2018年のブログです
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マイクル・コナリーさんの『転落の街』(上・下)(古沢嘉通訳・2016・講談社文庫)を読みました。
コナリーさんの小説を読むのはかなり久しぶりでしたが、期待にたがわず、すごく面白くて、一気に読んでしまいました。
マイクル・コナリーさんといっても、知らない人も多いでしょうが、アメリカの推理小説家で、特に、本書もシリーズになっているロサンゼルス警察のボッシュ刑事が主人公の警察小説が有名ですし、とても面白いです(ちなみに、本書は去年の推理小説のベストテンにも入っています)。
ボッシュ刑事は人生にいろいろなものを抱えつつ生きている人物で、しかも、警察組織にただ忠誠を誓っているような刑事でもなく、時と場合によっては、彼の信ずる正義のために、どんな敵や組織とも闘います。
そこが魅力でしょうし、その姿を丁寧に描写しているので、読み応えがあります。
ボッシュ刑事だけでなく、同僚や犯罪者までもが、本当にこまやかに描写され、読者は正義だけでなく、悪の存在についても考えざるをえません。
正解はなく、自分で人生や家族、仕事、組織、あるいは、国家などについて考える必要があります(ボッシュ刑事はベトナム戦争帰りの警察官でもあります)。
決して、単純でなく、複雑なのは、人生も社会も同じでしょう。
そこをとても大切に描いている警察小説の逸品だと思います。
機会があれば、読んでみてください。 (2018.1 記)
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2020年11月の追記です
アメリカではトランプくんの憎悪と分断の政治がようやく終わりそうですね。
アメリカ国民の良識が少し見えました。 (2020.11 記)