2023年4月のブログです
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村上春樹さんの『街とその不確かな壁』(2023・新潮社)を読む。
重厚な物語だと思う。
まだ一回読んだだけなので、今後、印象は変わるかもしれないが、一回読んだところで連想したことは、喪失、疎外、魂、という言葉。
激しい喪失が何度も描かれる。
読んでいても胸が痛くなるようないくつかの喪失。
そして、喪失による哀しみ。
人生は喪失と哀しみの繰り返しなんだなあ、と思う。
次に、疎外。
現実社会でも、壁の「街」でも、人々は疎外されている。
疎外されて、生き生きと生きられず、なかば死んだように生きる。
何かを恐れるように、生きる。
個性は潰され、人々は平板な人生を生きる。
そこに魂はない。
一方、信ずることの大切さが述べられる。
何を信ずるかにもよるのだろうが、信ずることと魂の復権は関係するのかもしれない。
重厚で重層な物語が進行する。
続きは各人のこころの中で進めていくのだろうと思う。 (2023.4 記)
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同日の追記です
哀しみを十分に哀しまないと、明るくても虚ろな生きかたになる(精神分析では、躁的防衛という)。
虚ろいには影がない。
影がなければ、魂は十全にはならないのかもしれない。