2017年のブログです
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瀬尾まいこさんの『君が夏を走らせる』(2017・新潮社)を読みました。
「すごーく」面白かったです(主人公の1歳の女の子の口調がうつって(?)しまいました)。
本の帯に、宮﨑あおいさん、絶賛‼とありますが、あおいさんでなくても、絶賛したくなります。
じーじが小説の新作を、文庫本ではなくて、単行本で読むのは、最近では村上春樹さん以外ではめずらしいのですが、それだけの魅力を放っていたようです。
物語は、高1の不良少年が元不良の先輩の1歳の女の子の子守りのバイトを引き受けてしまった1か月間のお話。
この高1の不良少年は、瀬尾さんの小説『あと少し、もう少し』(2015・新潮文庫)(じーじのブログにも書いてあります)に出てくる、「生きにくさ」を抱えた人物の一人で、高校生になっても、それを引きずっているという設定です。
一方、1歳の女の子には、何の屈託もありません。
天真爛漫、しかし、子育てをした人にはわかると思いますが、「悪魔のように」手がかかる存在です。
その二人の物語、とても面白いです。
子どもの描写がとても上手で、わけのわからない子ども言葉や態度や要求を、高1男子が悪戦苦闘しながらだんだんと理解できるようになっていく姿がいいです。
まるで、遊戯療法の過程を見ているようで、瀬尾さんの小説家としての力量だけでなく、中学教師の力量も存分に発揮されているようです。
そして、二人のやりとりは、ただ面白いだけでなく、瀬尾さん特有の哀しみや寂しさや、その上での優しさが描かれます。
読んでいて、なんども笑わされたり、しんみりさせられたり、泣かされたりしてしまいます。
このところ、いろいろと物騒で、憎しみが世界中に充満しているような、希望の持ちにくい状況ですが、世の中を真っ直ぐに見ることの大切さを教えてくれるような、いい小説だと思います。 (2017 記)
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2019年4月の追記です
瀬尾さんが本屋大賞を受賞されました。おめでとうございます。 (2019.4 記)
自分の時はまったく余裕がなくて、ドタバタして…。
だから、おじいちゃんやおばあちゃんの知恵が大切なのかもしれませんね。