ホセ・クーラは2019年の秋から、ハンガリー放送芸術協会のゲストアーティストとしての活動を開始しています。すでに紹介しましたが、11月4日に開催されたハンガリー事件犠牲者追悼コンサートで、協会傘下のハンガリー放送交響楽団を指揮し、ベートーヴェンのエグモント序曲、クーラ作曲Modusなどを上演しています。
*その時の様子と動画のリンク → (録画・ライブ放送告知編)2019年 ホセ・クーラ ハンガリー事件の犠牲者追悼コンサートで指揮
そしてクーラが参加した初の本格的なシーズンプログラムとして、11月13日、ブダペストの芸術宮殿(ベーラ・バルトーク国立コンサートホール)で、ヴェルディのレクイエムのコンサートが行われました。
今回は、そのリハーサルや本番の様子、当日インターネットラジオで生中継され、現在もオンデマンドで聞くことができますので、そのリンクなどを紹介したいと思います。
●ハンガリー放送芸術協会のHPより
VERDI: REQUIEM - CONDUCTED BY JOSÉ CURA
Müpa - Bartók Béla National Concert Hall
2019-11-13 szerda 19:30
Verdi: Requiem
Artists: Hungarian Radio Symphony Orchestra and Choir
Eszter Sümegi, Erika Gál, Attila Fekete, András Palerdi
Conductor: José Cura
コンサート用パンフより(画像に元ページリンク)
≪当日の様子≫
当日は、美しいブダペスト芸術宮殿いっぱいに観客が入り、コンサートは大きく成功したようです。クーラはFBで、 "ライブで起こりうる小さなミスはあったが、本当に楽しいパフォーマンスだった"と報告していました。
●公演の直後のクーラのFB投稿
●ハンガリー放送芸術協会のFBより
84枚の写真が掲載されています。観客でいっぱいの美しいホール、クーラの指揮姿、終了後、嬉しそうなソリストの様子、共演者を労うクーラの姿など、たくさんです。右上のFマークをクリックすると直接FBで見ることができます。
≪バルトークラジオで生中継とオンデマンド録音≫
当日は、ハンガリーのネットラジオ、バルトークラジオで生中継されました。音質もよく、トラブルなく中継されてほっとしました。
いつまで可能かわかりませんが、現在はオンデマンドで聞くことができます。ただし日本とハンガリーは8時間の時差があるために、クーラやハンガリー放送芸術協会がFBでシェアしたリンクは、動作しなくなっているようです。
興味ある方は、少し面倒ですが、下の画像に貼ったリンクから、プログラムページを見てください。
①画面の上の方はテレビの番組表、下にスクロールするとラジオの番組表があります。
②並んでいる日付から11月13日をクリックし、バルトークラジオの列を見つけてください。
③バルトークラジオの列を下にスクロールして、19:35のボタンを押して下さい。すると番組説明と黄色いバナー(「ラジオを開始」とハンガリー語で書いてある)が現れます。
④黄色いボタンを押すと、次のようなプレーヤーが新しいウインドゥで現れます。自動的に開始します。
↓ ご覧のように、すでに時間がずれていますし、番組名も別のものになっていますが、大丈夫です。このまま聞いてください。
初めは男性の解説の音声がしばらく続き、拍手、チューニングの音と重なります。3分過ぎくらいに拍手が大きくなり、4分半過ぎくらいから始まります。
ここで注意していただきたいのは、一時停止、ストップのボタンを押したり、飛ばすためにバーを動かすと、なぜか再度、再生した時に別の番組になってしまうことです(!)。たぶん時差の関係だと思うのですが、とにかく一度聞き始めたら最後まで聞き続けなければなりません(笑)。もし良い解決方法をご存知の方がいらしたら、ぜひ教えてください。
まずは一度、録音してから聞くことをおすすめします。音質はとても良好だと思います。また直接リンクを張ると、そのリンク先がまた別番組に切り替わってしまうため、ご面倒ですが、バルトークラジオの番組表から聞いていただくのが一番確実のようです。
≪リハーサルの様子≫
●ハンガリー放送芸術協会のFBに掲載されたリハ風景
ジェネラル・リハーサルのようです。この時期、ハンガリーでも気温が下がっていると思いますが、相変わらずクーラは半袖Tシャツ一枚です。
●ハンガリーのテレビM5で放送されたニュース動画、クーラのショートインタビューとリハ風景
こちらはテレビのニュース動画で、リハーサルの様子、クーラのインタビューが収録されています。ハンガリー語通訳が被さり、聞き取りにくいです。
≪インタビュー動画≫
同じくテレビM5のインタビュー番組にクーラが出演した際の録画です。約8分くらいで、とても画質が良いです。
リラックスした雰囲気で、今回のレクイエムのことやハンガリーとの協力のこと、また来年のクーラ新作オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」のことなども語っているようですが・・。クーラは英語、ところがこれも、ハンガリー語の通訳音声が被さって、残念ながら、ほとんど何を言っているのか聞き取れません。せめて英語の字幕でもあれば助かりますが、興味深いインタビューだけに本当に残念です。
≪以前の録音、動画より≫
クーラはこれまでもヴェルディのレクイエムを指揮しています。ただしテノールとして全曲歌ったことは、私の調べた範囲ではないように思われます。その代わり、テノールの有名なソロ"Ingemisco" をローマの教会でのリサイタルで歌った動画があります。本当に美しく、魅力的な歌唱です。
●クーラ指揮 2008年 VERDI REQUIEM :"LIBERA ME.." live recording 2008.feb
●クーラ独唱 1999年 VERDI REQUIEM :"Ingemisco" 1999
ホセ・クーラがハンガリーで指揮したヴェルディのレクイエム、動画はありませんが、美しい写真とラジオ放送で見聞きすることができて、本当にうれしかったです。
あらためて、久しぶりに聞いたヴェルディのレクイエム、あちこちにアイーダやドン・カルロ、リゴレットなど、ヴェルディの傑作オペラを想起させるメロディが沢山あります。美しく、切なく、時に雄弁、怒り、悲しみ、嘆き、祈り・・あらゆる感情が音楽で表現されています。そして最後は、デズデモーナの祈りから、つながっていく、まるでオテロの死。全編にわたり、ヴェルディの描く人間ドラマそのものです。ヴェルディのドラマティックな役柄のプロフェッショナルとして活動してきたクーラが指揮するには、本当にぴったりだと思いました。
私には、正直なところ指揮の良し悪しは良く分からず、評価することはできませんが、情熱的で、よく歌い語るヴェルレクだったと思います。ドラマティックに人間的な感情にあふれ、ダイナミックで、そして温かみを感じます。もしかすると、きっちり構築された精緻な演奏を求める人、宗教曲としてのスタイルを重視する方には向かないかもしれません。しかし私にはクーラ指揮の今回の演奏は、クーラがアーティストとして長年追求、探求してきた、ヴェルディの人間ドラマを凝縮したもののように思いました。
この秋から始まったホセ・クーラとハンガリー放送芸術協会とのコラボレーション。すでに2回のコンサートが、動画とラジオでそれぞれ生中継され、オンデマンド視聴もでき、ファンにとって本当にありがたいことです。またクーラは、自身が作曲したオラトリオ「この人を見よ」を、同時並行でレコーディングしています。クリスマス頃には、何らかの形でリリースされるようです。当初の告知では、クーラ指揮、テノールにラモン・ヴァルガス、メゾにカサロヴァという国際的なキャスティングのようです。やはり、ラジオ、テレビ、オーケストラ、合唱団を傘下におくハンガリー放送芸術協会とのコラボは、これまでクーラがチャレンジしたくてもできなかったことを次々に実現させるチャンスとなっているように思います。もしかすると、来春のクーラ作曲の新作オペラ「モンテズマと赤毛の司祭」も、何らかの形での放送が期待できる?!かもしれません。楽しみです。
*画像は、クーラや主催者のFB,HPなどからお借りしました。