントのすごさの秘密もようやく納得できました。